192、
11月18日。
明日、とうとう美晴に会える。
それだけで喜びを表せるぐらい私はニヤニヤしていた。
それを大智にキモイと制裁をくらってから少しは収まったが。
待ちに待ったのだ。
1年間。
不安しかなかった。
それが明日になれば全ての意味が繋がる。
みんなの夢に、私も追いつける。
美晴と一緒になることで傷害がないとも言えない。
そこは、テレビなれしているみんなに任せよう。
最終準備をしながら、それでも頬が緩む。
鼻歌を歌いながら手持ちカバンに何を入れようか悩んだ。
タオルとかそこらへんと、日記も持っていかねば。
チケットはぐしゃぐしゃにしたくないからそのままにしておいて、忘れないようにしないと。
机の上にでも置いとけば忘れないよね。
一通り終わって、ベットに座った。
これまでに、東京での会社のアポを取ったりとかとかしていて、案外ギリギリだった。
修論も提出したし、後は卒業試験に行けば終りなだけだ。
それまで、東京で頑張ってみよう。
それでダメだったら、こっちで受かった所に行けばいい。
準備は完璧のはずだった。
ーーーーはずだった。
それは、星空くんからの電話だった。
最近忙しくて、私から連絡を入れても誰ひとりとして反応しなかったのに、少しは落ち着いたのだろうか。
私は通話ボタンを押して耳に当てた。
「もしも……」
「時雨ちゃん! 時雨ちゃんだよね!!!」
怒鳴り声。
私は一旦耳から離してしまった。
「どうしたのよ? そんな大声で」
「時雨ちゃん落ち着いて聞いて! いいね!?」
落ち着いて欲しいのは星空くんの方だった。
そういえば、電話の後ろからは喧騒と言うのだろうか、色々な音が混ざっていた。
その中に、救急車の音が聞こえた。
ーーーー急激な不安。
それを確定したのは、次の言葉だった。
「美晴がーーーートラックに引かれたーーーー」
私は手持ちバックだけを持って走って家を出た。