18、
ダンドリオン。
今年に突如として有名になり、初のシングルもオリコンに入る程のバンド。
4人のバンドであり、ボーカル兼ギターのカジくんは、同い年で、髪は長く顔はイケメン。
メイクの影響だろうが目が大きく、シャープな輪郭。
さらに背も高く細い体つきにチラっと見えるたくましい筋肉、その上に多いかぶさるセンスある服。
あぁどっかの誰かと大違いだ。
飽きないくらい黒いその服。
髪は寝癖があって、顔はマフラーとかでよくわからない。
背は男子平均で細いけど、筋肉はない。
かっこよくないよなぁ。
などと思っていたらリハーサルが始まったようだ。
立ち位置や音量、さらに喋り方など事細かに決めていく。
そして、とうとう曲が始まった。
ドラムが1人で叩き始める曲。
彼らのデビュー曲であり、アレスこと美晴が書いた曲。
音楽のことはよくわからなかった。
だけど、ビートとかハーモニーとか、そういった事の意味がこの曲でわかるような気がした。
そう、始めて買ったCDはこれだった。
自宅でテレビを見ていたら、たまたま流れたのがこの曲だった。
一目惚れ?
そういう感じだった。
まぁ一目惚れしたことないんだけど。
サビの部分好きなんだ。
君が好きな人は誰なんでしょう。
きっとボクじゃない、誰かでしょう。
ボクだったら泣いて喜ぶでしょう。
泣いてねぇ、…………
あの柘植美晴がねぇ。
感慨深い。
いや、考えつかん。
なんか、女遊びとかしてそうだしな。
とっかえひっかえ。
うわ、きも。
そんな奴がこんな曲書いたとか考えられないわ。
そう、思ってた。
それだけだと、思ってた。
リハーサルが終わり、時間まで休憩になったので、近くのコンビニでお茶を買って外で飲んでいた。
中はタバコ吸う組がスパスパやっているのだから、煙たくてしょうがない。
はぁ、
街は車が横行し、既にネオンが光出していた。
都会ではない。
それでも、多少の明かりがそこら中で甘く勧誘している。
17時。
空は真っ暗。
なんとなく雲がかかっていた。
まぁ見えないからわからないのだけど。
そろそろ戻らなきゃな。
もう一度時計を見た。
16時23分。
あ、壊れてる。
ちぇ、安もんだからしょうがないか。
「壊れてんな」
「うわ!」
びっくりした!
「なによ美晴!」
「なにって、時計」
「あ、あぁ。なんか、さっき壊れたみたいなんだよね。でもまぁ携帯あるし」
「これ、」
「ん?」
それは美晴がしていた少しだけごついお値段高めの時計だった。
「受付が時計ないのは困るだろ。これしとけ」
「いいよ、高そうだし」
「いいから、もてよ」
左腕を取られ、半ば無理やり付けられた。
「似合わねぇけど、しゃねぇな。そろそろなか入れよ」
「うん」
はぁ、
溜め息が聞こえた。
少しだけタバコ臭い彼の吐く息は白く浮き出てすぐに消えた。
「冷えるな」
「うん」
会話が続かない。
なんか、気まずい。
心臓の鼓動がどんどん早くなる。
なんでよ。
「あ、」
彼は上を向いて呟いた。
「時雨か」
ぱらぱら、
それは間違いなく時雨だった。
ぱらぱら、
通り雨、急に降る、それはそれは鬱陶しい雨。
「雪になるな」
「そうだね」
「雪時雨……」
「うん」
「好きだぜ、オレは」
「う……はい?」
「こういう、風情感じる雨って」
「あぁ、そっちね」
「他になにがあるんだ?」
「別になんでもございやせーん」
「あっそ。さっさと入れ」
「言われなくても入りますよー」
私は先に中に入った。
何を期待したんだろう。
バカみたい。
ほんっと、