14話
「ああ、なんだってこんな事に……」
というわけで決闘を終え、再び控え室に戻ってきた俺。
これから起こるであろう非常に面倒くさい事態に頭を抱えている。
「大丈夫ですよマスター。どんなことが起ころうと、私はマスターの傍にいて、マスターのことを支え続けますから」
その声を聞き、顔を上げると、ニッコリと聖母のような頬笑みを浮かべるフィレスが、俺の横にぴったりとくっついて座っていた。
「うおっ!?」
思わず少し避けてしまう俺。
[彼女いない歴=年齢]のまったくもって残念な経歴を持つ俺は、こういった女の子との触れ合いに慣れてないため、反射的にこうなるらしい。前触れとかがあれば全然問題ないのだが、いきなりだとどうもこうなってしまう。(ユーリの時は駆け寄って来るのが見えていたので、何とかなった)
ああ、我ながらなんて情けない………
「あっ……逃げなくても良いじゃないですか……」
「いや、逃げたわけじゃなくてだな………」
むー、と納得いかなそうにむくれた顔をしているフィレス。
正直その顔は少し……いや、相当可愛かった。
「でも、『傍にいる』って言ってくれてありがとう。すごく嬉しい」
こうやって誰か一人でも自分の傍にいてくれるのは、凄く幸せなことだと思う。
なぜなら、自分は独りじゃないと感じることが出来るから。 ………だから俺は、俺の傍にいてくれる人は出来るだけ自分の力で護りたいと思う。何の因果か知らないが、この世界ではチート級の力を持っていることだからな。
「え? あ、いいえっ、それくらい契約を交わした魔剣には当然のことですからっ」
俺の言葉を聞いたフィレスは、早口でそう言った。
顔を真っ赤にしているから、恥ずかしかったのかも知れない。そんな姿を見ていると、なぜか自然と口元に笑みが浮かんだ。
そこで控え室のドアからコンコン、とノックの音が聞こえてくる。その音に「どうぞー」と返事をすると、キィ…と微かな音を立てて、ドアが開いた。
「決闘、お疲れさまでした」
それが控え室に入ってきたユーリの第一声。
「おう、すげぇ疲れたよ……」
「そうなんですか? 決闘中も、決闘が終わった後も疲れているようには見えませんでしたが………」
「いや、身体的には問題ないけど…… 精神的に、さ」
「精神的に……? あ、そういえばフィレスさんって魔剣だったんですね! クロキさんがメイド連れているのに貴族じゃないって言っていた理由がやっとわかりましたよ!」
「ま、そういうこと」
「へぇ~、すごいですねぇ~」
今更、隠すに隠せないので素直に肯定。
どこで手に入れたかだとか、どうやって手に入れたのだとか、根掘り葉掘り聞かれるものかと思ったが、ユーリは全くそういった事を聞いてこないらしい。助かる。
「そういえばもう一人……アイナ、だっけか? あの娘は?」
「アイナは、アインスとラルゴの方に行ってます。 あっ、そうだ! アイナにクロキさんとフィレスさんも呼んできてほしい頼まれていたんだった!」
? どうして今更俺らのことを呼ぶんだ?
………もしやまた厄介事か? 違うといいけど………
「そういうわけでちょっと付いて来てくれませんか?」
「おう、わかった。 フィレス、いくぞー」
「はい、マスター」
そのまま俺たちは控え室を後にし、ユーリの案内のもと、アイナ達のいる控え室に向かって行った。
「は、はぁ? パーティーに入ってくれ?」
「そうですわ」
何とびくっり、アイナが俺たちを呼んだ理由はパーティーに俺らを入れる為らしい。でも、なぜだ?
そのまま疑問を口にすると、
「もちろん、貴方の戦闘の実力を知ったからですわ。あの戦闘力がわたくし達のパーティーに入れば、魔物との戦闘がとても安定した物になりますし。それに………、貴方が入れば喜ぶ人がいますしね」
そのでアイナが横眼でチラリ、とユーリを見る。
「…………ぁぅ」
ユーリは顔を赤くして俯いてしまった。
というか、何故俺がパーティーに入るとユーリが喜ぶんだ?
