147、
翌日、特になんの感情も示さずに目覚めた。
なんとなく頭が重いので顔を洗うことにした。
洗面台にはもちろん鏡がある。
それを見て少し不思議に思った。
目が赤いのだ。
泣いたっけ?
いや、夜は怒りであちこちに八つ当たりしていたくらいだ。
泣いた記憶はない。
ということは、寝ながら泣いてしまったのだろう。
まだ、アイツのことを求めているのだろうか。
いや、素直じゃないアイツは嫌いだ。
全部隠すアイツは嫌いだ。
顔を洗い、目の赤さが引かないので今日は眼鏡で登校することにした。
ダサいかな。
いや、それでいいんだ。
私なんて誰も好きにならないんだから。
みんなそう。
授業を受け、昼休みになった。
今日は午後まであるので仕方なく食堂でご飯を食べることにした。
今日は親子丼。
どこに座ろうか探していたら、いつもの場所に美晴が座っていた。
それを避ける。
見つからないように、空いているカウンター席に座った。
お箸を持っていただきますと無言で両手を合わせ食べ始める。
食べ始めたら、後方できゃっきゃ言う女子たちの声が聞こえた。
「美晴先輩ですよね! あのサチレのギターの! 私ファンなんです! あ、あのサイン頂けますか?」
声だけは確認できた。
1年生だろうか?
相変わらずアイツはモテる。
私なんかが不釣り合いなほど。
そう考えていると余計イライラしてきて、親子丼を駆け込むように食べた。
結局私には気づかなかったようで、私は1人で次の講義に向う。
ちらっと美晴の方を見ると、アイツはピチピチの女の子3人と一緒にお食事をしていやがる。
確か今日はアイツ午後ないんじゃなかったっけ?
これから遊びにでも行くんじゃないかなぁ。
そんな時、電話が鳴った。
カバンから取り出し、画面を見るとカジくんからだった。
「はいもしもし?」
「お、珍しく出た。なぁ今日暇か?」
「これから後ふたコマありますけど?」
「なんか高圧的だねぇ。まぁいいけど。ならそれ終わったら来いよ。タダでライブ聞かせてやる」
なんともまぁいい暇つぶしだ。
裏があるのだろうけど、それもまぁ受け止めてみよう。
もう、この体を綺麗に保っている必要性がなくなった。
「わかった。いくよ」
その言葉にカジくんも驚いたようで電話から息を大きく吸う音が聞こえた。
「ねぇ、どこでやるの? あ、私朝までいけるから今日。ねぇ、どうせ飲むんでしょ。付き合わせてよ」
カジくんが笑いを堪えきれずに高らかに笑った。