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あの世界  作者: ろー
冒険者
13/20

第9話

「まったく、昨日は大変だったな・・・・・」


『まったくじゃ、リリにはあまり酒は飲まさん方がよいの・・・・・』


俺の口からポロっと漏れた言葉にシキがそう返す。

俺は今朝の素振りが終わって一息ついているところだ。

小川のそばに座っている。川のせせらぎが聞こえ水のそばは涼しくて気持ちがいい。

そして俺は休憩ついでに昨日の事を思い返してみる。


俺たちは、なんとか無事にベレッタさんの依頼を済ませた。宿屋に帰って来てみると、もうすっかり夜になっていて、サラさんに心配され、ベレッタさんにはお礼を言われた。

そして大変だったのは昨日の夕ご飯だ。俺はリリにおごると約束をしていたので、もちろん今回は初報酬でおごる事になったのだが、リリが食うわ、食うわ、あろうことか酒盛りまで始めやがった。もちろん途中からロゼッタさんも混じり本当に大変だった。

ちなみに夕ご飯代と宿屋の俺のツケ代で報酬は綺麗にすっからかんだ。


「はぁ~・・・・・・今日もギルドかな?」


俺はそう言って、シキを持って立ちあがり、素振り特訓に戻る事にした。

だが素振りばかりだと飽きてくるもので、何かいい方法がないかと考えながら素振りをしていた。

・・・・・でも俺は思う、昨日よりは何かをつかんでいるような気がする、と昨日の森の中での戦闘も悪くは無駄ではなかった、とこうして俺のいつもの朝は過ぎていく。








「シャナ悪いけど・・・・・・・・仕事頂戴」


「リリさん、私に聞くのではなくて掲示板を見てください。」


「だってたくさんあって探すのめんど・・・・・じゃなかった、難しいんだよね~」


「・・・・・・・・・・・・・・今めんどうって言いませんでした?」


「全然!これぽっちも!」


「はぁ~~」


受付のシャナと話しているリリを見てサラさんが溜息とともに頭を抱えていた。

そんな光景を俺は掲示板の方で依頼を探しながら見ていた。

俺は掲示板の方に視線を戻す。

本当に色々な依頼があるな・・・・・こんなにあったら確かに、リリが探すのが面倒だという理由も分かる気がする。


「キョウあったよ~」


リリが受付から俺に大声で声をかけてきた。

俺は2人の方に向かう事にする。


「これこれ!依頼、畑を荒らすウルフを退治してくれってさ」


「でもリリさん達にはもっと難しい依頼の方が?」


シャナがリリに聞く。


「いいの、いいの。サラ今は魔銃、整備に預けてるから、あんまりだし。それにキョウの練習も兼ねてるしね~」


「リリ、あんまりって何かな?」


「!!な!なんでもないよ~忘れて忘れて~」


・・・・・・・・・・・さっきサラさんの後ろに黒い影が見えた。

サラさんは怒らせないようにしようと誓った俺だった。

今日は2人と俺とで3人で依頼を遂行する。

もうあまり心配はないが、リリの気遣いはありがたく受け取っておこう。







「ふ~~~~」


ちょうど今最後のウルフのを倒したところだ。最初の方はたくさん数がいて大変だったがリリとサラさんが協力してくれて、苦労することなく倒せた。


「キョウイチ君だいぶ慣れたようね?」


サラさんが汗もかかずに一息付いている俺の方に話しかけてきた。

今回の戦闘でサラさんの魔法というものを初めて見させてもらった。

サラさんがなにか俺には理解できない呪文を唱えて、そして手から炎や雷を出すのは圧巻だった。

この時ほど自分に魔法の才能がない事を恨んだ事はない。


「もう余裕だねキョウ~」


リリもこちらに走り寄ってくる。どうやら倒したウルフ達の牙を取っていたようだ。

リリは途中から俺が倒したウルフの牙回収に回っていて、全然俺を助けてはくれなかった。


「リリ少しは手伝えよ」


「手伝ったらキョウの訓練にならないじゃん」


リリはあっけらかんと言い放った。

そのすがすがしさに俺も思わず納得してしまった。

サラさんが隣で笑っている。


「ごめんねキョウイチ君。私に魔銃があれば・・・・・・」

「サラさんは今のままで十分手伝ってもらってます。」

「あらそう?」

「はい!リリよりはましです。」


「む!なによ!キョウ!サラの前ではいい子ちゃんになっちゃって!」

リリが怒ったように詰め寄ってくる。


「は?俺がいつそんなことをしてる?」


「今してんじゃん~バカキョウ!」

「なんだと!!・・・・バカリリ!!」

「バカとはなによ!!~~~~~」


『サラよ・・・・・お主も大変じゃのう』

「はぁ~」

そんな俺達のいつもの口げんかが始まる

となりでサラさんが頭を抱えているのもいつもの事で。

朝起きて依頼をしてその日の金を稼いで、そんな生活が1カ月ほど続いた。


1か月も過ぎれば俺は一応一人前の冒険者になっていた。

だが、リリ達の言うでかい仕事は1か月の間一度もなかった。

あの日ドラン様から依頼を受けるまでは・・・・・・・





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「これを幻惑の森近くの泉まで持っていってほしいのじゃが」


