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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

腐女子の幸せ

作者: ありま氷炎

 今日は朝からついていない。

 まず目覚ましが鳴らなかった。

 ううん。多分鳴ったかも。

 慌てて準備して行こうとしたら、ストッキングが破けて履き直し。

 最悪。

 いつもは朝食を食べていくのだけど、余裕がなくて家を出た。

 ぼんやりしていて、野良猫に気が付かなくて、尻尾を踏む。

 フギャーって威嚇された。

 ごめん。

 その後、電車にどうにか乗ったんだけど、隣に立っている人がめっちゃ臭い。

 服、きっと生乾きだよね。

 鼻を摘まみたいけど、それはさすがに失礼だと思って、口呼吸を試みた。


 電車から降りて、間違って人様の足を踏んでしまい、怒られた。

 ごめんなさい。

 痛かったよね。

 謝ったら許してくれてよかった。


 通勤途中、掛水をしている人にちょっとだけ水をかけられた。

 私は大人だから睨んだりしない。

 謝ってくれたし、笑顔で大丈夫と答えた。


 出社したら、いつも遅く来るはずの上司が早くきていて、遅いよって言われる。うちはタイムカード式じゃないから、多少の遅刻は目を瞑ってもらっている。

 ちなみに上司はいつも遅刻だ。

 だから、軽口を叩かれただけで済んだけど、なんか悔しい。


 ちなみに上司はめっちゃハンサム。

 俳優みたいなレベルだけど、結婚していない。

 だから、私はこっそりゲイじゃないかって疑っている。

 だって線が細し、腰とかめっちゃ小さい。

 あれ、受けはお尻が大きいだっけ?


 私はBL大好き腐女子の34歳。

 ぎりぎりアラサー。

 結婚はしない主義。母が苦労しているの見ていたから、結婚とか嫌。束縛されるのはごめんだ。

 ちなみに彼氏はいたことがある。

 もうかなり前だけど、色々束縛してきたから別れてしまった。

 風の噂によると彼はすでに結婚して一児のパパらしい。

 結婚願望強そうだったもんね。


 漫画もアニメも好きで、BLカップリングは大好物です。

 だけど、原作でガチBLよりも、2次のBLカップルが好き。

 原作では友情関係だけど、実は……みたいな設定が大好き。


 なので、細身の男性とか、細マッチョとか見ると、そういう目で見ちゃう。

 上司の相手は誰なんだろう?

 やっぱり綺麗だから、相手もそれなりなんだろうなあ。


「丹波さん。昨日の報告書いくつかミスがあったから訂正よろしく。気が付いたところは修正箇所をメールに書いてあるから」

「はい!すみません」


 ひゃ、妄想に浸りそうだった。

 っていうか仕事。

 今日はついていない日なんだから、いつもよりしっかりしなきゃ!

 上司に指摘されているところを修正し、他の箇所も確認して、再び上司に返信した。

 これで大丈夫だろう。


「丹波さん。今日のアポ2時ですよ。4時じゃないです!」

「うそ!」


 後輩の鈴木さんに指摘されて、もう一度メール確認。

 うん。間違っていた。

 わー、最悪だ。

 でもよかった。午前中じゃなくて。

 昨日のうちで書類は準備していたから、後は仕上げるだけ。

 プレゼンはいつやっても苦手なんだけど、仕方ない。

 昨日用意していたスライド、昨日の馬鹿な私、なぜか最終版を保存してなくて、いくつか足す羽目に。おかげでお昼をくいっぱぐれた。

 朝食も食べてないし、最悪。


「丹波さん。この飴、食べる?お昼抜きだったよね?」

「ありがとうございます」


 パソコンをカバンに仕舞って、行く準備をしていたら上司が飴玉をくれた。

 なんか可愛い、花柄の飴。これはミルキーだな。

 部屋を出てから、エレベーターを待っている間に飴玉を食べる。

 やっぱりミルキーで、甘い優しい味が胃に優しい。

 上司、やっぱり女性力高いんじゃ?

