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第六部 サカ神シノブの憂鬱〜ハルヒにデカいあれが生えて長門がしゃぶるみたいな。そしてみくるのあれもデカくなって国木田が〜

あ! ドロピザくん!

俺みたいなガイジより君のがウチの母親好みらしいよ!

ウチの母親の顔ほぼ俺! つまり美女だから!

俺よか大分まともな善人だから!

俺みたいに高校二週間で辞めたりみたいな親不孝な学費ドブに捨てるようなことを何かうまくいかないからみたいなゲームみたい理由で投げ出すような馬鹿なことしない人だから!

俺のことは絶対褒めないからガチで君と交換したいくらいらしいよ! いやあ悲しい!

君への愚痴もまあ嫉妬みたいなものだから!

訴えたいならご自由に♡


「ふっふっふ、幻野くんを占ってあげるよ」

「え? 占い? 何でまたそんなスピリチュアルな」

「幻野くんが好きなアニメって天久鷹央でしょ?」

「え⁉ 何でそれを⁉」

「その中で特に好きなキャラは天久鷹央でしょ!」

「えー! 凄い! 何で分かるんですか?」

「ふっふっふ、私良い子だから占いにも目覚めちゃったかも!」

「うわー、すごいなー!」


 幻野くんは素直に感心するが、まあ彼もなかなかの天然なようだ。


「おいおい、その程度で占いって」

「貴央先生も占ってあげるよ!」

「ほう、やってみろ」

「貴央先生って実はクロノトリガーも好きでしょ?」

「え? は? いや、何で」

「で、好きなキャラはクロノでしょ!」

「えー、いやいや」

「次点で魔王でしょ!」

「いや、お前どうした? 正解だよ」

「ふっふっふ、何か私最近頭良くなった気がして、前より視野が広がったっていうか」

「ほう、さすがだな」


 貴央先生は教え子の成長を素直に褒める。


「あとハーハラちゃん!」

「は? 何シノブ?」

「ハーハラちゃんも占ってあげるよ!」

「は? いや、私は無理でしょ! ほぼ絡みなかったし」

「ハーハラちゃんが好きなジブリ作品ってゲド戦記でしょ!」

「は?」

「で、主人公を恋人目線で追ってたでしょ!」

「いや、何言ってんのこの子……」


 ハーハラは顔を背け少し顔を赤らめる。正解のようだ。


 ゲド戦記観てあれ過ぎったの多分俺くらいだと思う。


 ブレイブストーリーかの二択だったんだよなあ。確か。


「いや、お前ホントどうした? 何か怖いな」

「サクマヒメちゃーん? いるー?」

「ひい!」

「サクマヒメちゃんも占ってあげるよ!」

「いや、何か怖いからやめてくれ!」

「サクマヒメちゃんが好きな主食って米でしょ?」

「何で分かるんじゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼ 怖いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」


 サクマヒメは恐怖で身を屈める。いや、彼女に関しては適当すぎる。


「あと誰かいないかなー?」

「まずい! シノブが次の標的を探している!」


 何か怖い話みたいになってきた。まあ夏の風物詩だろう。


「サツマヒメさんはどこにいったのー?」

「ああ、何か久し振りにボール蹴りたいって」

「外か。サッカーか。練習か」

「まずい! シノブが提示された情報から脳内で位置検索を掛けている!」

「まあ牛尾中グラウンドかな。よし、行ってみるか。サツマヒメさんいなくても、他に誰かいるかもしれないし、学校なら」

「まずい! 被害が大きくなる! 待てシノブ! ウチで遊ぼう! ほら、ネンインパクトあるぞ!」

「え? ああ、ネンインパクトか。キャラゲーですね」

「いや、まあキャラゲーだがなかなか面白いぞ! やってみないか?」

「いいですよ。やりましょうか」


「い、いや、シノブ強すぎるだろ……! 何で全然攻撃当たらないんだ……?」

「簡単ですよ。貴央先生がパンチしたらガードして、キックしたらガードしてるだけです」

「いや、それが難しいんだろ、普通! 何でお前ピンポイントで技が分かるんだ⁉︎」

「え? いや、何となく。いや、大体色々考えていたら、大体次に相手が取るリアクションとか察しつくってか、絞れるじゃないですか。人が咄嗟に取れる行動って実はそんなに多くないし」


