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しぐれぐむ  作者: kazuha
その見える眼前の景色
164/200

164、




 とうとうライブの日になった。


 美晴は朝っぱらからいないので、皐月さんと一緒にお昼を食べていた。



 皐月さんとの会話はライブのことでいっぱいだった。



 午後5時。


 入場可能時間だ。


 私たちは一番乗りと勇んで20分前には会場に着いていたが、既に多くの人でごった返していた。


 渋々最後尾に並ぶ。



 今日はいつものライブハウスではなく、本当のホール会場であった。


 一応座って聞けるようだが、どうせ最終的に皆立つのであまり意味が無いのだろう。


 座席は546席。


 大小は私にはわからないけど、星空くんのソロライブの時はかなり広いと思った。



 見に来た人が吸い込まれるようにホールの中に入って行く。


 もうそんな時間か。



 進む列についていく。


 私たちも吸い込まれるように会場に入った。



 中では私ではない人に、前売り券を取られつかつかと進むとドリンクが売っているところとパンフレットとかが販売しているところが一緒になっていた。


 ってかそもそもなんでパンフレット売ってるの?

 そんなアイドルみたいなバンドだったのか……?



 くだらないことは考えず、とりあえず購入した。


 ホールの中は既に席を取っている女の人が、楽しみだと騒いでいた。



 私は前よりのど真ん中の席、唯一指定席として設けられている、場所に座った。



 ホール内は飲食厳禁なので、飲み物は外で飲まなければならなかった。



「あ、あたしトイレ行ってくるねぇ。ちょっと待っててー」



 そして私を置いて行ってしまった。



 なんとも言わないでとりあえずそこに座った。


 ぽつんと私ひとり。


 足をバタバタさせてみた。


 特に何もない。



 あぁ、暇だ。



 手に持っているパンフレットを眺めてみた。



 ……なんか皆カッコイイんですけど。


 1人1人が1ページ使って自己紹介。


 そのあとに曲紹介。


 最後のページにはCDが挟まっていた。



 なかなかお金がかかってるなぁ。



 そんなこんなしていたら皐月さんが帰ってきた。


「お待たせー! 時雨ちゃんはトイレ平気?」

「はい、大丈夫です」

「よっしゃ! 準備満タンやな!」



 ルンルンした感じだった。


 それもそうだ。


 皐月さんがまともにサチレを聞いたことなんて、極稀より無かったのだから。



 私でさえ久しぶりだと感じるのに、それ以上を感じている皐月さんはどの位楽しみなのだろうか。



 段々と人が増えてきた。


 時間もそろそろだ。



 座ってなんかいられない。


 その場で立ち上がる。


 それは慣習であり、なんの問題もなかった。



 まもなく始まるそれに、私はサイリウムを手に持った。

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