151、
なんの会話もしなかった。
そもそも、そのあとに前の女の子たちが美晴に絡みだしたため、私は関与せずにいた。
食べ終わってから無言で席を立ってトレーごと食器を洗い場に置いていった。
さて、これからバイトなんだが少し時間が余った。
何をしようか。
とりあえず迎えに来るらしいので学校で待っていなければならない。
っと、そんなことを考えているときに電話がバイブルした。
それはカジくんからの電話だった。
直ぐに出る。
「おい、着いたぞ」
「え!? はや」
「いいから早く来い」
あ、はい。
私は方向を真反対に取った。
ゆっくり歩いていくと確かにカジくんの車があった。
後部座席のガラス窓をノックすると鍵が開く音がした。
ドアを開けて中に入る。
相変わらず、甘い煙草の臭いがする。
「おせぇな」
「カジくんが早いのよ」
私の仕事はそんなに早い時間にはない。
なのでもっとリハーサルで時間を割くと思っていたためこんなに早く来るとは本当に思ってもみなかった。
「あ? オレに逆らうのか?」
「いや。ほとんど逆らった気がないんですが」
ドアを閉めると同時に冷房が車内を一気に冷やしていく。、
「口の減らない女だな。ほら、行くぞ」
そう言って彼は前を向きアクセルを一気に踏む。
おかげでソファに頭を打ち付けてしまった。
相変わらずな会話しかしていない。
カジくんが一方的に攻撃を放ち、私が辛うじて避けている感じだ。
ライブハウスに着くのはそこまで時間がかからなかった。
中ではダンドリオンではないバンドのリハーサルが、行われていた。
カジくんは着くなり煙草を吸い始めた。
「特に意味はない」
1つ紫煙を吐いてそう言った。
「え? なにが?」
「はやく連れてきたのに」
なんだそれは。
私は自分のために用意されていたパイプ椅子に座る。
「いや、暇だからなんならって」
「あ、そう」
「なんだ? その反応」
「いや、そのまま」
そう言うとカジくんは煙草の煙を私に吹きかけてきた。
思わず目をつむって息を数秒間止めた。
「なにするのよ!」
「適当な反応すっからだ」
ホントに、なんなんだこの人は。
そう言うと急にヘッドホンをした眼鏡の人がカジくんの肩を叩いた。
「なんだ?」
「あの、今日予定してたバンド1つまだ来ていないんですが……」
それを聞いた瞬間、カジくんの顔が鬼と化した。
「あ゛!? どこだ? 今すぐ呼び出せ!」
「それが、連絡がつかないんです」
「は!?」
カジくんはその男の人の足を蹴る。
「なら替えでもなんでもいいから呼べや! ポンコツが早くしろ! それじゃ終わる時間早すぎるだろ!」
こんなときに妙案が出てきた。
しかし言うべきか、言わざるべきか……。
「しかし、当日となるとどこのバンドも……」
「つべこべ言わず当たれ! お前の責任だっつってんだよ!」
この人がどんな人なのか私にはわからないが、なかなか理不尽な要求だ。
「ねぇ、私に宛があるんだけど、当たってみる?」
カジくんの視線がゆっくりと私に向いた。
その意味を知ったのか、カジくんはにやりと笑った。
「あぁ、いいぜ。この際なんでもいいからな」
私は直ぐに携帯を取りコールを鳴らした。