 いやあ、何か怖いというより少し気持ち悪くなってきた。あとどこかで


「さあて、ネンインパクトも飽きてきたし、占いの続きやろうかなあ。さあて、まだ占っていない人は。そうだ、外だ。ここにはもういないから外だ。学校に行こうとしてたんだった。学校か」

「いや、待てシノブ! そうだ、ジュースでも飲まないか?」

「いやいや、そんな魔人ブウみたいな引き止め方しても私は止まれませんよ、オルガ」

「あれ? オルガだっけ?」

「止まれないんですよ、ビスケット」

「あれ? ビスケットだっけ?」


 シノブは貴央先生の脳内のオルフェンズを軽くゲシュタルト崩壊させてから、外へ飛び出した。


「さあて、牛尾中学校に着きましたよっと。誰かいないかな~?」


 最近シノブのキャラが特に不安定だ。そしてウラララ‼ も読み返してみたら途中から大分キャラが変わっていた。


 ヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんが出た辺りからツッコミキャラにシフトし、周りにココロワ‼ や聖頑宮さんなどの敬語で話すキャラが増えてきたから相対的に敬語をやめてしまった。


 熱いツッコミキャラになってしまった。河野盾みたいな。そして平も最初カイザーっぽいキャラだったが、途中から河野盾っぽくなっていく。やはり基本は勇者学なのだ。シノブも何か鋼野とか火野木っぽいし。


「ドロピザくんがいた!」

「ゆいまるうううううううううううううううううううううううううううううう‼」

「りょう、ワンピース、りょう」

「あとついでにゆいまるちゃんもいた! よし、まああの二人でいいか! おーい!」

「あ、副キャプテン! 何でグラウンドに?」

「いや、ドロピザくんって普通にコミュニケーション取れる人間なんだ!」

「いや、普通にコミュニケーション取れなかったら人間じゃないし、学校に通えませんって!」

「ああ、ごめんごめん」

「こう見えて僕偏差値80あるんですよ!」

「え、すご」

「ゆいまるは30ですが!」

「え、すご」


 ドロピザは馬鹿のくせになかなかの高偏差値だった。ちなみに現実の彼は慶応大を出ている。馬鹿のくせに。


「りょう、すごい」

「うわ! ゆいまるちゃんも喋った!」


 シノブは愛猫が喋ったような感覚に陥る。


「ゆいまる、しゃべる」

「凄い、凄い! 人みたい!」

「いや、人の妹を動物みたいに言わないで下さいよ!」

「お、ドロピザくんも普通にツッコめるじゃん!」

「副キャプテンはどんだけ僕達兄妹を軽んじてるんですか!」

「いやあ、ごめんごめん。私の中でのドロピザくんのイメージって、知識の幅は広いからクイズとかめっちゃ強いけど、自分でアイデアを産み出したりする能力がゴミだから、漫画家じゃなくて編集者目指してんだろうなって!」

「いや、確かにまあその通りなんですがそこまで言わなくても! 僕が偏差値80とか言うのただの虚勢だって僕の動画観れば明瞭じゃないですか! 僕だって偏差値なんてただの数字だと思ってますし! 勉強なんて良い大学行きたい奴だけやれば良いと思ってますし! 現実の僕が高三時点で偏差値40だったのに猛勉強して慶応大を現役で受かったのも、ただジャンプ編集者になりたかっただけらしいですし! 結局なれなかったらしいですけど、現実の僕! だからせめてこっちの世界では世界一のストライカー目指してんじゃないですか! 現実の僕も学生時代サッカー部で、プロサッカーとか大好きだし!」

「ああ、何かごめんねドロピザくん。お詫びに占ってあげるよ!」

「ええ? 占い? ええ、はい。じゃあお願いします」

「ドロピザくんって馬鹿でしょ?」

「えー? いやだから、僕は偏差値がやたら高いだけの馬鹿なんですって! 絶対ワンピースとか描けませんし! 多分一生考えてもあんなの思いつきませんし!」


 まあこれに関してはもう本当に地頭というしかない。勉強すれば知識は手に入るが発想が苦手な人は一生漫画や小説など書けない。そして今時知識はスマホで賄える。知識人より知恵袋だ。


