表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しぐれぐむ  作者: kazuha
無くならないで欲しいと願う
28/200

28、




「……あの、そのあと何処に行ったかわかりますか?」



 食が止まってしまった。

 不味いわけではない。

 不安なだけだ。



「何処ねぇ。ここでボーリングしてたから他には行ってないと思うけどなぁ」


 要は知らない、と。



「なに? 気になる的な?」

「いえ、違います」



 断言したが、自分でもわかるくらい弱々しい声だった。



「なに、またあれに捕まったのか?」

「そうなのよ土門。どうしてそこまでするのかしらねぇ」

「つったって、ただデートしてるだけだろ?」

「デートかどうかも怪しいじゃない。だってただ話しもしないのよ」



「なんで知ってるんですか?」


 気になった。

 尾行でもしていたなら話は別だが、勝手な妄想ならおかしな話だ。



「え? 本人から聞いた」


 聞いた。

 それはどこまで信憑性があるのか。

 嘘?

 可能性はある。




「まぁ、アイツが嘘つくとも思えないし、嫌いだしなぁ」

「そうなんだよね! 嫌い嫌いって言いながら行っちゃうんだもんね。ヤクザ絡みじゃない?」

「なきにしもあらずだな」



 全て妄想だ。

 ホントのことは知らないのだろう。



 ただ、裏があるというのはわかった。

 これでも推理小説はよく読むほうだ。




「ん? 食べないのか? 冷めちまうぞ」

「あ、すみません」



 食べ始める。

 やっと味がわかった気がした。

 ホワイトソースはまろやかなのに少し刺激のあるブラックペッパーが食を煽る。

 更にカラッとしている小刻みのベーコンもスパイスのようだ。

 それを丸く収めているのは半熟の卵。

 そして、チーズは香りを大切に乗っけられている。



 美味しい。


「あ、今日初の笑顔もらいましたー」


「え?」


「なんか落ち込んでたでしょ」


「……そ、そんなこと」


「あれぇ、トイレで泣いてたの誰かなー?」



 聞かれてた!?



 体が熱くなるのがわかる。

 顔は既に赤いだろうな。



「あははは。誰にも言わないから大丈夫よ」


「当たり前ですよ!」



「ごめんごめん」





 そのあと、ワイワイと3人で話していた。



 下らないこと。

 本当に下らないこと。



 でも、下らないことを話せるのって、本当に久しぶりだった。



ーーーー3年ーーーー



 くらいだろうか。




「あ、こんな時間。あたしバイト行かねば」

「おう。金は払えよ」

「はいはーい。えっと、1500かしら?」


 忘れてた!


「払いますよ!」

「いやいやー。泣いてた子に払わせるわけには行かないねぇ」

「もう、そのネタやめてください!!」

「あはははは! 時雨ちゃんがいい反応してくれるからねぇ」



「1450だな。はい、50円のお返し」

「はいどーも! ごっそうさま!」

「あ、ご馳走様でした」

「おう! また来いよ!」




 外に出ると、もう日が暮れていた。


 寒空は私たちを包み、一気に体を冷やす。



「クリスマス、ライブ行くんでしょ?」

「はい」

「誰から誘われた?」

「セラ君です」

「やっぱりね」



 ?

 どういうこと?


「おっと! ちょっくらヤバイ。じゃぁね時雨ちゃん! 何事も負けるなよー」


 どういうことだ。



 ツッコミを入れようとしたが、片手を上げて駆け出していった彼女に、私はその場で手を振るだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