132、
車を降り、先に降りていたカジくんは遠隔型の鍵を閉め、駐車場から公園内へと入っていく。
どうやら想定していたより広いらしいこの公園は海と隣接しているらしく、綺麗な夕日が見られると絶賛されるくらいの場所らしい。
入口の看板に大々的にそう書いてあった。
確かにそろそろ夕日時だが、まだ結構時間がある。
それまで何をするのだろう。
「なんでこんなとこ? とか思ってるんだろ?」
さっきっからだが、なんでこの人は私の心を読むようなことをしているのだろうか。
当たっているから尚怖いのだが。
「そうですよ。なんでそんなこと言い当てるんですか?」
「暇潰しだよ。当たってたら楽しいだろ?」
理由になっているのか?
それはわからないし、理由だとしてもよくわからない。
そんなこと考えてふと真っ直ぐを向いた。
どうやら、子どもも多いのだが、夕日を見に来たカップルが多いように見られる。
私たちと同じように、整備された土道を真っ直ぐ進んで海辺に向かっている。
まぁ、ロマンチックではある。
こんなところで告白なんかされた日にゃぁイチコロだろう。
「にしても、人多いな。今日は少ないと思ったんだがなぁ」
そう嘆くと雑草を蹴るように地面を蹴りあげた。
このまま直進を続けていると十字路に出た。
大概のカップルは直進をした。
私もこのまま真っ直ぐなんだろうなと足を変えずに直進しようとした。
「どこいくんだ? 別に夕日見に来た訳じゃねぇぞ」
そう言われて足を止めた。
「ーーーーそうですよね」
カジくんは左に曲がるので私はその後をついていく。
看板を見るとそっちには、孤児院があるようだった。
孤児院?
なんの関係があるのか……。
漆黒のパズルのピースが、色づくように、そしてしっかりとはまっていくように私の中でなにかが理解できた。
孤児院は公園内ではなく、公園の隣にあるようだったが、結局のところ公園の敷地のようなつながりをしていたのでぱっと見まだ公園内にいた。
カジくんは躊躇わず中に入る。
「あ! カジ兄ちゃんだ!」
「え! カジ兄ちゃん?」
この場にはまだ院内の校庭で遊んでいる少年少女がたくさんいた。
その全員がカジくんに気づいて餌付けされてる鯉のように集まってきた。
「ライブどうだった?」
「ねぇ! お話聞かせて!」
「ヨシ兄ちゃんは?」
「疲れて寝てる。今日は来ねぇだろうよ」
「えぇ、ヨシ兄ちゃんにギター教えて貰おうと思ったのに」
「オレが教えてやるよ」
「カジ兄ちゃん教えるの下手なんだもん」
「ねぇカジにぃ! おままごとしよ!」
対応に困っているカジくんを見ているとなんだかほのぼのしく思えた。
しかし、私からしたら、全てが遅かったその時までに気づかないなんて、全く持って自分がバカだと思った。
ここで全てを知っていたら、こんなことにはならなかったのかもしれない。
今更なんだ。
ーーーーもう、美晴は帰ってこないーーーー