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あの世界  作者: ろー
冒険者
14/20

第10話

俺たちが前来た時にリリと入った幻惑の森とは別の森のようににぎやかだった。

鳥たちがさえずり、花が咲き、日の光が差し込み、木が歌っているようだった。

森に入って歩き続け、その間ずっと無言の女性。

やがて森が開けはなっているところに出た。

ところどころに木の家が立ち並んでいる。どうやら村のようだ。

農作業をしている人や家畜の世話をしている人と色々いる。全ての人に共通している事はみな耳が長いということだ。

・・・・・・・・・長老に会わせるって言っていたっけ?


「ここです。」


終始無言だった女性が初めて口を開いた言葉がこれだった。

見ると目の前には周りに比べて少しだけ、立派な家がある。

どうやら長老と言われている人はここにいるらしい。


「すこしお待ちください。」


女性が家の中に入っていく。

少しして家の中から呼びに行った女性がお婆さんを引き連れて出てきた。

「よくぞ来てくれました。キョウイチ様」


そのお婆さんも俺の名前を知っていた。

「・・・・・・・・誰ですか?」

俺が尋ねる。


「私はこの村の村長と呼ばれておるものです。ドランから手紙を持って来てくれたのでしょう?」

「持ってきました。はいこれです。」

俺はドランさんから預かっていた手紙を渡した。


「はい、確かに受け取りました。では・・・・・・・・・中へどうぞ。なぜ私達があなた様の名前を知っているか聞きたいでしょう?」

「・・・・・・・・・そうですね。上がらしていただきます。」

俺が言って長老について行くように家に上がろうとする。

「ちょっとキョウ!大丈夫なの?」

リリが聞いてくる。

「大丈夫だと思う。なぜか・・・・・・また懐かしい感じがするんだ」

「どうするサラ?」

リリがサラに聞く

「一緒にいらっしゃる、お二方もどうぞ。何もない家ですが・・・・」

長老様がリリ達に声をかけていた。

「上がらしてもらいましょう。キョウイチ君の記憶の手がかりがみつかるかもしれないわ」

俺達は長老の言葉に甘えさせてもらい。家に上がった。

見た目ほど大きくなく、本当に何もない家だった。

「長老、なぜ俺の事を知っているのですか?・・・・・・それに俺はここに一度来た事がありますか?」

目の前には案内してくれた女性が入れてくれたのだろう。飲み物が入ったコップが置かれていた。


「キョウイチ様・・・・・・・・やはり記憶が・・・・・・そうですね。全てお話しましょう。キョウイチ様あなたは遠い昔この村に住んでいた事がございます。シェーンと言う名前を覚えてはいませんか?」


「シェーン?・・・・シェーン・・・・・・・シェー・・・ン・・・・う!!」

パチリ!

何かのピースがはまるような音が頭の中でしてあの頭痛のような痛みが襲ってきた。

ズキズキズキ・・・・・・・・

今回の痛みは尋常ではなかった。俺はあまりの痛みに意識を失った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


・・・・・・ここは?

・・・・・・俺の?どうやらまた記憶の場面だな。


目の前には耳の長い女性。

そして・・・・・・俺


「行かないで!キョウイチ!もういいじゃない!!私達はやれるだけの事はやったわ。」

シェーンは泣いて止めようとしていた。


「シェーン・・・・・ごめん。でももう嫌なんだ・・・・・・それにこれが俺の・・・・・・”最後の人間”の役割なんだ・・・・」


「キョウイチ!!!」


前一度見た、俺が女性を振り切って行く場面


・・・・・・そうか・・・・あのシキが開けてくれた時に見た記憶のかけらに出てきた女性。

数々の記憶がよみがえってくる。彼女がどれだけ自分にとって大切だったのか

・・・・・・・・・俺の大切な仲間だった・・・・・・


・・・・・・・シェーン・・・・・シェーン!!・・・・・・・



俺の意識は沈んでいった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺が目を覚ますと目の前にはサラさんとリリの顔