俺達が出会って1カ月ぐらいたった時

俺たちはいつもどおり、今日の稼ぎを稼ぐため依頼を受けようとギルドに来ていた。

いつもどおり受付のシャナに今日の分の依頼がないのかとリリが探してもらっている時に

ドラン様が手紙を持って声をかけてきた。


「うん!引き受けた~~」


リリが即答する。


「リリ!即答でいいのか!?それに詳しい説明もまだ聞いてないし」


「いいのいいの。なんか面白そうな匂いがプンプンするんだよね~」


俺はげんなりした。リリが面白そうとか言った日には、俺たちは毎回大変な目にあっていた。

今回もそれなのかと思うと断りたくなってくる。


「私も賛成ね。ドラン様には色々恩もあるわ、受けましょうか。」


サラさんも賛成のようだ。

もちろん俺の意見などリリが聞くはずもなく、詳しい説明もされずに受けることとなった。


「説明してもらえますか?」


俺がドランさんに尋ねる。


「説明と言われてもの~詳しい事は行けば分かるわい。」


「え!それだけですか?」


「そうじゃ。今言っても意味が分からんじゃろうしの。とりあえずこれ持って行って来い。」


ドラン様がリリに手紙を渡した。


「うん。分かった。じゃサラ、キョウ行こうか~」


「そうね。行きましょうか」


「かるっ!!」


俺のこの一カ月で鍛えられたツッコミが響き渡る。困惑する俺を置いて話はどんどん進んでいく。

俺は1人取り残されていた。少しさびしい気持ちになったが・・・・・リリとサラさんは行く気満々だし、しょうがないか。


俺の疑問など、どこかにいってしまった。

・・・・・・・さぁ今日も一日が始まる。








前一度来た事があったので幻惑の森までの道中は、リリの言う面白い事(俺の言う厄介事)にも巻き込まれずに俺たちは進んで行けた。

成長した俺にここら辺のモンスターなど目をつぶっていても勝てる。

もうグリズリーなど余裕だった。数で来られるとやばいが、はぐれ者など普通に撃退している。

体力もそうとうついた。

だがまだリリやサラさんからは合格はもらえていない・・・・・

1か月一緒に過ごして分かった事なのだが、この2人の連携には目を見張るものがある。付き合いが長いだからか、戦闘中お互いをお互いがフォローし合っているようだ。

それにこの2人は他の冒険者達にも名前がしれている。たぶん今まで難易度の高い依頼も達成してきたのだろう。



「キョウイチ君、なかなか戦えるようになったわよね」

サラさんが言った。


「最初の頃なんてただのお荷物だったし。まぁあたし達からしたらまだまだだけどね~~」

にやにやしながらリリが言った。


俺はリリのひっかかる言い方には綺麗に無視を決め込んだ。

俺達ははずんずんと森の奥に歩いて行った。




前来た場所、あのアクア草が生えている泉まで来た。

もう目の前森が「幻惑の森」だ。


「お待ちしてました。キョウイチ様。」


森の木の陰から、女性が出てきた。


「だれ!!??」


リリが一瞬で腰の短剣を抜き構える。


「驚かせてすいません。ドラン様から聞いておられませんか?」


女性が言うが俺たちはドランさんから行けば分かると言われていたので、この女性がドラン様に預かった手紙を渡す人なのか判断できなかった。


「それが聞いていないのよね・・・・ドラン様は行けば分かるって言ってました。」


サラさんが説明する。


「そうですか・・・・・・・・・それでは分かりました。着いてきてください。長老様のところまで案内します。」


そう言って女性は森の方に歩いて行く。


「待ってください。あなたは俺と一度会った事がありますか?」


「なによキョウ!こんなときにナンパ?」

リリが言った。


「・・・・・・・・・・気の所為だと思います。あなたを見たのは今日が初めてです。」

女性は振り向かずに答えた。


「じゃ、なぜ俺の名前を?」


「ドラン様に聞き及んでいただけです。」


「そうですか。では、なぜ俺がキョウイチだと分かったのですか?もしかしたら別の人かもしれなかったのに・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」

女性は答えてはくれず森の奥に歩いて行った。


「キョウいい加減にしなよ!!ちょっと綺麗な人見つけるとすぐこれなんだから!」

「いやいやいやいや・・・・・・・・・・・俺が、いつ!何時!綺麗な人見つけて声掛けた!?」

「今!」

「だから・・・・・あの人と会った事あるような気がしたんだって」


「キョウイチ君それって一目ぼれって事ではないの?」

サラさんが俺に聞いてくる。


「違いますよ!どこか・・・・・・・・・懐かしい感じがしただけです。それより早く着いていかないと見失っちゃいますよ。」


「あ!そうだ1つ言っておくわ。キョウイチ君は知らないかもしれないけど・・・・・・・あの人エルフよ。耳が長いでしょ。」

サラさんはそう言い残してリリと一緒に女性について行った。



俺はその後を追う事にした。

幻惑の森の奥へ、いったい俺たちを何が待ち受けるのか。まだ俺達は知らない。


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