「よし!」

「いや、占いってそれですか? それなら僕だって出来ますよ!」

「ええ? じゃあやってみなよ、ドロピザくん」

「シノブさんって今副キャプテンですけど」

「ん?」

「ちょっと『やっぱキャプテンにしとけば良かったかなあ』と後悔してる部分があるでしょ!」

「え? いやいや、だってキャプテンは平くんだし! 平くん以外有り得ないし! はい、ドロピザくん外れ~! 占いの才能すらなかったね、君は!」


 割と辛辣な言い方をして、シノブは踵を返す。何故か彼女の目頭が少し熱くなる。ドロピザくんは少し心配そうな感じで去っていくシノブの影を追っていた。


 と微妙にドロピザくんの人の良さみたいなのを出してあげる。動画観る限りヘドロみたいな精神性だけどね彼。


「うううううううう、だって平くん以外有り得ないもん。だってあの時本当に何も楽しくなくて、でも平くんがキャプテンなら何か安心だったんだもん。私だってちょっとキャプテンやりたい気持ちもまあ少しはあるかもしれないけど、でも副キャプテンだって十分凄いし! みんな平くんより私の方が上手いって分かってるし! 別に副キャプテンだって最強だもんね~! ううううううううう」


 何かシノブは少し悲しい気持ちになった。ドロピザ如きにそんなことを言われてしまうなんて。あいつは偏差値が高いだけのアホなのに。

 そして偏差値30の妹は完全に忘れられていたが、まあそんなことはどうでもいいだろう。さすがにあの子を占うのは多分無理なのだから。知能が低すぎて。


「何が慶応大だよ~! 私だって余裕で入れるし! 入る気全くないけど! てかドロピザくんが入れるレベルの大学で学べること多分ほぼないし! だって入ってもジャンプ編集者にすらなれないんだもん! 両親が頑張って働いたことでようやく支払われて恐らく今必死に返しているもしくは割と最近返し終えたであろう高すぎるうんびゃくマンの学費と偏差値40上げるまでの自己投資にかけた努力から削られた寿命や参考書や学習塾や通信教材などへやたら掛けたであろう費用や両親からの励ましや期待やゆいまるからの励ましや期待…はないかゆいまるちゃんはそこまで考えられるタイプじゃ…等々…ドブに捨てただけじゃん! 実際現実のドロピザも知識量は多いけど動画自体は全く面白くないし! だってあの人ユーモアのセンスが壊滅的だから! 娯楽に振り切れてないっていうかさー!」


 まあ、西のオフサイドが娯楽として極上すぎる気もする。いや、自慢ではなく、所謂娯楽性全振りという作り方を意図的にしているだけだ。


 若い頃のゾレトはベタとかパクリとか言われるのがめちゃくちゃ嫌で、頭の中で毎日毎日固定観念を一つ一つ破壊する作業を繰り返していたのだ。


 そして行き着いたのが今のこの最強のスタイル。この小説の書き方は変という次元ではない。何故なら世界中のどの小説を読んでも、ゾレトの小説の書き方に符号するものは現時点では一つもない。


 ゾレトしかこの書き方をしていないし、知る限りこの書き方を模倣するものも現時点ではまだいないためだ。ゾレトは昔ブラックブレットやアクセルワールドを好きだったが、もう下らなくて読めなくなってしまった。


 作中でブルーロックの話ばかりするのは、今のゾレトがギリギリ楽しめる娯楽がそれしかないからだ。自身の作品を除くと。


 そう、一番は西のオフサイドで、その遥か下、ギリギリ知覚できる範疇にブルーロックがあるようなイメージだ。ゾレトはドロピザに対し全く嫉妬の感情は抱いていない。完全に自分より下だと思っている。


 ゾレトは自身より頭の良い人をあまり見たことがない。これも彼の思考力が世界一だという裏付けの一つになる。ドロピザはこの前の思考力表の秀才の位置だ。天才にいるのは尾田栄一郎だと思ってくれ。


