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一枚の童話集  作者: 端役
5/13

あかり売り





 小さな子供は明かりを売り歩いていました。

 その売り物はきらきらと輝いて、お日様の忘れ物のように明るいものです。

 背中から伸びる棒の先にランタンをつけて、それを揺らしながら歩いていました。


 細い道を歩いていると、悪魔がおりてきて子供に言いました。


「やあやあオマエ、種火を人間にまいてどういうつもりだ? 焼け野原にするなら手伝わせろよ」


 明かり売りは首を横に振ると、悪魔の横を通り過ぎました。


「おい返事くらいしろよ、明かり売りのくせに愛想ってもんがないぜ」




 狭い道を歩いていると、今度は天使がおりてきて子供に言いました。


「ああ幼い子よ、人々に光を与えてまわるとは素晴らしいです。お手伝いしましょう」


 明かり売りは首を横に振り、天使の横を通り過ぎました。


「返事すらないとは悲しいものです……」




 暗い道を歩いていると、道に明かりが一つありました。

 それは若い墓守の持っているランタンで、薄暗いランタの中から弱弱しい火がちらちらとのぞいていました。


「こんばんは明かり売り。私のランタンに明かりをわけてもらえないかい」


 明かり売りはランタンに火を分けましたが、不思議なことにランタンはまた薄暗く戻ってしまいました。


「ああやはり。すまない、仕方ないことだったんだ」


 首をかしげる明かり売りに、若い墓守は続けます。


「墓守のランタンは命を燃やして明るくなるんだ。私は小さな時から命を燃やしすぎたんだよ」


 明かり売りは自分と墓守のランタンを手に取ると、墓守のランタンに自分のランタンの中身を全部流し込んでしまいました。


 墓守のランタンはキラキラと明るくなり、まわりの薄暗さは吹き飛びます。


「ああ、なんてことだ。ありがとう」


 反対に明かり売りのランタンは真っ暗になってしまい、明かり売りはそれを見つめてじっと俯いていました。

 墓守は、小さな子供の手をとると自分のランタンを掲げて暗い道を歩きました。



 墓守の家まで戻ると、墓守は子供に紙と鉛筆を差し出しました。



「え? 誰も君が喋れないことに気づかなかったのかい?」








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