第3話
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・なんとか・・アイクに着いたわね」
サラが荒い息整えながら言う
「サラ・・・・はぁ・・・はぁ・・・やっぱり・・・はぁ・・・置いてきた方が良かったんじゃない・・・・?」
リリがサラにそう言ってキョウイチの方を指でさした。
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・そんな事言ったって・・・・・森なんて初めて歩くのに・・・・でも俺はリリ・・「さん!」・・・さんにも責任があると思うんだけど・・・・」
今キョウイチの言葉を遮ったのはリリだ。
サラのおかげで、キョウイチが年下だとリリにバレてさん付けで呼ぶように強要させられていた。
キョウイチは、さん付けとかどっちでもいいような気がするんだが、そんなところが俺よりも年下のように見えてしまうのだと心の中で思っていたが、もちろん決して言葉には出さなかった。もし言葉に出そうものならリリの野次が飛んでくるのは、さっきから何度も経験している事なのでキョウイチは学習していた。
-----------回想-------------------
あの後、キョウイチとリリ達は遺跡の内部を再調査したが、手紙以外はキョウイチの記憶の手がかりになるような物はみつからなかった。そしてキョウイチの服はあのクローゼットに入っていた服に着替えた。
キョウイチが着るようにお父さんが残しておいてくれたのか、計ったようにキョウイチにピッタリだった。果たしてキョウイチの為に用意されていたものだったのだろうか?それともキョウイチが記憶をなくす前に着ていたものだったのだろうか?
ちなみに遺跡を再調査しても何も出なかったときに「お宝~~・・・・」と言ってリリが落ち込んでいたのをキョウイチが笑ってしまい、そこでもひと悶着あったのだが割合する。
遺跡を全て調査した後、日が暮れないうちに帰るとサラが言って2人は賛同し帰り始めた。ここで1つ問題が発生した。森にはもちろん舗装された道がなくて、けもの道を通るしかない。もちろん歩きなれた事がないキョウイチは歩く速度がリリ達とは遅れるわけで、そうなると遅いキョウイチに合わせるからリリ達の歩調も遅れるわけで、日が暮れないうちに帰りたかったサラの思惑は外れ、気がつけば周りは真っ暗だった。だがそこは、サラだった。キョウイチを攻めもせず野宿をする事をキョウイチに告げ、夜の森はモンスターが活発になるから危険だと言った。
モンスターという言葉を聞いて、驚いたキョウイチはサラに質問しようとした時にリリが大声を上げた。
「キョウ!!歩くの遅すぎ!!野宿する事になったじゃん!!!!」
「・・・・そんな事言ったって!!!森なんて歩くの初めてだから仕方ないだろう!!!」
2人は歩き続けた疲れもあったのか売り言葉に買い言葉で言い争いを始めようとしていた。その時、
「し!ちょっと2人とも黙って!!・・・・・・・・リリなんか聞こえない?」
サラが口に人さし指を当てて2人に黙るように指示をした。
それを見たリリの戌耳がピコピコと動いていて、そのあと鼻をクンクンと動かした。
犬みたいだと思ったキョウイチだったが、戌人族だった事を思い出し納得する。
「この地を蹴るような足音、それに強烈な獣の匂い・・・・もしかして・・・「グオーーーーーーーーーーーー!!!!!!」・・・・・・・・・」
リリが話している途中で動物の吠える声が響き渡った。
「はぁ~~もう!キョウのせい!!キョウが大声出すから!!!」
「どう考えてもリリのせいだろ!!てか何あれ!!なんなのあの声!!」
「2人とも言い争いは後でやって。キョウイチ君説明は後で、とりあえず死にたくなければ走るわよ。」
サラとリリが走り出したその後に続くキョウイチだが、走り慣れていない道を走るのでやはり木の根に足を躓いて転んでしまった。
「絶体絶命か~~~」
恐怖からかキョウイチの口から悠長に独り言が飛び出した。キョウイチの視線を後ろに送れば後ろから熊をもう少し大きくしたような動物がキョウイチ目掛けて四足歩行で走ってきている。
「キョウイチ君大丈夫!?」
サラがキョウイチが転んだのに築き熊みたいな怪物に向けて魔銃を構え
「!・・・・足しか引っぱらないんだから!」
リリが自分の腰の短剣を抜いてキョウイチの隣まで走って戻ってきた。
この時2人がキョウイチには救いの神様に見えたのは当たり前だろう。
「サラ!」
リリがサラに目配せを送る。サラも了解したように1つ肯き、サラの魔銃から光線のようなものが発射され熊の怪物の顔の目の前で爆発した。
「グオーーーーー!!!!」
どうやら効いているようだ、熊みたいな怪物は顔を抑えて立ち止まっている。
「キョウ早く立って!行くよ!」