 漫画家は天才で秀才は編集者なんだ、大体。そしてクリエイターとしての能力、つまり思考を極めたらゾレトみたいに神に等しい境地に至る。シノブもこの神に近付きつつある。


 最近の彼女の変化はそういうことだ。そしてゾレトが夢に出てきた辺りから、シノブも言っていたが小説の次元が大分上がった気がしないか。


 一回に集中して書ける文字数も前は1000文字、調子が良くて2000文字くらいだったが、今は5000、10000文字くらいを没頭して書けるようになった。


 そして、前に比べてエモい展開、つまり感動回が増えたのも、キャラに憑依することが可能となったからだ。

 その結果シノブや貴央先生、サクマヒメや幻野くんなどの今まで駒として使っていたキャラに人格が宿り動き、考え方が生きた人間のように生々しくなった。


 それゆえエモい展開が発生しやすくなった、つまり順当進化したのだ。

 この文章も無理して長文にしている訳ではなく、ゾレトの脳内をある程度説明しようとしたら自然と指が進み、気付いたらここまでの文量になっていただけだ。


 これも原寛貴時代には不可能、というか難しかった。原寛貴時代には集中力があまりなかったためだ。今のゾレトのものは没頭力というべきかもしれない。 

「うわ! 地の文怖! 何か怖いから帰ろっと」


 地の文にビビったシノブは取り敢えず空久宅に戻る。


「いやあ、ドロピザの動画久し振りに観てみたら、全く面白くないなあ! 大学生の動画じゃないんだからさあ! 一応プロだろ? てか、社会人だろ? これは駄目だよ~!」

「ドロピザさんがゆいまるを隣に置いてるのって、比較で自分を賢く見せたいだけですよね!」

「ああ、名誉欲の塊みたいなつまらない男だからな! 世界遺産検定とか漢検とか、何か下らん資格Xのプロフィールに書いて! いや、大学生かよ! 何か偏見かもしれんが、高学歴な人ほど幼稚な人が多くないか? たまごっちとか好きだったり!」

「ドロピザもワンピース好きだったり、ポケモンガチ勢だったりしますからね!」

「普通賢いアピールしたい人はそんな小学生みたいな趣味を持たないし、自分から大々的に喧伝もしないもんだがな。いやだって、軽く矛盾してるじゃないか! 幼稚ってつまり馬鹿ってことだろ? いや、ワンピース考察してる人が偏差値80とか言っても、じゃあワンピース読んでる人は偏差値80くらいなんだろうな、という証明にしかならなくないか? 私は進路を新潟経営大学に決めてから勉強一切やめたから、偏差値40くらいだったし! だから80ってのがどれくらい凄いのかよく分からんし! 指標がドロピザしかない! あとめだかが90だっけ? いや、めちゃくちゃ高い部類なんだろうが、凄いことなんだろうが、結果やってるのがワンピースのネタ潰しだからな! 小説書くとかより遥かに非生産的だし、そもそもユーチューブってそんな儲からんだろ! 普通のリーマンとかの方が遥かに稼げるぞ! やっぱ普通が一番だよな!」


 貴央先生は自身の学歴にコンプレックスがあるのだろうか。いや、ゾレトと同じ大学に行きたかったのではないのか。

 まあ割とどうでもいい話だが。俺も学力なんかで他者と競う気なかったし。面白くないから燃えない。親父やドロピザみたいな才能ない奴の活路でしかないから。

 俺みたいな才能の塊が慶應だの新潟大学だの入っても勿体無いだろう。だって親父やドロピザの人生を全く羨ましいと思えない。

 むしろ代わってあげたらめっちゃ感謝されそう。あいつら馬鹿だから天才になりたいだろ。

 アイデア生み出せないから俺になれたら毎日ハッピーだろ。ガチで。

 生み出せない割に漫画やアニメ好きな人達だから。つまり価値観が違う。彼らは偏差値勝負でバカみたいに一喜一憂していれば良い。実際バカなんだからね⭐︎


「ドロピザが80、めだかが90。いや、何かおかしくないか?」

「ああ、分かります。何故ドロピザ如きの頭で奇跡的に80まで行くのに、漫画の主人公であり規格外の超天才という設定のめだかが10しかリードしていないのか、という話ですよね」

「ああ、西尾維新さんはアホだが馬鹿じゃないから、そこら辺は知らなくても肌感で分かる人なんだ! だから超天才の設定にするなら、120とか130とかに盛る! という選択肢も西尾維新さんの頭で当然あったはずなんだ! しかもドロピザは高三時点、めだかは高一時点だぞ? いや、ここら辺を踏まえるとめだかって全く頭良くないよな。てか、ドロピザ程度の馬鹿じゃね? 露出狂だし」

