115、
目が覚めると、日が暮れていた。
側には皐月さんが私の手を握りながら寝ていた。
化粧が少し濃いその顔は、何故か苦しそうだった。
心配してくれている。
そう思うだけで1人ではないことを痛感させられた。
体を起こして、布団を皐月さんに掛けた。
すると、むにゃむにゃと口を動かして、
「お腹空いた」
と寝言を言った。
これは1本取られた。
心配は腹の虫だったか。
クスクス笑うと、皐月さんの寝顔も笑顔になった気がした。
ベットに腰掛けるように座り、携帯を取った。
電源をつけよう。
もう、覚悟はできていた。
別れないし、私は美晴と側にいる。
まぁカジくんもカッコイイけど、そんな一面だなんて知らなかったからね。
一気に嫌いになった。
私は皐月さんを信じよう、と思った。
これが嘘でもなんでも。
美晴の側に入れる方法や感情に私は加担する。
それだけ。
それだけだ。
切る方のボタンを長押する。
ようこそと画面が光り、画面が会社名を示す。
その画面が長く続き、ようやく通常の画面に戻った。
メールとかの受信には数分時間が必要だから、私は今のうちに日記でも書くことにした。
今さっきあったこと全てを書く。
美晴とカジくんのこと。
夢のこと。
スペースがそこまで広くない1日の区画に出来るだけ事細かく書いた。
自分が思い描く未来のために。
書き終わり、日記を隠す。
さすがに見られると恥ずかしいし。
そして、そろそろご飯の時間なので皐月さんを起こす。
「皐月さん! ご飯ですよー! 起きてください!」
肩をゆするが意外と起きない。
「ほら! 皐月さん! 美味しそうな魚の丸焼きですよ」
「にゃぁぁ!!」
目を光らせて飛び起き、あちこち見回してから、匂いを嗅ぎ、多分魚ではない何かを焼いているキッチンの方に向かって階段を降りていった。
いやぁ、家って、ペット大丈夫だったっけ?
思わず笑ってしまった。
声は相変わらず枯れている。
当分はこのままだろう。
仕方がない。
自業自得に近いのだから。
携帯を取る。
見るのは怖かった。
でも見なきゃ。
メールはとんでもない件数が来ていた。
主に皐月さんとメルマガだった。
その中に1件だけカジくんからのがあった。
内容は、なんだ、お前。ヨシとはなんでもないのか、だった。
案外バカなのだろうか。
わからないけど。
でも、寄りを戻したら、また壁として出てくるのだろう。
入念な準備が必要だ。
だけど、それは私だけじゃわからない。
みんなと相談しよう。
それがいい。
かなりの量だったので、全ては見ず、メールを全選択して削除した。
私には強い味方が一杯いる。
だから、もう、めげない。
携帯を片手に、皐月さんが掛けていった居間に向かった。