第14話
キョウイチが四苦八苦してなんとか狭いギルドの扉をくぐると、そこには離れ離れになったリリとシェリーがサラと何やら話していた。キョウイチは三人に向かって手を上げようとしたが、両手を荷物によりふさがれており上げる事ができなかった。ギルドの中にはいつもより人がいて、賑わっていた。
「あ!やっと来た!!キョウ遅いって!!」
キョウイチに気がついたのか、リリがキョウイチに向かって言う
「しょうがないだろ!荷物が重いんだし!」
キョウイチは両手に抱えきれないほどの荷物に視線を移して言った。
「う!・・・」
「それに誰かさんは、人ごみ見つけた瞬間離れ離れになる事も考えずに行動するし。サラさんに会えたから良かったものを、俺があのまま町をさまよってたらどうするつもりだったのかな~」
「はいはい!反省してます。す・い・ま・せ・んでした!」
反省の色がまったく見えない態度でリリはキョウイチに謝った。
「全然反省の色が見えないのは俺だけかなシェリー?」
キョウイチはシェリーに話を振る事にする。シェリーもリリの勝手な行動で迷惑していると思ったのだ。
「キョウイチさんだけじゃないんですか?」
どうやらシェリーはもうリリに毒されたらしい。
三人で行った買い物によってシェリーはかなりキョウイチ達に打ち解けた。
「う!・・・・」
言葉が詰まるのは今度はキョウイチの方だった。
「まぁいいわ。荷物を持って来たんだから許してあげる。」
「・・・・・なぜ?・・・」
キョウイチが気付かないうちにキョウイチが悪い事にされていた。
「はいはい。せっかく落ち合えたんだから喧嘩しないの。それにリリ、あの事キョウイチ君にも話さなくちゃ」
「あ!そうだった、忘れてた。」
サラが話に入ってくる。ギルドに入った時に三人して話していた内容に関係するを今からしようとしていた。
「キョウイチ君、今私達三人で話し合ってたんだけど、キョウイチ君の記憶の手がかりは王都にあると思うのよ。だから王都に行ってみないかって私達が話してたんだけど、キョウイチ君はどう思う?」
キョウイチはしばらく考える。王都に行く事自体は賛成だった。
キョウイチの頭の中ではさっき演説していた事さっきサラと話していた内容が思い出される。
・・・・・・・・・とても悲しい・・・・・・・
・・・・・・・・・殺したから殺されて殺されたから殺してなにが残るのか・・・・
・・・・・・・・・・戦争・・・・・・・死・・・・・・
・・・・・・・・・・誰かが止めなければならないのではないのか・・・・・・
キョウイチは気付いたのだ、キョウイチの決意はサラの話を聞いた瞬間固まっていた事を。
「サラさん、リリ、シェリー、俺の方からも話があるのだけど聞いてくれ。王都に行くのは賛成です。俺も遅かれ早かれ行こうと思っていました。それと・・・・・・・・・・義勇兵として・・・・戦争に参加してみようと思っています。」
キョウイチが話をするとその場の空気が固まった。
「キョウイチ君分かっているの?・・・・・・・・・死ぬかもしれないのよ」
「そうだよ。キョウ、それにあんた・・・・・・・・・殺せるの?」
「キョウイチさん、さすがに私もそれには賛成しかねます」
三人ともキョウイチの提案には真っ向から反対する。
「死ぬかもしれないって事は分かってます。殺せるかどうか・・・・・は分からないし。けど俺が五千年の時を超えてきた理由、今戦争が起きるわけ、色々なものが俺には繋がっているように思えるんだ。それに戦争なんて!分かりあえる可能性があるのに・・・・・それなのに・・・・・・すごく悲しい!事だ。」
「でもキョウイチ君!・・・・・・・」
「キョウ!!・・・・・・・・・」
「そこまでじゃ!!」
いきなり俺たちが話している間にドラン様が現れた。
出鼻をくじかれたのかサラとリリは息すぼんでいる。ドラン様はこの町のギルドマスターである。キョウイチが人間であるという事も知っていて、何かとキョウイチ達に世話を焼いてくれたりする。
