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しぐれぐむ  作者: kazuha
しぐれぐむ
178/200

178、




 大晦日。



 布団の上でゴロンと寝転がりながら携帯を眺めていた。



 最近就活で忙しすぎて、エンターテインメントなことはあまり見ていなかった。



 結構前から決まっていたらしい、紅白歌合戦出場もついさっき知ったくらいだ。



 それにしても、よく晴れた年の瀬だというのに体がだるい。



 どうやら風邪を引いたらしい。



 一昨日あたりから体がダルく、女の子の日も近かったのでそれかと思ったら、昨日熱が8度を越え、部屋に戻る前にぶっ倒れた。


 そしてこんな状態だ。



 部屋には2リットルスポーツドリンクが3本置かれていて、完全隔離状態なのに、今日サチレが紅白に出ると言う。



 あぁ、死んでも見なければ。


 いや、死にたくない。


 大智に移してでも見なければ。




 朝起きて直ぐに計った体温は未だに8度を越えていて咳も止まらない。



 そろそろ肺が痛くなっていて、本格的にインフルエンザなんじゃないかと思い始めていた。



 インフルエンザだと、大智今年受験だし、かわいそうかなぁ……。


 あれ?

 受験生だよね、たしか……。




 ペットボトルを1つ開けた。



 何故かコップもあるという準備万端感は母の計略性を伺える。



 スポーツドリンクをコップにあけて1杯を一気に飲んだ。



 渇いていた体を巡るように染み渡るスポーツドリンク。


 その感覚だけでも体感温度が下がった。



 また布団にこもる。




 体を動かしたくもないのだ。




 最悪の年の瀬になりそうだ。


 全く……ついていない。




 やることもなくゴロゴロとしている。


 本を読む気にさえなれない。



 寝ようにも瞼はパッチリだ。


 ただ、ここから見える窓の外の、晴れた空と白銀に染まる屋根を見ているだけだった。




 今、美晴はなにをしているのだろう。



 想像。



 東京は雪が降らないとよく聞く。


 降っても少しだと。



 携帯を開いて時計を見た。


 まだ午前だ。


 なにもしていないと、1日が長い。



 誰か暇つぶしに付き合ってくれないだろうか。





 小説なら、ここで美晴から電話でもあるのだけど……。



 軽く2時間くらい待っている。



 半ば諦めている。



 右に寝返りをうった。



 そろそろ汗が鬱陶しいのだ。




 シャワーでも浴びて、汗を流したいけど、体を動かしたくない。




 なにもかもを諦めて目をつむる。




 あ、そうだ。

 私眠くないんだった。




 そんな悪循環を繰り返していたら、メールが1通届いた。



 それは写メが載っていた。



 紅白、頑張る。




 たったそれだけの文。




 全員が一段とカッコよくなった衣装でそれぞれの楽器を持ちそれぞれのポーズで写っていた。



 私と皐月さんに送られている。




 視界のぼやける中で、ちゃんと見る、と送り返した。


 ちょうどいい暇潰しができた。


 その写メを眺めて、飽きることがなかったからだ。

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