127、
朝も意外と早かった。
昨日中にメールを貰ったが10時に待ち合わせだとは思わなかった。
駅でいつものように壁にもたれかかっていたら、いつものように3分遅れてきた星空くんが寝癖をつけた髪で走ってきた。
そして2人で、電車に乗り数駅でたどり着いたここらでは有名な霊園の名を持つ駅で降りた。
5月手前の強風に吹き飛ばされそうになっていた。
星空くんに手を引いてもらい、霊園に入る前にお花を1000円程度買った。
「僕だけでよかったのに」
星空くんも2000円程度のお花とついでにお線香も買ってまた手を引いてくれながらそう言った。
「いや、私もそういうことはちゃんとやらないと」
「別に美月姉はそんなこと気にしないのに」
「いや、ケジメだし」
言っといてなににケジメをつけに来たのかと自分で突っ込んでしまった。
そろそろ、霊園に入る。
霊園の入口は学校とかとなんら変わりない大きな門で、くぐると中は公園のようだった。
少し進むと、大きな墓石が威厳を放つように何個か置かれていた。
まぁお金持ちのお墓なのだろう。
奥に進むにつれ段々小さくなっていき、霊園の端に来ると人一人が立てるくらいの敷地面積しかないお墓が連続して並んでいる。
そこの1つに美月さんのお墓があった。
結構綺麗にされていて、お花も綺麗なものが活けてあった。
「また土門1人で来てたのか。しつこい男は嫌われるって言われてたろうに。土門、月に2、3回ここに来てるんだよ。多分ね」
意外とマメな人なんだな。
少し感心して、そして未だ忘れられないことを切に表していた。
「なぁ美月姉、そろそろ新しい人生を見た方がいいと思わない? 美月姉から言ってやってよ。僕が言ったって聞く耳もたないんだから」
そう言いながら、お花を活けていく。
私も二つある花瓶のような所に花を活けていく。
終わると、星空くんがライターを出し、お線香に火を点け、ある程度燃え広がると息を吹きかけて消した。
お線香の煙がくゆる。
半分を私に渡し、まず星空くんからお線香を置き手を合わせる。
数秒とは思えないほど長い時間だった。
星空くんは立ち上がり、次は私の番になる。
しゃがみ、星空くんのお線香より手前にお線香を置いた。
そして両手を合わせる。
はじめまして、私は黄金沢時雨です。
星空くんと仲良くさせて貰ってます。
以後お見知りおきを……。
そこまで念じて、私も立ち上がった。
これでひと通り終わり、来た道を戻ることにした。
まだやけに風が強く、轟々と上空で唸りをあげている。
私は星空くんの手をしっかりと握り、俯き加減に霊園を出た。