13話
そんなわけで俺は今フィレスと一緒に決闘場の控え室にいる。
本当は一人で戦うはずだったのだが、「フィレスも一緒に戦う」的なこと言ったら決闘場の係りの人が、「じゃあ二対二で良いですね、人数的に」とか言ったのでこの状況だ。いや、そういう意味じゃないんだけど。というか、二対二だと決闘の意味ないんじゃ………?
要は、この世界に来て初めての対人戦は実質、二対一っていう不利な状況から始まる。
なんかもう帰りたくなってきた…………。そういえばあのアホな幼馴染はちゃんとやっているのだろうか? またなんかやらかして無ければいいのだけれど……… 心配だ。
そんなこと考えてると係りの人が「時間です」とのことなので、控え室を出ていくと………
ワアアァァァァ!!!
大きな歓声が耳に入る。辺りを見回すと、人、人、人。
………しくじった。控え室で異様に待たされたのはこれが原因か、これなら前もってフィレスを魔剣の状態にしておくべきだった。絶対に余計な注目が集まる。
そこで俺の反対側の控室から出てきたアインスとラルゴに向けて問いかける。
「………なあ、なんでこんな人が集まってるんだ? というか、いつの間に集めたんだ?」
「決闘なんてめったにありませんからね、皆面白がって見に来てるんですよ。集めるのはついさっき、町中に放送していたじゃないですか」
「………マジか……」
町中に放送なんてしたのか? 考え事してから耳に入ってなかったとか? 聞いてないぜ、おい……
出来れば変な注目は集めたくないんだけどなあ………
「決闘の前に一つ、あなたに聞きたいことがあるんですがいいですか?」
「なんだ?」
「ずばり、あなたのLvは?」
「お、それは俺も気になってたぜ」
俺のLvか、Lvは確か………
「確かLv27………だったかな?」
「それなら僕より15も下なんですね、これなら十分勝てそうです」
「俺もいけそうだな」
「むっ……」
正直俺は大人げなく、あいつらの言葉にカチンと来た。
「それならとっとと始めよう」
「武器は持たなくていいのですか?」
「ここにいるからいい」
その俺の言葉に「?」といった感じのアインスとラルゴ。そのまま疑問顔でいやがれ。
「とにかく早く始めよう。俺は早く帰って寝たくなってきた」
「………おれ達をバカにしてるのか……?」
「いや、そんなつもりはないけど?」
そこで係りの人のアナウンスが俺達の会話を打ち切った。
『では、決闘のルールを確認します。飛び道具や暗器等は無し。相手が気絶するか、降参したら決闘終了です。結界が貼ってあるので、刃が当たっても切れることはありませんが、骨折等はするのでご了承ください』
凄いな。刃が当たっても切れないって、便利な結界があったもんだ。
『それでは……………始めっ!』
「フィレス」
「はい」
俺は開始の掛け声とともにフィレスの肩を掴み、呼びかける。
その呼びかけにフィレスが答えた時にはもう、俺の手に白銀の魔剣が握られていた。
「なっ………!」
「はあ!?」
驚いた様子のアインスとラルゴ。だが、重い鎧を身につけ、盾を掲げて突っ込んでくるアインスは止まらない。
ラルゴはその場に静止している。どうやら順番で戦うらしい。
アインスは盾の下から片手剣を振り上げる。その片手剣が、蒼い魔力を纏っていることから、たぶん技。あの魔力はゲームでいうライトエフェクトで、アインスが使っているのは、纏ってる魔力の輝きからしてたぶん中位剣技だ。
アインスの片手剣はそこから横薙ぎに一撃。確かこれは剣技【重撃型】の〈クロス・ブレイク〉。
当てれば相手を、二秒近くも昏倒できる優秀な技だ。だが、それは当たらなければ意味がない。【重撃型】の剣技故に遅いその斬撃を、俺は難なく避けてみせる。
そのあとも技とただの斬撃を織り交ぜながら攻撃を仕掛けてくる。
しかし、パワーに重点を置いた攻撃であるため、どれもスピードが遅い。一撃当たればすぐ気絶してしまいそうな斬撃だが、いかんせん当たらない。
「ほらほら遅いぞ」
「くっ……」
「そろそろ終わりにしようか」
俺はその言葉が終わると同時に瞬間加速を発動。
素早くアインスの背後に回り込み、がら空きになっている右の脇腹に一撃。
ガキィンッ!
結界があったので斬れはしなかったが、アインスは横へ盛大に吹っ飛んでいった。よし、ちゃんと気絶してる。
「次はおれだぁっ!」
休む暇も与えてもらえず二戦目。
正面からラルゴの右ストレートが飛んでくる。俺はそれを魔剣の腹でいなす。
「あぶねっ」
その後も、時々オレンジ色の魔力を纏った拳などを間髪いれずに細かく放ってくる。
蹴り技まで入ってくるから、手数が多くて困る。こっちは片手剣一本だって言うのに。弾くのが大変じゃないか。
「オラッオラオラオラオラオラァ!」
キン、キキィン、キィキン、キキキィン。
しかし速いな………。これ、下手したらキングリザードマンくらい早いんじゃないか?
………いや、僅差でキングリザードマンの方が早いか?
はあ、もう弾くのも面倒くさくなってきた。早く帰って寝たい………。次で終わりにしよう。
「はッ!」
俺は掛け声を上げながら、結構な速度で突き上げられたオレンジ色の輝きを放つアッパーを魔剣で大きく弾く。
「うをっ……」
ラルゴが大きく体勢を崩す。俺はラルゴが大勢を戻す前に、魔剣を中段に構え、真正面に突き出す。そのまま鳩尾辺りに命中。「がっ……」そんなうめき声とともにラルゴも気絶した。
『決闘は終了しました。勝者、クロキ・シラカワとフィレストール!』
おい、実名出すのかよ。
ワアアァァァァ!!
その大きな歓声の中には、
「すげぇ! あの二人の攻撃を一回も受けないでのしちまったぞ!?」
「あれって魔剣だよな! 本物か!?」
「アイツどこの誰だ!? 見たことねえぞ!?」
などが聞こえてくる。あげくの果てに、
「キャー!カッコイイー!」
「抱いてー!」
やらまで聞こえてくる始末。冗談でもやめてくれ。
………ああ、思いっきりやっちまった俺がバカだった。これは絶対に明日から俺の生活が荒れる。絶対に。
こんな事になるなら、軽々しく決闘なんて受けるんじゃなかった………。
どうでしたでしょうか?
もし良かったら感想お願いします。