163、
とうとうコートを着ていないと外出出来ないほど温度が下がっていた。
皿洗いも水が冷たくてやりたくないが、やらない訳にはいかない。
まったく、まだ10月も半ばだと言うのに、これだから北の方は……。
そんなこんな思いながら皿洗いをしていた。
就職活動をしなければいけないのだが、案外そんな時間はなく、だからと言ってバイトを辞めるわけにはいかなかった。
今現在の収入は私のバイト代しかないからだ。
ふと、次のお給料がいつ入るか気になった。
カレンダーを見ると、後3日であった。
そこまでもたせなければ。
そのカレンダーにはいろいろなことが書き込まれている。
今後のお互いの予定を全て書くようにしているのだ。
私はピンク色で、美晴は青色で。
そして、お互い一緒のことをする時は赤色だった。
その赤色が10月の23日にあった。
サチレのこっち拠点の最後のライブ日。
それの最中調整中なのだろう。
美晴が私より早く起きて出ていき、私より遅く帰って直ぐに寝てしまう。
ちゃんとご飯もまともに食べれていないのだろう、少しだけ戻ってきた体重が、今は見た目的にげっそりしてきていた。
ライブ前日はウナギにでもして力を付けてもらおうかな。
そう考えると、もうそろそろいなくなってしまうんだなと思う。
寂しいと思う反面、嬉しい気持ちが最近強くなってきた。
私の彼氏は有名人。
誰もがちやほやするような人は私のものだ。
浮気なんかさせないし。
最後のコップを洗い終わってスポンジを元に戻した。
手をタオルで拭いてベットに座った。
暇だなぁ。
ふとパソコンが目に入った。
あれ?
今日忘れたのかな?
ちょっと見てみようかなぁ。
ノートパソコンを開くとスリープ状態だったらしく直ぐに立ち上がった。
少し経った後でワードの画面が立ち上がる。
……白紙?
そのページは白紙だった。
炙りだしだろうか?
いやいや、あくまでもパソコンだ。
そんな訳ない。
ん?
そういえば、パソコンの炙りだしって確かあるよなぁ。
左クリックしたまま、画面を選ぶと……。
……そんな上手く行くわけ無いか。
ただ、画面が変な色になっただけだった。
……うーん。
なんか寂しいから、題名だけ書いておこうかな……。
えっとー、、、
『しぐれどき』
っと。
……なんか馬鹿みたいだなぁ。
意味わからないし。
自分の名前入れるのもキモいなぁ。
まぁ、いっか。
恥ずかしくなってパソコンを閉じた。