「ホッホッホ~悪いがの、話はだいたい聞かせてもらった。青いの~キョウイチよ。若い!その考えはあまりにも若いのう。じゃが・・・・・・・・リリにサラどうじゃろう?キョウイチを参加させてみては?この世界は甘い考えだけではやってはいけん、それも確かじゃ。じゃが希望まで失うと生きる意味もなくなるのではないのかと思う。実を言うとわしにも王様から償還の知らせがきていての、ギルドマスターは強制で参加せにゃならんのだ。なんならわしがキョウイチの面倒は見よう、どうじゃ?それにキョウイチが参加するのならお主達三人も参加するのじゃろう?」
ドラン様がたんたんと述べる。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
リリやサラは悩んでいるようだ。
この問題は簡単な問題ではない。生きるか死ぬかがかかっているのだ。それに冒険者を始めた頃モンスターを殺しただけで、衝撃を受けていたキョウイチが心配なのもある。そう言ってしまえば三人とも心配なのだ。だがキョウイチの記憶の手がかりを探すには王都に行かなければならないのも事実。
キョウイチの言っている事も分かるのだが、それはこの世の中で何年も生活した彼女らからすれば絵空事だった。いつもどこかで、誰かが死ぬ、それがまぎれもない真実で、死がすぐ隣にある世の中。
ドラン様がキョウイチを見て言った。
「それにもし止めたとしても、キョウイチの目は1人でも行くと言っておる。決意は固まっておる止める事はできんじゃろうしの。」
そう彼は1人でも参加するつもりだった。
「・・・・・・・・キョウイチ君、これだけは約束して危ない事はしないで。それにキョウイチ君の言っている事はすごく困難な事よ。それでもやるの?」
戦争に参加しようというのに危ないもなにもないのだがサラはこう聞かないわけにはいかなかった。
それにキョウイチがなそうとしている事はとても困難な事、いまだ誰もなしえた事がない事。
これに比べたらドラゴンを倒してこいと言われた方がまだ現実味がある。
「はい。何か動かされるものがあるんです。」
キョウイチはサラに返事を返す。
「キョウ。あたしは反対だよ。でもキョウがしたいようにやればいいと思う。」
いつもキョウイチと喧嘩しているリリだったが、キョウイチの事を一番理解していた。
キョウイチがなんとなくだがそんな事を言い出す予感はしていた。
「私はキョウイチさんにどこまでもついて行くだけです。」
リリとシェリーはキョウイチを見つめた。
「ありがとう。2人とも」
「ホッホッホ。キョウイチよ、良い仲間に巡り合えたな。」
ドラン様がフガフガ笑ってキョウイチに話しかける。
「はい。俺には過ぎた仲間達です。」
この瞬間キョウイチ、サラ、リリ、シェリーは傭兵に志願する事を決めた。
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「法王様!バルト王国から火急の知らせが来ています」
ここはルト教国。バルト王国からの知らせが早馬によりもたらされた。
「ありがとう。見せてください。」
円卓の一番奥に座った女性の手に手紙が手渡される。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこに揃った者たちはみな高位の神官や司祭と呼ばれるものだった。
全員がルト法王が口を開くのを待っていた。
「・・・・・・・・・ルシード帝国は邪信教の力を借りました。バルト王国に援軍を出します。すぐに準備を!」
法王がそう言うと全員一斉に立ち上がり、それぞれの準備に消えていった。
法王が後ろを向き、円卓の後ろにある神様をかたどった像に祈りをささげる。
「・・・・・神は残酷ね・・・・・・・ルシード・・・・・・・・バルト・・・・・・」
法王が、一筋の涙を流した事を、その像以外誰も知らなかった。
読んでくださってありがとございます。