温かい手を掴んで 第4話
「晃!!も─早く行っちゃわないでよ!!私、自慢じゃないけど特別足速いわけじゃないんだからね!!」
「ごめんごめん!!楽しみすぎやったんよ」
「こっ購買が?」
「おぉ!!」
ニコニコと笑う。
「そ、そっか」
「うわ!!すげぇ、マジでパン売っとる!!」
はしゃいでいる晃を後ろから見る。
本当に、犬みたいね。
「大阪にはなかったの?」
「う─んあるガッコもあったみたいやけど、俺のところはなかったんや」
品物を見ながら晃が答える。
「へぇ、意外。大阪って都会のイメージあるからない学校なんてないのかと思ってた」
「そう?」
晃が手に持っていたパンの代金を置きながらこちらを振り返った。
「うん」
予鈴が鳴る。
「あ、時間ね。行こうか」
「あぁ、そやね」
教室に戻るとここぞとばかりにたくさんの人が晃の周りに集まってきた。
晃は友達を作らなきゃいけないし、それなら私と一緒にいるより一人のほうが皆話しかけやすいでしょうね。
自然に晃の傍を離れようとする。
ビンと髪を引っ張られた。
「きゃ…!!」
「どこ行くんよ、おってや」
「ちょっと!!髪は引っ張らないでよ!!痛いじゃない!!それに、私以外にも友達は必要でしょ!!」
「そうやけどさぁ!!俺、意外に人見知りなんよ?」
「どこが!!」
「あっ酷い!!」
ウルウルと泣くふりをする。
「~~~~っ」
「玲奈は俺のことが嫌いなんや…だから俺の近くにおるんが嫌なんや…」
「べっ、別に嫌いなわけじゃ…っ」
「じゃあ、おって」
ニッコリ笑って言われた。
「………っ」
クラクラする。
私が傍にいるほうがきっと友達できにくいわよ。人っていうのは誰かが傍にいると話しかけられない生き物なんだから!!
「なっ玲奈!!」
「~~~~っわかったわよ 」
「やったぁ」
「で?いつまで髪、掴んでるつもり?」
「あぁスマンスマンつい綺麗やなぁって思ってしもて」
「!!」
まったくこの人は…。彼にとってこれはただのスキンシップだとわかったからもう何も思わないけど、下手したら、″この人私のこと好きなんじゃ!?″って思う人いるかもしれないわよ?
変な人…。
手を引っ張られて膝の上に座らされた。
背中に晃の体温と息遣いを感じて───一気に顔が熱くなった。
「!?なっ何するの!!」
焦って立ち上がろうとすると晃の腕が腰に回って空いている方の腕で引き戻される。再び晃の膝に戻って更に焦った。しかも腕が離れないっ!!
ぎゃー!!う、ううう腕が腰にー!!
「どっか行かんように載っけとこ思て」
「変態っ!!離しなさいっ!!」
「い─や─や─離したら玲奈絶対どっか行くも─ん」
「行かないわよ!!」
約束するから勘弁してください。恥ずかしすぎます。降ろしてー!!
「ぷっ…」
「!?」
クスクスと周りから笑い声が聞こえる。
「え…な、何?」
「意外…っ、城宮さんって結構慌てるんだね」
「え?」
「なんかいつも冷静なイメージあったー」「私もー」
「そんなことないわよ、いつだって心の中はパニクってるんだから」
「アハハそうなんだー」
ワラワラと周りに女子が集まり出す。いや、別に仲が悪かったわけじゃないけど特別仲よかったわけじゃないから少し嬉しい。
「フフ、そうなの」
皆がジイッと見てくる。
「……?なぁに?」
「城宮さんって可愛いよねぇ。モテるのもわかるなぁ~」
「えぇ!?わ、私、モテないわよ?告白だってあんまりされない…」
「でも何回かはあるんでしょ?」
「え、えぇ」
「一回もされない子だっているんだから~モテるんだよ城宮さんは」
「そ、そうなんだ」
「そうだよ~」
ハッと気付く。
「ちょっと、晃!!私だけこの人達と話してるじゃないっあんたもなんか話しなさ…」
晃は後ろを向いて男子達と話していた。
「晃~その人達と話すなら私を離して!!意味がないでしょ~!!」
「ごめんごめん、えぇやん別に~不快感はないやろ?」
テへッと聞いてくる。
「そういう問題じゃないのよ」
パシッとでこピンする。晃はおでこを押さえて悶絶していた。その隙に立ち上がる。
「あぁ!!」
「甘いわね、でこピンされても離さない精神力をつけなさい」
「あんまり関係なくないですか?」
「何か言いまして?」
「いえ別に」
周りが爆笑している。
「え?」
「なんやなんや~おもろいことでもあったん?」
「ふっ2人って…っ仲良いね…っ」
「ぶっ…くっくっくっ」
「そうやで?だって俺玲奈がこっちでの一番最初の友達やも─ん。な~玲奈」
ふぅと溜め息をつく。
「そうね」
「あっ酷いっ玲奈溜め息ついたぁ~」
「別に酷くないでしょ!!」
そう言いつつも笑っていた。
か、関西弁難しい…!!