リリはキョウイチの手を引いて走り出した。キョウイチが後ろを振り返ると熊みたいな化け物が増えていた。どうやらさっきの雄たけびで仲間を呼んだようだ。
「まずいわね。グリズリーがさっきの雄たけびで仲間を呼んだようよ。とりあえず走りましょう。森から出れば奴らも追ってこないわ」
サラがキョウイチとリリの後ろを走りながらそう言った。
女の子に守られている自分が、何もできない自分が情けなくてキョウイチは必死に、本当に無我夢中で走った。途中何度か追いつかれそうになったが、そのたびにサラさんの魔銃が火を拭いた。
おかげで何とか森の外まで逃げ切る事に事に成功したのだが・・・・・・
で冒頭に戻るわけで・・・・森を全力で走ったおかげで三人とも息は切れ切れだったてわけで。
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「なんですって!!キョウがグズグズするからじゃない」
キョウイチは何もできない自分が情けなくて、そんな思いを隠すためにリリに突っかかっいる。
またキョウイチとリリの間で言い争いが始まろうとしていた。
「フゥ~~・・・・・・なんとか巻いたわね。2人ともいい加減喧嘩は止めて。とりあえず遅い夜ご飯にしましょ。」
サラはすごく疲れていた。でも今は無事に逃げ切れた事を喜ぶべきだろう。
周りは真っ暗だ。あまり起きているものもいないのだろう町からはあまり光は漏れてはこなかった。
キョウイチもリリもサラもお腹が減っていた。
キョウイチ達はサラとリリが寝泊まりしている酒場兼宿屋に向かった。
「いらっしゃ・・・・・あ!リリ、サラさん!よかった。あんまり遅いから心配してたんですよ。」
「ごめんねロゼッタちゃん。予定外の事が多くて」
「ただいま~ロゼッタ。お腹すいた~ご飯ご飯」
ロゼッタが心配したように駆け寄ってくる。
キョウイチは自分と話している時とのリリの反応の違いに驚いた。
サラさんに対してだけだと思っていたのだが、嫌われるような事したのかな??
2人はキョウイチを置いて話し出した。キョウイチが2人を見ていたら、リリ達に声をかけてきたロゼッタと目があった
「リリ、後ろの黒髪の男の子は誰?見かけない顔だけど・・・・・」
「ああ・・・こいつ?こいつはキョウって言って、・・・・・実は「リリ!」・・・」
サラが声をあげてリリの言葉を遮った。
サラはキョウイチが人間でかもしれないとあまり広めたくはないようだ。
なによりキョウイチの名前はキョウではないのだが・・・
「あ~~わかった。訳ありみたいだから、もう聞かないわ。とりあえずキョウ、私はこの宿屋兼酒場の看板娘のロゼッタよ。よろしく!」
自分で看板娘と言うだけの事はあり、ロゼッタは顔が広かった。
その事をキョウイチが知ることになるのはもう少し後の事になるが・・・・・・
「ああ・・・・よろしく。俺はキョウイチって言うんだ。キョウってのはリリが勝手に読んでるだけなんだ・・・・」
2人は奥のテーブルに向かって真っすぐ進んでいく、まるでそこが指定席であるかのように迷いなく腰掛けた。キョウイチもその後を追いかけてテーブルの空いている椅子に腰かける。
「キョウイチ君・・・・・・嫌いなものわ?」
「特にないです」
「ロゼッタ。あたしいつもの!」
「はいはい。」
ロゼッタが注文を聞きメモを取っていた。キョウイチはメニューを見てみたが全て見たことない文字だった、
ズキ!・・・・・くそ!・・・・・・分かってるよ、どうせ読めるんだろ。
案の定次の瞬間にはメニューが読めるようになっていた。
・・・・・・便利な記憶喪失だな。
だがどれが旨いのかは全く分からない。
クックのから揚げとか旨そうだけど・・・・・・なんの肉?
キョウイチがそんな思考に埋没していると、
「キョウイチ君にはリリと同じものを、私は~~~~」
サラがキョウイチの分も注文をしてくれた。
「さて、キョウイチ君色々と質問があるんじゃないの?」
サラが話を促すようにキョウイチに尋ねる。
当り前だ今まで、サラは落ち着けるところに着くまではと、あえてキョウイチの疑問に対してあまり答えなかった。
「ええ、色々と聞かせてくれませんか?」
リリは注文した後からテーブルに突っ伏していて今のサラ言葉を聞いても顔を起さないところをみると興味がないのかもしれないが、リリはキョウイチが気がつかないぐらいだがしっかり聞き耳を立てていた。
キョウイチは考える。
・・・・・・・・・あの後ずっと考えていた。
なぜ人間は滅亡してしまったのか?
俺の記憶は?ここはどこ?
森で襲ってきた熊見たいな怪物は何?
世界は・・・俺の世界はいったいどうなってしまったのか?
キョウイチはまず自分の関係が深い、もっとも気になる疑問から聞く事にした。
「まず・・・・・人間・・・・・人はなぜ滅亡してしまったのですか?」
10月16日編集