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しぐれぐむ  作者: kazuha
カジとヨシと……
111/200

111、




 体がダルい。


 今日はいつなんだろう。


 携帯を探すと大体いつもの所に置いてあった。



 携帯を開き、日時を確認すると、バイトの翌日であった。




 それと、メールが何件か入っている。


 1つは皐月さんから。


 その内容から、どうやら私はバイトをそつなくこなしたが、生気を感じることができない状態だったので美晴に連絡を取って家の場所を教えてもらったらしい。



 連れてきてくれたのだろう。



 そんな内容が書かれていた。



 今更だが、ありがとうだけでも送っておいた。




 2件目はカジ君からだった。


 飲みの会で美晴からメアドを聞いたらしい。


 そのあとにカジ君の暇な日が2ヶ月分くらい書かれていて、そこは絶対に空けておくようにと書かれていた。




 そうだ、こんな状況だった。


 美晴に売られた。


 細かくは違うが、私にはそうとしか感じられなかった。




 昔も、そうだった。


 そう、昔も……。




 あれは中学のころ。


 私もまだ普通に生活していた頃。



 そりゃぁ好きな人だっていた頃。


 好きな人は生徒会長だしサッカー部のキャプテンだしでかなりの女子にモテていた。



 女子グループの中でもうるさい方にいた私はその子のことを好きだなんて口にできなかった。


 グループのリーダー的な存在の子が好きだと自分から言っていた。



 三日後にはバレンタイン。


 その日に告白すると言っていた。


 そっか。


 世の摂理をわきまえているつもりだ。


 この子にたてつくようなことはしたくないし、心から応援していた。




ーーーーでも、チョコだけは渡しておきたかった。



 私は作っておいたチョコを、私という証拠を何も残さずに机の中に入れた。



 朝でなく、前日の放課後に入れておいた。


 意外と人がいないその時間に完全犯罪の如くやり遂げた。


 ありがとうとか、美味しかったよとか言われたかったけど、そんなことしたらどんな災が起こるかわからなかった。



 バレンタイン当日のお昼。


 リーダー的な存在の子が泣きながらトイレにこもるところを友だちと見ていた。


 こっそり覗いていたが、他に好きな人がいると言ってフった。



 心配だったが、内心ほっとしていた。




 彼に呼ばれたのはそのあとすぐだった。



 放課後、校舎裏に呼ばれ、なんだろうと恐る恐る向かって行った。


 ドッキドキだった。


 なんで呼ばれたのかなんて予想していた。




 行ったら、彼が箱を持っていた。


 私が前日から忍ばせていたチョコの箱を。


「これ、黄金沢さんだよね?」


 バレていた。


 どうやら、昨日1回忘れ物を取りに戻ってきたらしい。


 その時に、見られていた。



 内心焦っていた。


 でも、次の言葉で私は地の底まで落とされた。



「ウザイんだけど。こういうのやめてくれない?」


 箱は重力に従って落とされ、落ちたと同時に踏みつけられた。




 ケラケラと女の子の笑いがどこからともなく飛んでくる。



 始めから、この予定が立てられていた。



 そう知ったのは、すぐあとに、リーダー的な存在が彼の隣に出てきて、濃厚なキスを始めた時だった。






 裏切り。


 そのあとずっと、人に心を開けないでいた。



 母にもなにも言っていなかったが、悟ってはいた。


 高校に上がり、その子たちとも絶縁できても、心の傷が人との関わりを拒否していた。




ーーーーまたどうせ裏切られる。



 どこかでそう思ってしまう私がいて、時折枕を濡らしていた。






 起き上がる。


 目覚めてから軽く30分が経っていた。


 寝間着の袖で目を叩き、頬を平手で叩いた。



 しっかりしろ私。


 もうなれているだろ。






ーーーー別れよう。


ーーーーもっと傷つく前に。




 そんなときに、もう1件メールが入っているのに気付いた。


 それは美晴からだった。



 朝5時に送られていたから、多分飲んだあとだろう。


 好きだとか会いたいとかがいつもなら書かれているものだろうと思った。









ーーーー別れようーーーー








 内容はそれだけだった。



 思わず笑ってしまった。



 ほらやっぱりだ!


 裏切られた!


 予想通りだ!




「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 顔を枕に押し付けて声を殺そうとしたが、出る声はお母さんに聞こえたらしい。




 部屋に入ってきて、どうしたのとか言っているが、答えられなかった。



「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 もう止まらなかった。



 涙が流れているかわからない。


 喉が痛くなってきた。



 泣き止むことができるかわからなかった。



 もう、生きている意味を感じなくなった。

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