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黒き英雄  作者: 玄野 洸
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15話


「な、なんですか!? これ!?」


 ユーリが固まってる三人を代表して声を上げた。


「いや、俺としても少しわからないところがあるんだ。ちょっと待ってくれ」


「え? あ、はい」


 不意を突かれたようで、素直に口を閉じるユーリ。


 俺はその隙に頭の中で冒険者のサポート機能に、変化しているスキルと増えているスキルについて検索を掛けてみる。すると、こう出てきた。


 魔剣技【速連撃型】…魔剣を扱うために最適なスキル。速さと手数を誇る型。剣技【速撃型】又は【連撃型】から派生する。

 

 魔剣技上昇…魔剣を使ったスキルの威力が上昇する。


 加速上昇…瞬間加速を使用するときの加速時間、加速倍率が上昇する。この加速時間と加速倍率はLvに依存する。


 とのことだった。

 余りの性能に驚いていた時、一つ気になったことがあったので、魔剣技【速連撃型】の項目に触れて、ホロウィンドウを出してみる。

 すると、出てきたスキル欄にはこれまでの【速撃型】のスキルに加えて、最上位剣技 ……は一つも無いものの、【連撃型】の上位剣技までが習得されていた。


 正直、なんのチートだこれ…… と思った。

 〈フルガイア・オンライン〉には“魔剣技”何てスキルも“速連撃型”何てスキルも無かった。そもそも魔剣なんて存在していなかったし、型については二つが合わさったものなんて見たことも聞いたことも無い(型の重複はあるようだが)。


「あのー、そろそろ良いですか?」


 そこで痺れを切らしたユーリが俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。

 さすがにあんなに時間を開けると少しは冷静になるらしい。これと言って興奮した様子はない。


「ああ、何でも聞いてくれ。俺に答えられるものなら答える」


「それじゃあまず、何でSPが110もあるんですか?」


「ああ、それか。それなら最初からだ」


「最初から!?」


「最初からってどういうことですの!?」


「どういう事も何も、最初から100はあったんだ。それ以外は何もわからん」


 ここで、「本当は500あった」何て迂闊に口を滑らそうものなら、もっと凄い質問攻めになっていたことだろう。なんせ、100あるだけでこれなのだから。


「それでこのデタラメなステータスは何なんだ?」


「そうですよ。なんで僕たちよりLvが10近く下なのに、こんなにステータスがあるんですか? 敏捷に至っては200を超えてますし……」


「これはだな、Lvが上がるごとに凄い速さでステータスが伸びていったんだ。正直俺もビビった。 ……そういえば200ってどの位なんだ?」


「どの位って……、少なくとも中級の冒険者ではありえない数字ですね。上級の熟練辺り位でしょうか」


「でも、やっぱデタラメだぜ。他のステータスも、魔法関係を除いては異常だ。中級の冒険者には確実に無理だ」


「そうなのか……」


 この話を聞く限りは、俺のステータスは軽々しく見せない方がいいのかもしれない。ここでパーティーに参加したのも迂闊だったかもな……


「他にはないよな?」


「ま、まあ他のところも凄いですけど、知ってはいるものもありますし……」


「そうですわね」


「そうですね」


「そうだな」


「おしっ、じゃあこの話はこれで終わりだ。俺は早く宿に行って休みたいから……ユーリ、案内よろしく」


「え? あ、そうでした。では、いきましょうか」


 意外とすぐ引いてくれたので、チャンス! と言わんばかりに俺は早口でユーリに宿屋への案内を頼んだ。


「よし。フィレスー、行くぞー」


「はい、マスター」


「あ、そうですわ! 明日はタンタラの森の入り口に九時集合ですわよ! 覚えておいてくださいましてね!」 


 アイナのその言葉を背中に受けながら軽く返事をし、ユーリの案内の元フィレスとともに決闘場を後にした。






「ほー、ここがユーリの家がやってる宿屋か。なかなか綺麗でよさそうな所だな」


「中はもっといい所ですよ?」


 俺は今ユーリの家がやってる宿屋の前に来ている。

 外見は、白を基調としたつくりの四階建てだ。『宿』と言うより『ホテル』といった印象の方が少し強いかもしれない。だが、その中にも家庭的な感じのする、不思議な所だった。

 俺に宿の事を褒められたのが嬉しいのか、ユーリはその可憐な顔に笑みを浮かべながら上機嫌で中へと俺たちを案内してくれた。





「お母さん、ただいま」


「あら、ユーリお帰りなさい。あれ? あなたが男の人連れてくるなんて珍しいじゃない。もしかしてその男の人…………彼氏!?」


 その言葉を聞いた宿屋の中にある食堂に座っていた男たちが一斉に驚愕の声を上げた。


「な、なに!? ユーリちゃんに彼氏だと!?」

「あの野郎ぅ……俺たちのアイドルに手を出しやがったのか!?」

「嘘だろぉ~嘘だと言ってくれぇ~」


 その声を聞いてか聞かずか、ユーリは否定の声を上げた。


「ち、違うよお母さん! この人はお客さん!」


「あら、そうなの。つまらないわねぇ……」


 すると今度は食堂の方からこんな声が聞こえてきた。


「それもそうか、あのアインスやラルゴでも無理なんだからな」

「やっぱり俺たちのアイドルはなびかない!!」

「よかったぁ~よかったよぉ~」


 あの様子から察するにユーリはアイドル的な存在らしい。ユーリ目当てでこの宿に泊まっている男も多そうだ。


「『クライノ亭』にようこそ。私はこの宿の女将をやっているサラです。覚えておいてくださいね」


「俺は冒険者のクロキ、こっちはフィレスです」


 ユーリと同じ艶やかな黒髪を結っている色っぽい姿のサラさんに、軽く自己紹介する。

 サラさんは男の目を惹く、メリハリのはっきりとした体つきをしている。ユーリはきっとこれを受け継いだのだろう。




 

 そのあと、サラさんに一ヶ月分のお代(600Gill)を払って、ユーリに部屋まで案内してもらった。

 今は部屋のベットに寝転がっている。なかなか綺麗かつ広い部屋だった。


「ああー、疲れた……。なんか今日のだけで色々ありすぎたな……」


「大丈夫ですか、マスター?」


「いいや、もう駄目だ。俺は寝る。絶対に寝る。おやすみ」


「ふふっ。そうでしたか、おやすみなさい。マスター」


 楽しそうなフィレスの声を聞きながら俺は、襲ってくる眠気に逆らわずそのまま身を委ね、意識を闇に沈めた。






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