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第2話

「いやぁ、今にも嵐が来そうだな! 『魔王軍はびこる!』って感じだ! さぁ行くぞ!」


 曇天(どんてん)の下、魔王討伐(とうばつ)の旅に出たラックたち勇者一行。

 ラックが張り切って先頭を行く後ろを、仲間たちは渋々とついていった。


 魔法使いバルドは眉間(みけん)にシワを寄せた。

(……明らかに王女に鼻の下を伸ばしておったよな)


 女戦士リシアは剣の柄を握りしめた。

(こんな情けない奴が勇者だとは……くっ、許されるなら今すぐこの剣でぶった斬ってやりたい……!)


 賢者エルマーは力なく古文書(こもんじょ)を閉じた。

(レベルも0.2だとは……今のうちに求人を出しておいた方がいいかもしれませんね……)


 ラックの軽薄な態度に早くもチームワークが崩れかけようとしていた。

 その時!


 ティロロロロロロー!


 どこからともなく敵遭遇(そうぐう)のBGMが流れ、(しげ)みから魔物が飛び出した!


「むっ!」


 ディドディドディドディド!

 戦闘中の不穏なBGMが辺りを包む!


「来るぞ!」 リシアは剣を構えた!

「攻撃魔法準備!」 バルドは杖を掲げた!

「援護します!」 エルマーは古文書に手をかざした!


「よし、任せたぞ!」


 戦闘体勢を取る仲間たち! その(かげ)に隠れるラック!

 

 魔物の爪が襲いかかる!


「くっ!」

 リシアが身を乗り出し防御した!


「ファイアストーム!」

 その(すき)にバルドが火炎魔法を繰り出す! 魔物に直撃!


 ラックたちは魔物を倒した!

 ティッティリーン!


「やったぞ!」


 ラック以外は経験値を手に入れた!

 仲間たちのレベルが上がった!

 ラックはレベルが上がらなかった!


「はっ?! なんで俺だけレベルが上がらな――」


 ――ドゴッ!


「ぐふぉっ?!」

 轟音(ごうおん)と共に吹っ飛ぶラック!

 ラックはリシアの拳を喰らった!


 デデデデ……。辺りに瀕死(ひんし)BGMが流れ出した!


「な、何するんだよリシア……!」


「経験値が入らなくて当たり前だろう! 今更ノコノコ出て来やがって、貴様それでも勇者か!!」


 ――ジャキン!

 リシアが剣の切っ先(きっさき)をラックの眼前へ向ける。


「うおっ……! し、仕方ないだろレベル0.2なんだから……!  魔王が出て来たら勇者の役割を果たす、それでいいだろ?!」


「そんな甘い考えで上手くいくわけがないだろう! 来い、今からでも私が鍛錬(たんれん)してやる!」


「鍛錬?! や、やなこった! ……どわっ?!」


 ドテッ! ラックは逃げ出そうとして転んだ!


「し、死ぬ……」

 地面に()いつくばるラック。その命は()きかけようとしている!


「くっ、どこまでも無様な……!」

「まあまあ、リシア殿」


 エルマーは二人の間に割って入ると、ラックにヒールをかけてやった。


「旅を続けるうちに勇者殿も、勇者の自覚が出てくるかもしれません。もう少し様子を見てみましょう」

「……ふん!」



 ◇



「リシア殿、今です!」

「喰らえーーーっ!」

 ズバッ!

「グオオーッ」


(……ふーっ、ようやく終わったか)


 ラックはその後も戦闘が始まると仲間の陰に隠れ続けた。

 そしてリシアはそんなラックを露骨(ろこつ)(さげす)んだのだった。


「足手まといめ……!」


(ちくしょう!)



 戦闘後、いたたまれなくなったラックは一行から離れた。


「何なんだよ、あの女戦士……! 俺だって、好きで勇者になった訳じゃないのに……!」


 (ふところ)から一枚の「板」を取り出す。

 手のひらサイズの黒い板。その滑らかな表面は、鏡のように自分を映していて、下部には丸いボタンが付いていた。


「父さんから『魔王を倒したら、とにかくこれを使って、魔王の死を確定させろ』って言われたけど……一体なんのことなんだ?」


 魔王討伐に出る際に父から渡された、勇者家に代々伝わる封印の『聖板』だというが――


 丸ボタンを押してみても、鏡面がわずかに明るくなるだけで、何も起こらなかった。


「こんなもので、どうやったら魔王を封印――」


 だがラックが鏡面で何気なく親指を滑らせた、その時。

 

 ――ブン。


 聖板が震え、縦長の黒鏡面の上部に光の文字が浮かび上がった。


 ―――――――――――

 rev. 1

 ―――――――――――


「なんだ?! この文字は……」


 聖板にははじめ、ただその文字が表示されているだけだったが、やがて触れ続けていたラックの指に反応し、新たな文字が浮かんだ。




『ここまでの世界をcommitしますか? はい/いいえ』




「世界の……コミット……?」


 ラックが『はい』を押すと、聖板がまたブン、と震えた。


『Revision 2 を commitしました』


 中央に浮かぶ文字。

 そして上部にも、文字が増えていた。


 ―――――――――――

 rev.2 : ruck――0.2

 rev.1

 ―――――――――――


「なんだこれ……?」


「……おいラック、行くぞ。ノロノロするな」


 リシアが、(あき)れたように剣を肩に乗せ、そばに立っていた。

 後ろのバルドとエルマーも、振り返り待っている。

 その時――


 ガサッ!

 茂みから巨大な一角獣が飛び出した!


 リシアが(あわ)ててラックに知らせる。

「!! ラック、後ろだ!」

「えっ?!」


 ――ドゴッ!


 だがラックが咄嗟(とっさ)に身を()けようとするも、身体はすでに吹き飛ばされていた。


「――ぐはっ!」


 背中に衝撃が走る。ラックは岩に叩きつけられた。


(あ、これほんとに死ん……)


 暗転しゆく視界――

 ラックが死を覚悟した、その時。


 ――ブン。


 ラックの手の中で、聖板が震えた。

 暗転しかけた世界に瞬く間に光が射していく。


(な、なん……だ……?)




 視界が、音が、身体が。


 消えかけた世界のすべてが急速に再構築されていく。


 やがて森が、茂みが、風音が、

 リシアが――

 

 作られた。




「……おいラック、行くぞ。ノロノロするな」

「え……?」


 リシアがさっきと同じ台詞(せりふ)を繰り返した。

 ラックも、さっきと同じ場所に立っていた。


「――はっ!」

「!! ラック、後ろだ!」


 ラックはリシアが言うより早く身を(ひるが)していた。

 襲いかかる一角獣を避け、その背に剣を振り下ろす!


「グオオーーッ!」


「なっ?!」

「むっ! ファイアストーム!」


 リシアの驚く中、バルドが倒れ込んだ一角獣に火炎魔法でトドメを刺す。

 ラックたちは一角獣を倒した。


「勇者殿、やるではありませんか!」

「まさかあれをかわしよるとは」

「……」


「はーっ、はーっ……」

(ま、まさか……!)


 エルマーとバルドが湧く中、ラックは懐から聖板を取り出した。

 その中央にはさっきとは別の文字が浮かんでいた。



『Revision 2 にrollbackしました』



(……ロールバック、『巻き戻し』……まさか、時間を……?)


(これ……時間をやり直せるのか……?)


 聖板を握りしめるラックの中で、何かが動き始めていた。

こういう話です。

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