107、
心配したところで、美晴たちが今どこにいるかもわからない。
わかった所で、行ってなにができるのだろうか。
そもそも、何をすべきなのだろうか。
悪と正義が存在する特撮映画のようなものなら、悪を倒せばいい。
敵と味方が存在するアニメの様なものならば、味方を助ければいい。
そんな境、存在しているのか?
私からしたら、美晴もカジくんも仲がいい。
仲がいいのに、なんなんだろう。
電話越しの威圧感。
思い出すだけで背筋が凍る。
私はとりあえず、あそこに向かう。
誰でもいいから、この事を相談したい。
カラコンと相変わらず軽い音を出す扉を勢い良く開ける。
そこには星空君と土門さんがいた。
「ん? どうしたの?」
走ってきたため、息を整えるので必死だった。
でも、私は口を開いた。
「あの、美晴、が……」
「ん? 美晴がどうしたって?」
なにかされてるのかな?
なんて聞けばいいだろう?
「どうしたの?」
2人のキョトンとした目は、明らかになにか嫌なことでもあったのを聞くような目ではなかった。
「あの……そのぉ……」
やっと頭に閃いた言葉。
「美晴とカジくんの関係って、なんなんですか?」
それを聞いて2人はぽかんとする。
いきなり過ぎたのだろうか。
「あの、なんか、2人仲良く見えるんですけどなにか変な気がして」
「わっかんねぇなぁ」
「うん、僕も。仲いいなってくらいしか知らない」
そう答えた2人が嘘をついている気がしない。
2人も知らないこと。
もしかして、誰も知らないんじゃないんだろうか。
「あの2人、中学からの友達だって言ってたわよ」
私は振り返る。
テラコさんだった。
「中に入りましょ。私のど渇いたし」
「はい」
私は店内に入ると、あとからテラコさんも入り扉を閉めた。
相変わらずいつもの場所に迷いなく座る。
「土門、コーヒー」
「甘目か?」
「うん。そうして」
疲れているのか、溜め息を吐いた。
「私も詳しいことは知らないわ。知ってるのは中学からのバンド仲間だってことぐらい。他に知っていることは、美晴がダンドリオンに曲の提供をしていること。私たちが今までやってこれたのはそのおかげってことくらいかしら」
曲の提供は知っていた。
だけど、それで生計を立ててたなんて知らなかった。
それと、どこか知らないけど、偉い人からお金を貰ってたこともあるし、どっちが本当の資源になっていたのかわからない。
「まぁ、聞いても教えてくれないから、詮索しないで欲しいのかもね」
「そうですね」
私は一言そう言って俯いた。
未だに癒えない心配と、腑に落ない感じ。
「へぇ、そうだったんだ」
不意に星空君がそう言った。
「あいつ……そんなことしてたんだ」
何故か目が潤んでいた。
理由はわからない。
今までの無礼でも詫びているのだろうか。
「時雨ちゃん、気を付けてね」
ーーーー急になに?
星空君の視線が私に向いたとき、また背筋が凍るような感覚が私を襲う。
なにか知ってる?
ただ、私を心配しただけ?
どんどん混乱していく。
ホントに、誰が何を知っているのか、わからない。