106、
翌日も学校だったので、会えると思ってお昼は食堂に向かった。
今日、午後の授業は無いけど、美晴が昼を挟んで授業なので来ると思った。
ついでに、お腹も空いたので醤油ラーメンを食べながら待つことにした。
新入生の多くは入学した直後にみんな憧れていた学食に来たり、友達とか作りにこの場に来たりする。
なので容量が悪いことこの上ない。
おばさんの前に行く前に決めていなかったり、お金を予め用意していなかったりととにかく時間がかかった。
ラーメンを持って、ほぼいつもの場所に席を取ると、美晴がいないか周りを見回した。
……いないなぁ。
いつもなら私より早くこのあたりにいるしなぁ。
避けられてる?
まさか、そんなことしないよねぇ。
だって美晴だもん。
そんなこと考えていたら腹の虫が鳴きはじめたので先に食べることにした。
ラーメン自体はいつもと何ら変わりなく美味しい。
この忙しい時期でも安定の味だなと思った。
伸びきる前に食べないと、と思うと箸のスピードが上がり、とうとう食べきってしまった時には美晴の姿はない。
休みかなぁ?
そう思うが、メールさえ入っていない。
なんか虚しいな。
ホントに嫌われた?
まさか。
そんなねぇ。
私は立ち上がり返却の所にトレーごと置いて食器を片付けた。
だいぶ心配になり、連絡を取ろうと外に出て電話をしてみる。
これで、なんか事件に合ってたら嫌だし。
そもそも、嫌われただなんて思いたくなかった。
一回目は出なかった。
直ぐに留守番電話サービスになったのでピーっとなる前に切った。
もう一度コールしてみる。
すると、次は出た。
『はいもしもし、黄金沢時雨ちゃん。オレ、ダンドリオンのボーカル、カジです』
間違えた?
そんな訳ない。
そもそも私はカジくんの電話番号なんて知らない。
背筋が凍るような感じ。
嫌な予感が私を襲う。
『ごめんね、愛しのヨシハルじゃなくて。まぁ、オレなんだから嬉しいよな?』
いやぁ、まぁ、嬉しいですよね普通に。
『あはは、にしても、もしかして2人ーーーー付き合ってんの?』
こんな感覚始めてだ。
蛇に睨まれた蛙。
そんな感じに私は返答ができなかった。
なんというか、……恐怖を感じる。
『おい!! なにしてんだよ!!』
その怒鳴り声で私は我に帰った。
美晴の声が遠くで聞こえた。
『あ、バレちった。じゃぁね、黄金沢時雨ちゃん。また会おうね』
ぷつん。
ぷー。
ぷー。
ぷー。
切られてしまった。
虚しくなり続けるそれを私は止めた。
なんだろうこの感じ。
ずっと気にしていたことが、今になって急にわからなくなった。
そもそも、なんで美晴はカジくんと友達なんだろうか?
友達?
こんな表現もなにか違う気がする。
そもそもあの2人の関係ってなんなんだろう……。
そう思うとともに私は携帯を握り締めた。
美晴が心配になったのだ。