150、
もう夏だと言っても過言ではない。
すでに半袖だけでないと暑くてやってられない。
それでも薄目の長袖を着るのは日焼け対策だ。
今日はカジくんのバイトに行く日である。
あの日以来弟には毎日のようにグチグチと美晴のことを言われ続けてきた。
まったく、ねちっこい男はモテないぞ。
そういえば、美晴からまだ返事を貰っていない。
どうせ別れたくないとかそこら辺なんだろうが、大分どうでもよくなってきた。
さぁ、学校に行こう。
昨日少しだけ夜更かしをしてしまったため、若干重い体に鞭を打って家を出た。
相変わらず午前で講義は終わるので、それまでの辛抱だ。
電車内は座れないのでイヤホンから流れるダンドリオンの曲で必死に耐えていた。
それは乗り換えても変わらずイヤホンに耳を傾けるだけだ。
……?
私、サチレの曲入れてたっけ?
そう思うとウォークマンをバックから取り出して地道に1曲づつ探していく。
それが意外にも入っていなかった。
何故だろう?
答えは単純だった。
いつもその音楽は側にあったから。
あぁ、くだらない。
くだらない。
なにに思い耽っているのだろうか。
電車で座れなかったからなのか、講義は半分以上寝てしまった。
講義で寝るなんて今日が初めてだった。
これがグレたというやつなのだろうか。
学園ものの漫画なら、担任の先生に呼び出されて少しばかしお叱りを受けるところだ。
お前はそんなんじゃなかった、と。
それで改心するパターンが多いが、たまに授業で寝るくらいいいじゃないか、と私は思うが……。
まぁ、言い訳でしかないのだろうが。
というより、無性に眠い。
なにかおかしい。
まさか、あれと言うわけではないよね?
そんなこんな、お昼を食べに食堂へ向かった。
今日は炒飯。
がたまたまオススメだったから炒飯にしてみただけだ。
炒飯の乗ったトレーを持って大体埋まっている席の空きを探している。
しかし、意外にも今日は空いていない。
しいて言うなら、美晴の隣り以外空いていない。
なんとも策略的なやり方だ。
まさに、孔明の罠かと言わんばかりに。
仕方なく、仕方なく美晴の隣りに座る。
「隣り座るわよ。他が空いてなかったから」
彼の顔がこっちを向いた。
それをチラっと見ると、どこか嬉しそうな顔をしていた。
「勘違いしないで。他が空いてなかっただけだから。ホントに。仕方なくなんだから」
炒飯を食べ始める。
なんともべとついたあまり美味しいとは言い難いそれは、私に咀嚼され胃に落ちていった。
彼はラーメンだった。
なぜだか、半分くらい残っているそれは伸びきっているように見えた。