20、
――――見守っておいてくれ。
オレンジジュースを飲みながらカジくんと話している美晴を見ていた。
相変わらずの飲み会でみんなは生ビール、私だけオレンジジュースを飲んでいた。
「あっれー、飲まないの?」
この暗がりでも既に赤くなっているのがわかる、ドリンクを作っていた人が私に飲みかけのビールを差し出してきた。
「飲まないんで」
「のり悪いよー」
「いや、いいんです」
「あっそう。めちゃくそ弱いとか?」
「ま、まぁそんな感じです……」
「いいじゃん可愛くて。あたしなんて赤くなって饒舌になるだけで、相手の方が先に潰れちゃうのさ」
「強いんですね」
「いや、弱いのよ。カジとか、ヨシくんとか」
美晴のことだろうか。
と、思った瞬間になんか嫌な予感がした。
「持って帰られそうになりませんでした?」
「ん? なるなる。何回誘うんだよねぇ。誰がいくかっつうの」
やっぱりか。
女なら誰でもいいんだろうな。
やっぱり最低。
「っでも、最近飲みに行って潰したのに誘われなかったな。飽きたのかな?」
「へ?」
「昨日? 一昨日? うーん、11時だから昨日、飲みに行ったのよ。その時にね」
単に忘れただけな気がする。
そんな気がした。
「そういえば名前なんてーの?」
「あ、黄金沢時雨です」
「へぇ時雨ちゃんか。わたし高輪皐月。みんなからさっちゃんって呼ばれるからそう呼んで」
高輪皐月。
どこかで聞いたことある。
「時雨ちゃんって、ヨシくんと同じ大学でしょ?」
「はい」
「あたしもなのよ。あたしはヨシと同学年で同じ経済学部」
へぇ。そうなんだ。
先輩なんだ。
「時雨ちゃんは下かな?」
「はい、2年です」
「そうかぁ。ってことはヨシの追っかけと一緒か」
追っかけ?
あの人かな?
よくいじめに来るあれ。
「まったく飽きないよねぇ。かるくウザイのよね」
「ですよね!」
思わず声を強くしてしまった。
皐月さんが驚いたように目をかっぴらいているのを見て、私は咄嗟に話を続けた。
「私と美晴がお昼食べてる時に無理やり入ってくるんですよ。ホントにウザくて」
「へぇ、相変わらずそうなんだねぇ」
「はい。っで美晴がスタスタ逃げるんでアイツに死ね死ね言われてるんですよ」
「うわぁヒドイ。よく頑張ってるねぇ」
その時に頼んでいないオレンジジュースとカシスオレンジが店員さんの手によって私たちの前にきた。
「はい、カシオレ」
「いや、飲みませんよ」
「あら、そう」
笑いながらカシオレと呼ばれたその卑猥に赤い飲み物を一気に飲み込んだ。
そのあとぺろりと唇を舐める。
「こんなのジュースだよ」
「……飲みませんから」
私は呆れた目でオレンジジュースを受け取った。