25、
お昼休み。
そんなチャイムだった。
お腹すいた。
何食べる?
学食飽きたよ。
じゃぁファミレス行く?
いいねぇ!
行こ行こ!
まったく楽しそうだ。
私は立ち上がり眼鏡をクイっと上げてイヤフォンを付ける。
耳を叩くのはダンドリオンのベース音。
有名どころの曲である。
参考書のせいで重くなったリュックを背負い、向かうのは駅だった。
誰にも見つからないように、誰にも気にされないようにスタスタと歩く。
真上に上がった太陽の日差しは眩しささえ失って、ただの回っている衛星のようだった。
モフモフのマフラー、ニットの帽子、真っ白なミトンは外の寒気から私を守ってくれていた。
それでも寒い。
紅葉した落ち葉も綺麗に片付けられ、スッキリした木々たちは身を寄せ合うように枝を合わせていた。
冬とは何かと言われたら多くの人は雪と答えるだろう。
若干名はカニとか旬の幸に走る貪食者もいるが。
だが、私はこう答える。
なにも変わらないじゃないか。
この急成長を遂げた日本で、夏も秋も春も冬も、ただ唯一の風情さえ失ったこの国で四季なんて殆んど味わえない。
四季を大切にしろ、等と老いぼれた方が仰ったりする。
何故だと私が問うと、日本にしかないからと答える。
バカを言え。
四季なんて殆んどどこの国でもある。
違うのは、周りが海に囲まれて、真ん中に山が長く連なっていることぐらいだ。
四季を大切にするんじゃなくて、土地を大切にしろと言うのが正しいんじゃないか。
と、まぁ、あまりに暇なので無駄なことを考えてしまった。
いつの間にか止めていた足を動かし校門を出ようとする。
「おい、時雨!」
目の前に出たのはアイツだった。
「おい、飯食うんだろ」
「今日はいらない」
「…………そうか」
私は彼を一瞥して視線を落とし、彼を避けて2歩進む。
「明日暇か?」
「……美晴の方が忙しいでしょ。私に割く時間がないくらいに」
横を抜け、彼の姿が見えなくなった途端に歩みを早めた。
彼の言葉はなにも返って来なかった。
どんな顔をしたんだろうか。
今、私はどんな顔をしているんだろうか。
冷たい風が吹く。
熱くなる気持ちを冷ますかのようにそれは強く私を撫でた。
それでも私の目は熱いままだった。