「うーん、まあ西尾維新さんって割と馬鹿だと思いますよ? 何か言葉の誤用が多くて読者にツッコまれたりしますし、一応本職は小説家であるにも拘らず。金城宗幸さんみたいな小説読んだことなさそうな人が漫画的文法になるのは致し方ないと思うんですよ。いやだって、小説を読む習慣がそもそもないんだから、小説的文法に成り得る道理がないですもんね」

「ああ、まあ金城宗幸も馬鹿だし、西尾維新も馬鹿だし、めだかも馬鹿だし、ドロピザも馬鹿なんだよな。馬鹿ばっかだな、きも! 申し訳ないが、我々みたいに当たり前に上質な思考ができる奴らからすると、出来ない奴って何か怠け者に見えるよな! いや、頑張ってない人って大体頑張れない人なんだがな! そもそものバイタリティが薄いから、何を努力しても大して才能が伸びない! っていう人ばっかだと思うし、私達以外の人達、つまり所謂馬鹿な人達って」

「まあ辛辣に聞こえるかもしれないですけど、私達って基本本質をそのまま述べているだけなんですよね。プラスじゃなかったらマイナスって捉える人結構いますが、私達はプラスにもマイナスにも作用しない狭間のゼロのコメントを常にしているだけなんですよね」

「ああ、そこら辺を理解できない馬鹿が非常に多いがな。まあ馬鹿だから理解できないんだろうが。やはり私達みたいな有能が世界を先導すべきだよな。ガチで出馬してみるか?」

「いいですよ。やりましょう」


 こうして、世界一ワガママな二人の国のインサイドが始まる。


 一応この二人を擁護すると、まあお互いに同レベルの口論できる相手が人生でほぼいなかったため、テンションあがりまくってしまっている訳だ。三橋と伊藤だ。コナンとジムシィだ。


