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しぐれぐむ  作者: kazuha
しぐれぐむ
175/200

175、




 そのあと3日はどうやら観光をしているようで、私が頼んだ東京タワーとかレインボーブリッジとかが写メで送られてきた。


 みんな楽しんでいるようで、はしゃぎっぷりがメールの内容からもわかる。



 そんな会話をおやつ時のカフェでしていた。


 私は紅茶とパンケーキを嗜みながら、今日は暇らしく隣に座っている皐月さんと話している。



 皐月さんはお昼なのか自分で作った焼きそばを食べていた。




「土門ったら店の心配しかしないんよー。そういうメール欲しいわぁ」



 土門さんらしい。


 1番頑固な人だ。



「もう大丈夫やっちゅうねん。お客さんも優しいしなぁ」



 4つのパンケーキが重なったものにはちみつを惜しみなくかけられ、一番上にブロックのバターが乗っている。


 その1枚をやっと食べ終わり紅茶を飲んだ。



「きっと皐月さんのことが心配なんですよ。お店のことで落ち込んでないかなとか」



 そう言うと皐月さんの顔はみるみる赤くなっていった。


「ば、バカ! そんなことあらへん! たんにまた売れなくなるんやないか心配しとるんよ」



 1度強く肩を叩かれた。


 紅茶のカップを置いておいて良かったと思った。




「もう、時雨ちゃん! やめてーや!」

「ごめんなさい」



 面白くて面白くて仕方がなかった。



「もぅ! 笑うなぁ!」






 パンケーキを食べと終わると時間が大分過ぎていた。



 そろそろ帰ろうか。


 私は立ち上がり皐月さんに挨拶してお店を出た。


 カランカラン。



 相変わらず軽い音だった。



 少し暗くなり始めていた。


 カラスも鳴くのをやめ始めるくらいだ。



 私はネオン街を突き進む。





ーーーーどこかで、見たことがある。



 そう思わせた人とすれ違い直ぐに後ろを向くと、既にそこにはいなかった。



 気のせい?


 かな。



 そうだ。



 きっとそうだ。




 私はまた前を向き、歩き出す。





 どこか、金木犀の香りが高らかに香っていた。



 そんな季節だったな。


 時雨、金木犀、そして風花。


 私の認識している、この季節。








 まだ知らなかった。

 金木犀の意味することを。

 知らないまま、秋は過ぎていった。

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