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「どこから話そうか。そうだねぇ。先ずはヨシが孤児だったって所からかしら? それとも、ヨシのお姉さん的存在なのが美月ちゃんってことかしら? まぁどっちにしろ、すでに勘づいていたわよね? そう。悪ガキ集団だったのよ、美月、星空、ヨシ、カジの4人は。手に負えないほどにね。ある日だったわ。4人で流れ星を見に行ってたらしいの。私とシンちゃんが気づいたのはすでに4人が消えてから1時間後だった。急いで探したわ。このあたり、まだ整備されきっていない崖とか多いから、もし落ちたりでもしたら一大事だった。
4人はどこで見つけたのか私たち2人の秘密の場所にいたわ。まぁ、見つけたのは泣き喚く3人のガキどもだったけどね。すぐに美月の場所を聞いたわ。そしたら、崖の下を指さした。落ちてたわ。たまたまそこら辺は茂みとかが崖にある場所だからそこに引っかかってたから一命は取り留めたけどね。
ただ、障害が残ったわ。落ちたときに頭を何度も強打したみたいで、脳の重要な部分が働かなくなったらしいの。私はベットの中でこの子は死んでいくんだと思っていたわ。でも違った。最新医療のおかげなのかしらわからないけど、日常生活はできるみたいだったわ。ただ、脳の重要な部分がダメだから、それは管理しなければいけなかった。だから入院ってところね。
そのころかしらぁ? ヨシとカジが喧嘩をするようになったのは。初めはお姉さん役の美月ちゃんがいないから、誰も止められなくなっただけかと思った。
『お前がお姉ちゃんを殺した!』
それを聞いた瞬間だったわ。カジがヨシを泣きながら殴ってるのを見て大体を把握したわ。それを美月ちゃんに聞いてみた。
『その通りです』
あのあたりには金木犀が咲くのよ。すごく綺麗なね。うちの孤児院の中ではその金木犀の色違いを見つけられたら幸せになれるっていう言い伝えのようなものがあるの。
崖の下にあったのを見つけたのがヨシ。それを取りに行こうとしてた美月ちゃんは落ちた。
それが彼らに埋められている記憶。その記憶を彼らはそれぞれの表現で表してきた。ヨシは償い。星空は悲しみ。カジは復讐。ここまでわかったかしら?」
私は首を縦に振った。
要するに、美月さんを殺したのは間接的であれど、美晴だということだった。
「まぁ話はこれからね」
そう切り出して、本棚に隠れていた本を取り出した。
「見てご覧なさい。これがヨシの家計簿。こまめにやってたみたいだからねぇ」
それは事細かく書かれている家計簿だった。
そして、私が全く知らない時代の年月日が書いてあった。
ひと月40万の稼ぎ。
それが次の段階では半分以下の13万までに減っていた。
「毎月孤児院に入れてくれた金額は15万だったわ。後は家賃、ガス、水道、電気、全部払ったんでしょうね」
確かにそれら全て払っていた。
そして大体そのくらいの値段だった。
しかし、おかしな話なのはそのあとだ。
「後はどこに消えてると思う? 食費を残しての残りの10万は」
次の段階では3万であった。
「それね、あのカフェに寄付してたのよ。罪滅ぼしとして」