「あ!!キョウ大丈夫だった?いきなり気絶するから驚くじゃない!」

「そうね。キョウイチ君、さすがの私も少しあせちゃったわよ。」


「すまない。サラさんリリ」


「・・・・・・・なにがすまないよ。バカキョウ!」

リリはそんな言葉を残して部屋を出て言った。


「キョウイチ君ごめんなさいね。リリすごく心配してたから。」

・・・・・・・・・・そっか。リリには心配をかけたんだな。


「キョウイチ君、何か思い出したんでしょ。」

「分かるんですか?」

「ええ。表情で。」

・・・・・・・・・・・この人には本当にかなわないな。


「はい。思い出しました。サラさん、長老様を呼んでください。あとリリも」


「あたしはついで扱い!?」

見るとリリが長老様と部屋に入ってきた。

どうやら俺が起きた事を知らせに行ってくれていたらしい。


「長老様・・・・・・・・・思い出したよ。」


「無視!!」

リリが何か言っているが俺は今はリリと遊んでいる暇はないので無視することにした。

「シェーンは俺の大切な仲間だった人です。」


「思い出しましたか・・・・・はい。シェーン様は私の4代前の長老様です。そして私の母親でもあります」

「そうか・・・・・・・あいつはもう死んでるのか・・・・・あぁ、だからあんたらから懐かしい感じがしたんだな。」

「ちょっと待ってよ。このお婆ちゃんのお母さんって何年前の話よ。」

リリが横やりを入れてきた。

「リリその話は後にして。キョウイチ君が落ち着いてから話を聞きましょ。」

サラさんが言った。

「キョウイチ様。着いてきていただけますか?」

そう言って長老様は部屋を出て言った。

俺たちは長老様の後を追って家をでて村の外れにある大きな木の前に来た。


「私達森の民は死ねば森に帰り永遠に生きると言い伝えられています。この下にはシェーン様が眠っておられます。」

「そうか・・・・・・・どうりで、立派な木だな」

心地よい風が木を揺らしていた。


「キョウイチ様・・・・・・・・シェーン様から言伝を預かっております。キョウイチがこの村に来たら伝えてほしいと、・・・・・・・・・たった一言"好きだった"と」


「・・・・・・・・・・そうか」

「キョウ?泣いてるの?」

リリが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

気がつけば俺の頬には一粒の涙が流れていた。


「キョウイチ君、あなた・・・・・・・・・」

サラさんが心配そうに言ってくれた。

「分かりません。もう・・・・・・・・・今となっては・・・・・分かりません」

好きだったのかもしれない、大切な仲間だから、涙が出たのかもしれない。

その答えは俺にはもう分からなかった。


「・・・・・・・・・・・・1人にしてくれないか」


俺はシェーンの木の前で三人に言った

「わかりました」

「わかったわ」

「キョウ・・・・・・・」

リリが心配そうな顔で声をかけてこようとするが、それをサラさんが止めていた。

しばらくして、その場所には俺しかいなくなった。


不思議だった。風が木を揺らせばシェーンが"おかえりなさい"と言ってくれているような感じがした。


「不思議だよな。さっきまで俺はシェーンの事なんて忘れていたのに・・・・・・・・・・・・見ただろあの二人が俺の今の仲間だ、いい奴らだよ、俺を拾ってくれて迷惑もかけてる。なんでここにいるのかはまだ分かんないけど、これから俺は今を必死に生きるよ。だから安心して見守っていてくれ。」


サーーーー

強い風が吹いた。

・・・・・・・・・・・キョウイチありがとう・・・・・・・

シェーンの声が聞こえた気がした。

俺はもう一粒の涙をながしてその場を去ろうとした。


ガサガサ・・・・・

木陰から人が出てきた。

その人は・・・・・・・・・・ここまで案内してくれた女性だった。


「ありがとうございます」

女性が突然言った

「・・・・・・なにが?」

「シェーン様も喜んでいると思います。」

「そうかな・・・・・・・」

今まで気がつかなかったが、その女性はシェーンに似ているような感じがした。


「君は?」

「あ!すいません。私は村長の孫の、シェリーです。」

「って事は・・・・・・シェーンの・・・・・・・」

「はい。お婆様からは若き頃のシェーン様に良く似ていると言われます。」

「そうか。だから君とは一度会っているような気がしたんだな。」

「どうぞ。村長の家までご案内いたします。」


俺はシェリーについて歩き出す。

一度だけ後ろを振り返った。

「・・・行ってくるわ」

シェーンの大きな木が俺を送り出しているように感じた。

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