129、
今日やっと美晴が全国ライブを終わらせて帰ってくる。
そう知っていたところで、私には彼に会う術は持てどあったところでなにが起こり得るかまでは予想ができない。
半ば諦めが入っているが美晴から会おうと言うまでは会わないようにしていた。
そんな学校のお昼だった。
昨晩、小説の切りが悪く最後まで読み切ってしまったため、いつもより寝る時間が2時間ほど後になってしまっていたため少しだけ寝不足であった。
眠い目を擦りながら食堂へ向かっていると、何故か後ろから誰かの視線やら影やら、兎に角触れて欲しいオーラを察知して振り返った。
そこには、最早半分以上寝ている美晴が明後日の方向を見ながら足を引きずるように歩いている。
「だ、大丈夫!?」
「……時雨? あぁまぁ大丈夫でないことはないと思うよ」
この人誰ですか?
と言えるくらい、魂が抜けていた。
「あのさぁ、腹減ったんだけど食堂ってこっちだっけ?」
「そ、そうだけど」
「あぁ、よかった……腹減った、」
そう言いながら1歩進もうとしたのかもしれない。
「美晴!!」
その直ぐに美晴が倒れる。
近寄って肩をさするが応答がない。
この人死にました。
いやいや、息はしてる。
兎に角、保健室にまでは……。
持ち上げようとしたが体を起こすことさえできない。
こんな時に非力な女の子をやってる自分を恨んだ。
火事場の底力的な力出ないものだろうか。
そんなくだらないことを考えていたら、皐月さんが走って来た。
「おぉ……。道端にうマルこみたいなのが落ちてると思ったらただのマルんこだったか。ほっておいてもええけど、どおする? 時雨ちゃん」
「下品なこと言ってないで保健室に運ぶの手伝ってください」
「まぁ、ええけど。時雨ちゃん足持って。あたし上持つから」
そう言われて直ぐに足の方に向かって持ち上げる体制になった。
「よっしゃ、持ち上げるで。いっせいのせ!」
持ち上がったそれは意外にも軽く、それでいて間抜けなものだった。
「ささっと運ぶか」
「はい」
四苦八苦しながら保健室にぶち込んだ。
保健の先生が言うには完全に寝不足だそうだ。
当分起きないとか言われたのでとりあえず食堂で遅目の昼食を取った。
そして、急に動き始めることに、私は…………ーーーー。