162、
学校もなかなか始まり、そろそろ文化祭らしいけど、私には関係ないことだった。
なにせ他のことでいっぱいいっぱいだし、遊びに行っても友だちがいないからなんの面白味もない。
そんなこと考えながら美晴と一緒にパンフレットの中に他のバンドの紹介のようなものを挟んでいた。
パンフレット自体かなり数があり、それひとつひとつに入れていくのは夜な夜な乏しい明かりの中でやるものではないと思った。
「ねぇ、東京行ったら写真に撮ってきて欲しいものがあるんだ」
私は駅とかにある旅行のパンフレットなどを見て妄想旅行を楽しんでいた。
そのごく一部の楽しみを美晴にも手伝ってもらおうと思ったのだ。
「なんだ?」
「まず、東京駅でしょー。それから東京タワーに、あ、レインボーブリッジも見たいなぁ。それにフジテレビの球体。スカイツリーにとか……」
片っ端から見てみたいものをピックアップして言った。
言い終えてから美晴を見ると、苦い表情をしながら若干引いていた。
「それ、覚えられねぇ」
「えぇー。じゃぁ、東京に行ってる時にメールするー」
ほっぺたを膨らませて不服を言った。
「わかった。それ全部写メって送るよ」
よっしゃ!
っと思ったら1枚だけ白紙の紙を見つけた。
「あれ?」
「印刷ミスだな」
その紙は直ぐにはけられ作業に戻った。
その作業が終わったのは夜の1時だった。
ざっと4時間くらいやったことになる。
終わって伸びをしたら一気に疲労感が私を襲った。
「お風呂いれるね」
私は立ち上がった。
この時間にお風呂に入るのは少しめんどくさい気もしたけど、入らない訳にはいかなかった。
蛇口を捻るとまだ冷たい水が流れて風呂ガマに溜まっていく。
そのまま放置して部屋に戻る。
ご飯は食べ終わっていてお風呂を入れようとしたらこんなことになったので、少しだけお腹が空き始めていた。
部屋では、白紙の紙をファイルにしまっていた。
「なにしてるの?」
「ん? 勿体無いかなって」
そう言って机の上にファイルを投げた。
私はベットに横になる。
すると美晴も隣で横になった。
「疲れた」
「そうだねぇー」
目をつむると直ぐに寝てしまいそうだった。
秋とは言え、まだ日中は暑い。
髪の毛も触ればベタついている。
それは美晴も一緒だ。
このまま美晴に抱きついて寝てしまいたい。
体の疲労は意外にも蓄積されていていた。
「先風呂はいるか?」
「え? 長いよ」
「いや、寝そうじゃん」
何かを察せられたのか、それとも半分寝ていたのか……。
どっちにしろ少し恥ずかしかった。
「わかった入る」
そろそろ半分溜まったくらいだろう。
私は着替えを持って脱衣所に向かった。
今日は眠いのでササッと上がろうと思って本は置いてきていた。
少し少ない湯船に浸かり、お湯が肩を沈めた。
気持ちがいい温度だ。
体と髪を適当に、それでもしっかりと洗いパジャマに着替え脱衣所から出てきた。
美晴はパソコンをいじっていたが、私を確認すると閉じてしまった。
「早かったな」
「寝たいもん。先寝てるね」
「あぁ」
髪を乾かすのも面倒だった。
ベットに飛び込み枕に顔を埋めると直ぐに睡魔に襲われた。
そのパソコンの中身を知りたいとも思わなかったから、翌日になると忘れていた。
そう、それくらい何もかもに無関心だった。