181、
新年もどうやら滅茶苦茶やったみたいで、星空くんが溜め息を混ぜたメールを送ってきた。
1月も後半になると星空くんの作詞作曲の新曲が発表された。
相変わらず面白い発想と実力でシングルを出すようだった。
一方、美晴はと言うと、その事に対してマネージャーのことをグチグチ言うようになった。
わかってないとか、なんでこれがダメなのかとか、絶対イジメだとか半ば被害妄想で話が進められていた。
それが事実なのか星空くんに確認したが、全くそうではないらしい。
むしろ、最近の美晴の創る曲が酷いらしい。
新しいとか画期的とかに囚われるばかりで、コード進行、私にはよくわからないのだけど、がハチャメチャだったり、歌詞も狙いすぎて心に響かないとかなんとか。
逆に私からいつも通りやってもらうようお願いして欲しいときた。
まぁ、するのが彼女の役割ならそれはさせて頂くけど、なんて切りだせばいいかわからない。
という、寒さの厳しいテスト終わりの帰り道。
珍しく学校に来ていた皐月さんと一緒に帰っていた。
この私の質問に皐月さんは妥当に適当な答えを出してくれる。
っと言う事でお話しついでにカフェに寄って行くことにした。
「そんなん、やっぱ1発殴らんとなぁ」
「いやいや、だから穏便に話し合いで解決したいのですよ」
「いや殴れ」
妥当に適当な答えがこれで、私はさっきから困っているのだ。
「んなんわからねぇやつは頭の回路1回治さないといけないんよ。ほら、時雨ちゃんもブラウン管叩いたことあるやろ?」
「ありますけど、それとこれとは話が別ですよ」
「いや、一緒や。どっちも電化製品やからな」
根本が間違ってる気がする。
いや根元から腐ってるのか?
「にしても、確かにヨシくんの曲最近になればなるほど面白くないなぁ。それは聞き飽きたってことなんかなぁ?」
「いや、多分違いますよ。星空くんも言ってたんですけど、画期的な曲にしようとしすぎて失敗しているんじゃないかって」
「よし、殴ろう」
「いやいや。やめてください。それにそれは洒落ですか?」
「え? つまらん洒落はやめなしゃれ的な?」
「はい。是非に」
出してもらった紅茶を一口飲んだ。
お店も午前中は臨時休業していたみたいで、ちゃんと午後から開店する予定だったが、仕込みをするのを忘れていたらしく、未だに開けていない。
それどころか、この人がずっとここにいて仕込みを一行に始めないのだ。
適当に帰らないと、この店のためにならない。
「でも、みんな頑張ってるなぁ。紅白なんかも出ちゃって」
「ホントですよ。もう既に手が届かないところまできちゃったみたいですよ」
「よかったなぁ。既に手中に入れといて」
笑っていた顔が、悪意を含んできた。
私は溜め息を吐いて叱咤するような目で見返した。
「怒りますよ」
「皐月ジョークやジョーク。怒らんといてーな」
「悪質なんですよ、ジョーク『も』」
「『も』ってなんや『も』って」
「『も』は『も』ですよ」
紅茶を飲みきった。
私はそれで立ち上がる。
「それじゃ、帰ります。ちゃんと仕込みしてください」
「あ、そやったわぁ。仕事めんどいねん、ちょっと話し相手になってぇや」
「なら、仕込みしながら話してくださいよ。私これから星空くんの曲買いにいかなきゃいけないんですから」
「今日やったっけ!?」
「そうですよ」
「あたしのも買っといてー」
「えー。どうしようかなぁ」
「もぅ、時雨ちゃんのケチっ!」
「わかりましたよ。買っときますよ」
「ありがとさん」
上手く口車に乗せられた感じだ。
まぁ、それはそれでいいのだけど。
さぁ、買いに行こう。
美晴への答えを見つけるためにも。