「というかだな、俺のアイツらはついさっきまで決闘していたような仲なんだぞ? それがいきなりパーティーメンバーって無理があるだろ。連携だってうまくいきそうにないぞ?」
そう言って俺はアインスとラルゴの方を指さす。
「兄様もラルゴも了承してくれましたよ?」
「アイナの頼みですし、……何よりユーリの為ですから……」
「そうだ、ユーリの為……だから、な……」
「うそだろ!?」
あれだけに俺のこと睨んでいたくせに、パーティーメンバーになるのを了承するとは。アイナは一体何を吹き込んだんだ。いや、俺はアイナのことを良く知っているわけじゃないが……
「それで? パーティーに入ってくださいますか?」
「うーん………」
パーティーの誘いはそれ程に厄介事なわけじゃない。むしろ良いこともある。魔法による支援とかも受けられるだろうし、確かに戦闘が楽になるだろう。(別にこれまでやってきた戦闘が苦だったわけじゃないが)
経験値は分担されるため、少し減ると思うが(ゲームと同じ仕様なら)その分、効率が上回るはず。
―――――――何より、アインスとラルゴの『お前、とっととパーティー入れよこの野郎』みたいな視線が痛い。いや、こんな言葉づかいじゃないと思うけど。
「わかった。俺もそのパーティーに入る」
俺のその言葉にアイナは当然だろう、といった感じ。ユーリはどこか安堵しているように見える。そして、やっとアインスとラルゴの睨みが収まった。
「ただし」
「「「へ?」」」
俺が続けた言葉に全員が聞き返すように声を出す。
「お試し、って感じだ。あくまで体験として入る。たぶんいつかは抜けることになる」
「そ、それでもいいですっ! お願いします!」
「それなら、よろしく」
俺の返事に真っ先返事をしたユーリは、どこか嬉しそうにはにかむ。今度はアイナが、改めて自己紹介でもするように口を開いた。
「ようこそ、わたくし達のパーティー〈イーズ・ブリーズ〉ヘ。歓迎しますわ」
「ん? パーティーに名前なんてあるのか?」
「? ギルドに名前の提出を義務づけられているでわありませんか」
「そうなのか」
〈フルガイア・オンライン〉には一々、パーティーに名前なんてつけなかったが……… この世界オリジナルか? ま、いいか。なんでも。
「それでは、改めて自己紹介も兼ねて、ステータスカードを見せあいましょうか」
そういうと皆がステータスカードを取り出し、こちらに差し出してきた。それを確認すると………
〈ユーリ・クライノ〉
15歳 Lv41
体力:23
筋力:23
魔力:128
精神:103
敏捷:41
器用さ:41
運:41
SP残量〈0〉
称号:ラナバスタ王都学園卒業生
スキル:魔技【支援型】【光術型】、支援技上昇、回復技上昇、詠唱短縮
職業:治療術師
装備:神聖なローブ、加護を受けた杖
58680Gill
〈アインス・ローリエ・シェルキナ〉
15歳 Lv42
体力:154
筋力:126
魔力:22
精神:22
敏捷:30
器用さ:28
運:28
SP残量〈0〉
称号:ラナバスタ王都学園卒業生
スキル:剣技【重撃型】、盾技【重撃型】、盾技上昇、守護範囲増加
職業:騎士
装備:鋼鉄のブレスプレート・一式、鋼鉄の剣、鋼鉄の盾
63280Gill
〈アイナ・ローレル・シェルキナ〉
15歳 Lv42
体力:21
筋力:17
魔力:154
精神:109
敏捷:32
器用さ:36
運:41
SP残量〈0〉
称号:ラナバスタ王都学園卒業生
スキル:魔技【氷術型】【雷術型】【炎術型】、魔技上昇、氷魔術上昇、詠唱短縮
職業:魔術師
装備:魔なるローブ、祝福を受けた杖
57210Gill
〈ラルゴ・バサンダ〉
15歳 Lv41
体力:64
筋力:64
魔力:20
精神:20
敏捷:124
器用さ:76
運:32
SP残量〈0〉
称号:ラナバスタ王都学園卒業生
スキル:拳技【連撃型】、脚技【連撃型】、拳技上昇、脚技上昇
職業:拳闘士
装備:灰狼の革鎧、灰狼の鉄爪
66930Gill
「へぇ~、凄いな……。じゃ次は俺のを」
そう言って俺は皆にステータスカードを渡す。
〈クロキ・シラカワ〉
17歳 Lv32
体力:107
筋力:107
魔力:41
精神:41
敏捷:249
器用さ:81
運:81
SP残量〈110〉
称号:魔剣との契約者
スキル:魔剣技【速連撃型】、魔剣技上昇、瞬間加速、加速上昇
職業:魔剣士
装備:黒色のレザーコート
507800Gill
「ええ!?」
「なんですの!? これ!!」
「なっ………!」
「はぁ!?」
「あれ?」
ちなみに最後の素っ頓狂な声は俺。
どうでしたでしょうか?
やっと念願のユーリ達のステータスが出せました。
ホント自分の文才のなさに呆れます(苦笑)
余談ですがユーリ達のステータスは、
他の一般的な冒険者たちのステータスに比べると、
微妙に偏りがちになっています。
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