134、
「あらあら、大丈夫?」
「たたかれた!」
大声は辺りを巡って2回聞こえる。
それなのに遊んでいる子たちは気にも留めないでやけくそ的に遊んでいる。
女の子はその中の、確かに殴った子を的確に指さしていた。
「そっかぁ。ちょっと待ってて」
奈保美さんはそのこの所に向かい何かを話し始めた。
すると、その子の顔がどんどんしおらしくなっていき、奈保美さんと共に未だに泣いている女の子の所に来た。
「……ごめんなさい」
もごもごした口調だった。
でも、それはしっかりと届いたらしい。
「う……う、うん」
まだ泣き止むには時間がかかるが、これは一件落着のようだった。
「時雨ちゃんだったかしら?」
「あ、はい」
泣きやませるために女の子を抱きながら、私に話しかけてきた。
「そろそろ日が落ちるわ。カジくんと見てきたら?」
なぜ彼と一緒に夕日が落ちるのを見なければいけないのか。
とは思ったが、見たい気もあった。
「折角来たんだから見ていきなさい。カジくんも忙しいからさっさと帰るだろうし。未だに1人じゃ来れないのよねぇ、あの子」
静かに笑いながらそう語る。
「カジくんって、昔ここの孤児だったんですか?」
そう聞くと奈保美さんは女の子を確認した。
どうやら泣き疲れて寝てしまったらしい。
「ごめんなさい。それは言えない約束なのよ。守秘義務って知ってるでしょ?」
あぁ、なるほど。
確かにそんな法律もあったな。
「変なこと聞いてすみません」
「いえいえ。また機会あったら来てください」
私は一礼して校庭に出た。
そこにはカジくんがいなかった。
あれ?
置いてかれた?
そう思ったが、門のところでタバコの煙らしきものが見えたのでそこに向かった。
「お、来たか」
カジくんが門に背をもたれさせながらタバコを地面に投げつけ黒い革靴でにじり踏んだ。
「夕日見てくか?」
「う、うん」
濁し気味で返答すると、ニヤッと笑った。
「じゃぁ、見せびらかしにいくか」
見せびらかしに?
急だった。
手を取られ、恋人繋ぎにむりやりさせられた挙句、引っ張られて林の中をスイスイと進んでいった。
木漏れ日自身ないこの林は若干暗く、不気味に風が木々を鳴らす。
電柱が点いていたが、所々電球が切れてチカチカしていた。
とある所までくると夕日が目を刺す。
もう、森から出る。
「ほら、時雨ちゃん。君の待ち人だよ」
はっと思ってそこにいたたった一人の人を見て驚いた。
柵もないこの場所の断崖絶壁に立っている美晴が逆光で黒く輝いていた。
「よぉ美晴! だいぶまったぜ?」
「すまんすまん……っ!!」
美晴がこっちを向いた瞬間、私と目があった。
なんだこの状態。
そう思った瞬間には、カジくんの顔が私の顔と交わっていた。
唇に柔らかいものが当たっていて、吐き吸いする息を感じられた。
さらに、それだけじゃ止まらなかった。
彼は私の中にまで入ってきた。