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温かい手を掴んで 第8話

それから人気の多い道を選ぶようにしたからかあのストーカーには追われなくなった。

恐らく。

だが───。

家に入る前にポストを確認すると一通手紙が届いていた。

私宛て───!!

家に入って部屋で手紙を開けた。

『あの男は誰?君の何?あの服はあいつから借りたんだろ。なんでそういうことするんだ。ああいうのはちゃんとしておかないと勘違いする奴がいるんだから気をつけなよ。今度あいつが何かしてきたら僕が助けてあげるからね』

体が震えて手紙を落とした。

「あ 落としちゃった 」

拾いながら手が震える。怖い。この手紙の人は私をいつもどこからか見ているってことだ。

ハッとしてカーテンを閉める。

「………っ」

携帯を開いて電話をかける。

発信先は───晃。

怖い…怖いよ…!!助けて晃───!!

『もしもし、玲奈?』

「あ…」

ハッと我に返って口を押さえる。


″今度あいつが何かしてきたら僕が助けてあげるからね″


もしかして 私を助けるって晃を傷つけるってこと!?ダメだ…!!晃を巻き込みたくない!!

『もしも─し、玲奈あ?どうしたんや何かあったん?』

「…え!?あ、あれっ晃!?うわぁもしかして私間違えてかけちゃった!?ごめん織ちゃんにかけようと思ってたんだ、ちょっと急ぎの用事だから切るね」

『え、あ、そうなんや……ほんまに何もなかってんな?』

「ないよ─!!それじゃ、ごめんね─!!また明日!!」

『うん、おやすみ─』

電話を切る。膝の上に携帯を降ろす。電話が切れた後の電子音が流れている。

頬を涙が伝わった。恐怖に体が震える。

怖い。助けて。誰か──!!


その頃、晃は──。

切れた携帯を閉じる。

「んー…」

ベッドに寝転がる。

携帯を持っている手とは逆の手に一通の手紙が握られていた。

内容は──。

『彼女に近付くな』

なんちゅう牽制の仕方や。相手の顔見て直接言う意気地はないんかい!!あっても困るけども!!

俺の理解が出来る範囲で推測すると、″彼女″っていうのは玲奈のことやろな。っていうことは玲奈があの日持っていた手紙は同じ奴からやと思ってええんやろう。

溜め息をつく。

「…よっしゃあ!!やるでぇ!!」

勢いよく起き上がる。

「…まず風呂入ってこよ」



──── 翌日 ────

今日は朝から晃が話しかけてきた。

だけど避けてしまう。どのくらいなら晃を巻き込まないでいられるかわからないからだ。

そうこうしている間に放課後になってしまった。

「城宮!!今日さ、日誌書いといて!!」

「え─!!しょうがないなぁ」

「悪い!!俺今日委員会あってさ─!!」

「いいって。行ってきなよ」

「ほんっとごめん!!じゃあ!!」

「は─い」

教室では当番の人達が掃除をしている。その中に晃もいた。なんとなく安心して書き始める。

「欠席者は、3人…っと。よしっ」

確か先生は職員室にいるはず。鞄は まあ後で取りにくればいいか。

出来れば皆と一緒に帰りたいし。

日誌を持って教室を出た。

職員室で日誌を渡してそこを出ようとすると先生に呼び止められた。

「あ、そうだ。城宮、ちょっと頼まれてくれ」

「なんですか?」

─── 生徒に配るプリントの印刷を頼まれてしまった。ウィーンとプリンターが動く音がする。

あぁもう!!皆と一緒に帰りたいのに!!早く終われ!!

ただプリンターは機械音を鳴らして紙を吐き出していた。



──── 晃 ────

「晃~帰らねえの~」

「あぁ、うん。ちょい気になることがあるんや」

玲奈のまだ置いてある鞄を横目で見て言う。

「へぇ、そうか。じゃあまた明日~」

「ん~」

「あ、晃まだ帰らないんだったらちょっとしてほしいことがあるんだけど」

「何?」

───ゴミ捨てを頼まれてしまった。ついでに中の掃除も。

『俺今日100m.の計測があるんだよ~悪い!!』

ってあかんやん!!こんなことしとる場合ちゃうねん!!なんでか今日は玲奈捕まらへんし!!

「ああークソ!!」



──── 玲奈 ────

やっと印刷が終わって教室に戻るともう誰もいなくなっていた。

「あ─やっぱり…」

仕方なく鞄を持って教室を出た。もう既に時刻は7時前 。うっすらと空が暗くなっている。

校庭に出ると生温かい風が吹いて寒いわけでもないのに身震いをしてしまった。

まるで、悪いことが起こる前兆のように───。



──── 晃 ────

あれからおよそ20分後に晃は教室に走って帰ってきた。

肩で息をしてゴミ箱を床に置く。

玲奈の机にあるはずの玲奈の鞄がない。

「お…おらんし…」

音を立てて鞄を掴むと急いで教室を出た。

俺にあんな手紙を送ってきたっちゅうことはあっちはいつもこっちを見てるってことや。

もちろん帰りも。あの日───玲奈とぶつかった日、玲奈はそれに気がついて逃げとったんやろう。

あの時はまさか身近でそんなこと起こらへんやろと高をくくって放っておいたけど、あの時からもう少し警戒しておくべきやった。

もしかしたら玲奈に何かするかもしらん。可能性は十二分にある。

「クソ!!」

靴を履いて転がるようにして校門を出た。

出来ればそんなに遠くに行っとらんとええ。もしくはせめて、人通りの多い道を選んでくれれば───。

「玲奈…っ!!」



次がラスト!!

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