表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪意の矛先  作者: 山田中 太郎
第一部
2/4

第一話 今日、目覚める。


 光が瞼を貫通し、目に届くのを感じる。

 どうやら俺は寝ていたらしい。段々と意識が鮮明になっていく。

 それにしても・・・・・・ひどい夢を見た。

 だけど──殺される夢は幸運の訪れを意味すると聞いたことがある。もしかしたらいいことがあるのかもしれないな。

 なんて思いつつ俺は目を開けた。


 「お、起きたか」


  ……。どうやら俺はまだ夢を見ているようだ。


 「おやすみ」

 「ちょっ!? この状況で二度寝するのか!?」

 「夢の中で夢を見るなんて、珍しい夢だなぁ」

 「いやいや、夢じゃないぞ! 目を開けろ! おい!」

 「早く覚めろ早く覚めろ早く覚めろ……」

 「……いいかげんに」


 「しろッ!!!!」


 布団を、剥がされた。



 ◆



 「目、覚めたかい?」

 「……ああ」


 俺は両手で頭を抱える。あれは、夢じゃなかったのか・・・。

 目の前にいるのは、あの時黒い人形達に囲まれていた黒髪の女子高生だ。

 そこではたと気づく。右腕が、存在している。

 あれが夢でなかったのなら、無いはずの右腕が。


 「あれ……?」

 「あー、君の腕な、うん、治しといたぞ、うん」


 キョロキョロと流れ動く彼女の目と、それと共に揺れる長い黒髪。


 「治した?その……君が?」

 「私がというか……なんというか……」


 ごにょごにょと語尾をごまかす。なんとも要領を得ない。


 「まあ、とにかくいいじゃないか! それは後で詳しく説明する!」

 「はぁ……?」

 「それより聞きたいことがある」


 彼女がずいっと体を俺に寄せる。

 近い!顔が近い!何かいい匂いがするし!

 彼女はそんな俺の動揺を気にもとめず、険しい眼光で俺の目を射止めながら、口を開いた。


 「君、見えていたんだな?あの時、あの場所にいた奴らが」

 「奴らって……あの黒い人形みたいな奴らのことか?」

 「そうか、やっぱり見えていたのか」


 うーん、と彼女は顎に手を当てて何かを考えだした。

 しかし、ここはどこなんだ?俺は辺りを見回す。どうやら、アパートの一室のようだ。

 まず目についたのは、かわいらしいぬいぐるみやファンシーな小物の数々。ひょっとして……彼女の部屋か?

 じゃあ、俺がさっきまで寝てたベッドってまさか……


 「おい、どうした?」

 「……衝撃の事実に驚いているだけだ」


 ぐおお、まさか初の女子部屋訪問がこんな形になるなんて、しかも女子のベッドで寝てたなんてー!

 と俺が頭を抱え、のた打ち回っていると、彼女が怪訝そうな顔で話しかけてきた。

 そうだ、こんなことをしている場合じゃない、俺にだって聞きたいことがある。


 「それより俺にも聞きたいことがある。答えてくれ」

 「……まあ、答えられる範囲でなら構わないが」

 「一つ、俺を襲ったあの黒い人形共はいったい何だ?」

 「答えられない」

 「……二つ、俺の腕をどうやって治した?」

 「答えられない」

 「三つ……何になら答えられるんだ?」

 「それには答えられる。『何も答えられない』、とりあえず今は、な」

 「なんだよそりゃ……」

 「すまんな、こちらもいろいろとどうしようか考えあぐねているんだ」


 彼女はそう言って人差し指で自分の髪の毛の端をくるくると巻き取る。


 「はぁ……じゃあ、今何時だ? これにも答えられないなんて言うなよ」

 「午前七時だ。よく寝ていたな」

 「俺、半日も寝てたのかよ……とりあえず学校いかねーと……」

 「ん? 何か勘違いしているな。君が寝ていたのは半日じゃなくて36時間だ」


 ……は?なんだその冗談みたいな睡眠時間は。

 ってことは俺は入学早々学校を休んじまったってことか?

 再度頭を抱える。


 「どうした」

 「……いや、なんでもない。ただもう皆勤賞は貰えねえなと思っただけだ」

 「心配するな、学校には私が欠席の連絡をしておいた」

 「え? どうやって……」

 「母親を偽ってな。それっぽい声を出すのに苦労したよ」

 「いや、そうじゃなくて。なんで俺の学校がわかって……?」

 「私の制服を見て気がつかなかったのか?同じ西ノ岡高校の制服だろう」


 そういって彼女はひらりと体を一回転させる。

 なるほど、確かに彼女の服装は俺がこの春から通う西ノ岡高校のものだ。

 首に巻いたスカーフは一年生を表す青色。つまり、俺と同じ学年だということだ。


 「ああ、あと悪いとは思ったのだが、すこし鞄の中を拝見させてもらった。名前がわからなくては連絡もできんからな」


 そういって彼女は手に持った学生手帳を振る。おそらく俺のものだろう。


 「そういえば自己紹介がまだだったな。私は神月理沙かんづきりさだ。よろしくな、『新谷真にいたにしん』君」

 「……ご丁寧にどーも」


 彼女──神月は満足そうに頷くと、


 「君とは、長い付き合いになるかもしれないな」


 と言った。


いきあたりばったりなので口調とか不安定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