124、
私と星空くんは諦めてファミレスに入った。
前程がっついてこないので、友達感覚でいられるのは心に優しい。
私もパフェを頼み、2人で早めのおやつにすることになった。
「もう、みんな真剣だよなぁ。土門がまさかあそこを売るなんて思っても見なかったけど、確かに正しいことだと思うしね」
東京に出る。
地方に居住を持ってもできると思うのだけど、なぜそこまでするのだろうか。
「なんでみんな東京に住むの?」
そんな疑問をぶつけてみた。
「簡単な話さ。僕たちはずば抜けて上手い訳じゃない。ならどうするべきか。路上ライブもやっていこうってなったんだ。プロをやりながら、最もファンに近いバンド、そこで名前を売ろうってことになってね」
意外と考えている?
「それ、なんかプロっぽくないよね」
「そうだね。僕もそう思うよ」
「売れようとしてる人の邪魔にならないかな?」
「うぅん。なりそうだね」
なんか不安定過ぎないだろうかこの作戦。
そこまで詳しいわけじゃないし口出しできるような身分ではないけれど、なんか違う気がする。
「ちゃんとやれば確りファンはつく気がするんだけどなぁ」
「それじゃダメだって美晴がね」
「考え方固いのよ相変わらず」
「そうそう、ホントに固いよねアイツ」
パフェの生クリームをひとなめするとその甘さが一気に脳に回った感覚が出た。
あぁ、幸せ。
「まぁ、難しいこととか考えないで、自分の思うように動くのがいいよ。時雨ちゃんは特にね」
「え? どういうこと?」
「そのまんまだよ。時雨ちゃんはそのままでいいんだよ」
頭を傾けて彼を見たが笑顔でチョコレートパフェを一口食べた。
「ほら、甘いものでも食べなよ。重苦しいんだよ最近の時雨ちゃん。そのうち潰れちゃいそうなくらいね」
そう言うなり、パフェをガッツリ食べ始めた。
私もゆっくりストロベリーパフェを食べ始めた。
心配してくれてるのかな?
それにしては雑な気がするけど。
でも確かに最近考えることしかしていない。
少しくらい休憩してもいいんじゃないだろうか。
たまには、そうねぇ……。
デートでもしたいかなぁ。
そんなことを考えたら急に自分がバカみたいになり、いや恥ずかしくなった。
顔が熱い。
セルフ赤面もいいところだろう。
「ふぅ、復活!」
星空くんがパフェを食べ終わると、背もたれに深く座った。
「甘いもの好きなの?」
「うん、そうだよ」
「へぇ、可愛いね」
「みんなによく言われる。そんなことないと思うんだけどなぁ」
「じゃぁさ! 甘いもの廻りでもしない? ちょっと息抜きがてらね」
「おいいね! 行こう行こう!」
私も少し早めにパフェを食べ、席を立った。
「どこかいいところ知ってる?」
「うぅん。探してみよっか」