108、
翌日はお昼に美晴に会えた。
いつも通り無愛想な顔なので安心した。
これが笑顔なら気持ちが悪い。
私はカレーを、彼はカツ丼を注文していつもの辺りに座った。
福神漬とかセルフサービスになってるので、私は大量に乗っけている。
好きなんです、福神漬。
カレーよりも先に福神漬を口に入れてから本題に入ることにする。
「あのさぁ、なんで昨日……」
「ごめん。目、離してたら出られたみたいで」
即答だった。
決められた言葉を喋っているような、軽い言葉。
「いや、そうじゃないの。私、カジくんと美晴がどういう関係なのか知りたいの」
そう言うと彼は食べるのをやめて普段小さい目を大きくあけてこっちを見てきた。
「なんか、友達関係じゃないなぁ、みたいな?」
福神漬をもう一つ。
彼の視線はもう私に向けられていない。
言い訳を考えるかのように上の方を見ている。
「言えないなら別にいいんだ」
言い訳なら聞かない方がましだ。
カレーのルーだけをすくいあげ、口に運ぶ。
「でも、教えて欲しい。私、君の彼女だし、それぐらい知る権利、あるよね?」
困った顔だ。
なんなんだろう。
そんなにも言いづらい仲なのだろうか。
よくわからない。
「ただの、バンド仲間だよ。アイツは」
重たい口を開いたら、そんな言葉が出てきた。
今、彼の言う事全部嘘に聞こえるかも知れない。
それぐらい、疑心暗鬼だ。
「そう。そっか……」
そのまま、沈黙の食事に突入した。
気まずい雰囲気が福神漬さえ不味く変えていた。
午後の授業に集中することができず、ずっと2人の関係ばかりを気にしている。
結局落ち着く場所に到達しないので溜め息ばかりを重ねていた。
授業も全部終わったので、気分転換兼ねてCDショップに向かった。
最近本ばかりで全然来ていなかったから欲しかったアーティストのCDが出ていて持ち合わせを確認する。
薄いピンクの長財布をカバンから出して中を見てみたが、千円札さえ入っていなかった。
こんなときにも溜め息が出た。
美晴に頼んでバイトでも紹介してもらおう。
その時、またダンドリオンのライブの係員がいいなと思ってしまった。