138、
ゴールデンウィーク。
それは至ってつまらない長い休みだ。
皆、ライブ活動だと言って近場の県を行ったり来たりしていた。
毎日帰って来てはいるみたいだが、美晴ときたら私に顔さえ見せない。
まったく失礼なやつだ。
こんなにも寂しく1人で本を読んでる女の子を1週間もほっておいていいのだろうか。
ゴールデンウィーク最終日の今日はいつものところでパーティーをするらしく、私にもお声がかかった。
パーティーと言っても盃を交わすような古典的且つ下品な、宴というやつだ。
ドレスなんて着ていかないし、そろそろ暑くなってきた気候にミニスカートと胸が大きく開けたTシャツに薄いパーカーを羽織るだけだ。
そういえば、余りに暇だから髪をすいてもらった。
いや、だいぶバッサリ持ってかれましたが。
それでも弟は気づかないくらいだ。
美晴は気付いてくれるだろうか……。
月が遠く黄色く光だした午後8時。
お迎えの車と共に私はパーティー会場へと向かった。
ただ、気が気ではないのが運転している美晴がやけに痩せ細って見えることだ。
もとから細い体格だったが、ここまでくるとげっそりと言う表現があっているのではないだろうか。
「ねぇ、美晴。ちゃんと食べてる?」
「ん? 食ってるよ。ちゃんと3食は」
「それ、食パン1枚とかじゃ無いでしょうね?」
適当に言ってみた。
そのカマをかけたような言葉に美晴は体をびくつかせた。
ため息しか出ない。
「なんで? コンビニ弁当でもいいから夜は食べなさいよ」
「コンビニ寄るのめんどいし」
「じゃぁ、私買ってってあげるから」
「いや、いいって。そもそも家までこれないだろ?」
しまった。
コイツん家、コイツが運転する車でしかも帰ったくらいだからどこらへんかもわからねぇ。
「じゃぁ教えなさいよ! 知る権利はあると思うんだけど私!」
「めんどくさい。教えない権利を行使します」
「はぁ!? なんでよ! なんかやましいものでも隠してるの?」
「色々と……」
「最低!!」
後部座席に置いてあったクッションを1つ投げつけると車が大きく左右に揺れた。
「危ねぁだろ!!」
「あ……ごめん」
車は道を立て直したようで真っ直ぐ赤信号を無視した。
もう、そこが会場なのだ。
近くの駐車場に止めると私は美晴を待たずにドアを開けた。