24、
恋は戦争。
そんな曲があったっけか。
確かに、好きになるのは同時でも、付き合えるかは、まして結婚できるかは最早運の要素も絡んでくる。
そんな駆け引きが行われる世界で、内気であまのじゃくで、ダサい私が勝てるはずがない。
そんなことわかっていた。
天は二物を与えず。
そんなことない、と言う人は少なくない。
頭がいい、スポーツ万能、見た目カッコイイ、ほら3つだと。
いや違う。
ホントに二物を与えないのだ。
勝ち組と負け組という二物を。
勝ちという物事と、負けという物事、どちらか一方を得たところで、もう片方を得られるのかというと否だ。
だから私は言う。
天は二物を与えず、だと。
『ヤッホー!
ねぇねぇ、聞いてよ。今電話していい?』
メールを受信した携帯を開いたらセラくんからだった。
私も話を聞いて貰いたかったし、メールを返さず、私から電話してみた。
なかなか出ないものだと踏んでいたが、1コールで出てくれた。
「あ、やっほー! 電話ありがとう」
なにもない。元気な、彼の声が電話越しに届いた。
「もしもし、どうしたの?」
冷静に、冷静に。
そう努力するだけして、鼻をすすった。
「あれ? 風邪?」
「まぁ、そんなところ」
「声も変だもんね。お大事にね」
「うん」
ここまできて、急に罪悪感が生まれた。
嘘付く必要があるのだろうか。
「でさでさ、」
耳をつつくような怒鳴り声に似た大きな声に私は少し電話を耳から離した。
「クリスマス暇?」
「暇だよ」
「あのさ! うちらクリスマスライブやるんだ! チケットあげるから来ない?」
少しだけ悩む。
それは少なからず彼と出会うことになるし、更に最悪、あの女と顔を合わせることになる。
それでも私は冷静でいられるのか。
「もしかして、用事あった?」
「ううん。ないよ」
私は少し溜めて、行くよ、と言ってしまった。
「やった! よっしゃやる気でてきた! チケット当日渡せるから、その時にね。詳しいこと後でメールしておくから! ボク頑張るからちゃんとその日空けといてよね!」
無邪気だ。
なんか、落ち着いた。
思わず微笑み、
「空けるよ。クリスマスね」
「うん! 12月25だよ」
「うん、わかった」
「うん。じゃ、また」
「またね」
電話が切れる。
それと同時に黒い画面が私の顔を写した。
目は腫れていた。
赤く充血している瞳にはまだ涙が貯まっていた。
ひどい顔だ。
服の袖で涙を拭き、腫れている目を見られないためにフードを被った。
そして後ろを振り返り、駅に向かう。
帰ろう。
この場所にいると、私、おかしくなる気がする。
はやく離れよう。
この場所からも、…………。