 受けだよね。絶対。


 今日のミーティング、2時って指定してきたのに、行ったらまだお昼から戻ってきてなかった。

 待つこと30分、やっと来たけど、謝ることもない。

 それから商談が始まったんだけど、なんていうか、横柄な態度。

 別の会社の商品の話ばっかり。

 いや、買う気ないなら、なぜうちに連絡してきた?

 私は大人だから終始笑顔で通した。


 商談は30分ほどで終わり、その辺で軽く昼食を済ませようとした。

 だけど電話がかかってきて、お客さんの事務所に行くことに。

 新しいコピー機が欲しいから、説明してほしいと。

 ずっとうちの商品を使っているお客さんなので無下にはできない。

 色々説明したけど、やっぱり今のものでいいってことになって、無駄足。

 うん。だけど、お客さんに挨拶できたからいいか。

 ポジティブに考えよう。


 そうこうしているうちに5時。

 会社より家に近かったから直帰することにした。

 朝、昼、夜の3食分だから豪華にしようとお店を探したけど、なんか疲れてしまって、結局コンビニで済ませることにした。

 美味しいものをいっぱい買って、好きなアニメ見ながら食べよう。

 御用達のコンビニに向かっていると、なんと上司がいた。

 しかもちょっと年下の男の子と一緒にいる。

 細マッチョ系で、二の腕とか結構逞しい。

 私はとっさに物影に隠れてしまった。 

 そこからちらっと覗くと二人はじゃれあいながら歩いてる。

 ああ、眼福。

 もう、リアルBL。

 ご馳走様です。


 私はまるで何かに誘われるままに、二人を追ってしまった。


 ほ、ホテル?!

 まあ、立派なホテル。

 ラブホとかじゃないんですね!

 何かの記念日なのかな?

 うわあ、いいもの見た。

 上司の相手が可愛い細マッチョの男の子でよかったあ。

 きっとやる時はがらって雰囲気変わるんだろうな。

 ああ、よかった。

 今日最後にいいもの見たわ。

 明日からまたおいしい妄想ができそう。


「丹後さん」

「へ?」


 ルンルン気分でもどろうとしたら、肩をぐいって掴まれた。


「じょ、上司!」

「なんで君はいつもそう呼ぶのかな。私は虹岡にじおかさとる。わかったかい?」

「はい。虹岡さん!」

「聡でいいよ。野乃花ちゃん」

「は?え?」

「会社じゃないんだし。君、私のことつけていただろう?」

「へ、気づいていらしゃった?ご、ごめんなさい」


 いや、なに、これ。


「何か楽しそうだったけど、何か発見したの?」

「いえ、なんでも!つ、つけていたなんて、偶然ですよ!」

「さっき、気づいてらっしゃったって言ったよね?」

「は、あれは言葉のあやで」

「……野乃花ちゃんさあ。会社で私のこと変な目で見ているよね?っていうか、誤解してる?」

「ご、誤解?なんでしょうか?」

「野乃花ちゃん、机の上にアニメのゲイカップルの下敷き置きっぱなしにしていたことあったよね?」

「は?へ?」


 なにそれ、私何かとんでもないことを。趣味は会社に持ち込んでなかったはず。


「野乃花ちゃん。そういうの好きなんだ。だから、私のこともそう見てる?もしかして今日も弟のこと誤解した?」

「お、弟さん、だったんですか!」


 なんてこったい。

 全然似てないからわからんかった。


「前からずーと、嫌な予感がしてたんだ。今日は必ず私のイメージを挽回させる」

「は?」

「さあ、呑みにいこうか。奢るよ。お酒好きでしょ?」

「は、はい」


 奢りという言葉は大好きだ。

 あと、お酒も好き。


 その日、私は非常に後悔した。

 そして明日からどうすんだ?!これ?!


 と上司もとい、虹岡さんの部屋で叫んだ。



(完)



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