「どう焼く?」

「じっくりだ。弱火でな」


 貴央先生がステーキを注文すると、貴央先生とシノブは屈強な男性達に無理矢理奥の部屋へ押し込まれてしまった。


「私が可愛いからか?」

「いや、多分私が神様だからですよ!」


 二人は出馬前に活を入れるためにステーキを食べに来ただけなのに、何かよく分からない異世界のゲートみたいなものにトリガーオンしてしまった。


「いや、さすがに私達も上の文章はちょっと言い過ぎたかもしれん!」

「あれ本音じゃないです! そういうキャラで売らないと私達普通の人なんで!」


 二人はドロピザみたいな手法で好感度を取り戻そうとする。


「何かよく分からない空間に出てしまった。ここはどこだ?」

「いや、よく見たら何か人が。うわあ、よく見たらうじゃうじゃいる。きも!」


 周囲を見たらそこそこきもい男達が入口から入ってきた二人を値踏みしている。いやあ、何かきもいなあ。


「可愛いなあ、あの二人」

「いや、可愛いからハンターになれるってもんでも」

「俺黒髪の子が好み」


 何かきもい奴らがきもい話をしている。いや、ホントにこいつら北斗の拳のモブくらいに清潔感ないからな。やたら血の気多そうだし。


「あ、あれ私の推しじゃないか!」

「え? 幻野くんもここに?」

「いや、最推しじゃない! 小推しなんだが」


 そこにいたのはツンツン頭に何か緑の少年だ。そう、ゴンだ。


「俺、ゴン! 俺と友達になってよ!」

「デフォルトだ! デフォルトのゴンだ!」

「じゃあ、俺のジャジャン拳とどっちが強いか勝負しようよ!」

「いや、会話噛み合ってなくないですか?」

「何言ってるシノブ! 逆にこっちの方がアニメっぽいじゃないか!」

「あ、あっちには私の推しが!」

「お前の推し? お前なんかに推しの概念あったのか?」

「ええ、私だってキャラとか好きになってもいいじゃないですか」


 シノブが示した方にいたのは、禿頭に無鼻の少年だ。そう、クリリンだ。


「悟空―‼」

「シノブだよ」

「悟空―‼」

「シノブっていうんだ、私」

「悟空―‼」

「何かこのクリリン嫌!」


 シノブは大好きなクリリンを拒絶してしまう。いや、クリリン何も悪いことしていないのに。ひたすら親友の名前を叫んでいただけなのに。


「まあまあ、シノブ。せっかくだからクリリン持ち帰れよ。私はゴン持つから」


 ゴンを抱えてそういう貴央先生に、シノブは「まあせっかくだもんなあ」とちょっと不満げながらクリリンを持つ。


「いや、誰ですかその子⁉」

「あれ? 幻野くんゴン知らないのか?」

「ゴン? ああ、あのゲームに出てくるキャラクターですか? 貴央先生が好きって言ってた」

「一番は君だよ♡」

「いやまたそんな」


 取り敢えず貴央先生はゴンを床に置き、幻野くんに抱き着く。幻野くんは照れながらも「しょうがない人だなあ」と少し嬉し気だった。


「おい、シノブ。それって」

「うん、クリリン持ってきた」

「返してきなさい」

「えー? やだー!」

「いやそいつは多分何らかの活躍して間接的に世界救う奴だから」

「えー、でもこのクリリン役に立たないよ! ひたすら悟空呼んでるだけだもん!」

「ああ、そういうクリリンか。じゃあまあいいか」


「ワンピースの感動シーンってやっぱあそこだよな!」

「あそこ?」

「ああ、アーロン編だろやっぱ! 初期の山場!」

「ああ、ナミがずっとルフィに強く当たって」

「ああ、でもルフィは船長らしく全く動じず」

「そうそう、ナミが『助けて』って言ってさ!」

「いいともおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

「いや感動シーン台無し‼」

「いや、そういう愛嬌のあるとこがいいんだろルフィは!」

「そうだけど台詞まで都合よく捏造しないでよ! そこまで陽気じゃないよ!」

「おいおい、それいうと俺やタモさんが陽気な奴みたいじゃないか!」

「いや、タモさんは分からないけどお兄ちゃんは割と陽気だよ!」

「えー? クールなイケメン兄貴キャラじゃないの?」

「いや、まあそういう面もあるけど! 何で自分で言っちゃうの?」

「ゾロの技で鬼の手ってあったよね?」

「いや、微妙にありそうだけどないよ! 鬼斬りとかはあるけど!」

「Dをデーモンとするなら、ルフィのパンチが鬼の手だよな!」

「いや、まあ、それは確かにそうだけど! デビルじゃないの?」

「デーモンにすると出る門でモンキーの門の鍵とかに繋げやすいんだよな!」

「あ、お兄ちゃんも割とまともな考察するんだね」

「尾田っちってぬ~べ~好きじゃないの?」

「えー? 確かにぬ~べ~オマージュとかはなさそうだけど」


 尾田栄一郎は割とあらゆる作品をパクる。

 ディズニーとか有名漫画とか童話とか神話とか。ジブリや任侠映画や古いアニメとかも。


「えー? 大先輩の名作なのになあ」

「まあ尾田っちは万遍なく読むタイプでも実はないから」

「ああ、デスノートとか多分嫌いだよな!」

「うん、ハンターハンターとかも趣味じゃないだろうね」

「冨樫義博先生に最初審査してもらったのにな確か!」

「うん、まあそれとこれとはってことなんだろうね」

「久保帯人さんとか空知英秋さんとは割と仲良しだよな!」

「うん、まあ尾田もそこら辺は弄りやすいんだろうね」

「よし、今日のネトフリ権はお前にやるよ!」

「え? いいの? ぬ~べ~以外観ていいの?」

「いいけど、いやそんなぬ~べ~嫌なの? てっきりお前も楽しんでるものかと……」

「いや、まあ。よおし、何にしようかなあ♡」

「あ、ぬ~べ~!」

「いや、この期に及んで何でぬ~べ~に誘導しようとするの⁉ さすがに往生際悪すぎるよ!」

「うーん、ぬ~べ~以外だとなあ。ワンピースとかにしとく?」

「いや、ワンピースもそこそこ飽きてきたからなあ。あ、うえきだ! 懐かしい!」

「え? これ人をゴミに変える奴だっけ?」

「いや、そんなジブリみたいな奴じゃないけど」

「手を鬼に変えるんだっけ?」

「ちょっとぬ~べ~に寄せないでよ!」

「サングラス好きに変えるんだよね?」

「いや、割と惜しいな! 眼鏡だけどね!」

「握力をIQに変えるんだよね?」

「いや、微妙に使えそうなアイデアを!」


 人をゴミに

 握力をIQに

 は姉のアイデアだ

 いやあ上手いなあと…


「ぴんぽーん」

「お、遂にあれが届いたか!」

「タクミか?」

「やめて!」


 過去のトラウマが蘇ったシノブは恐る恐る玄関のドアを開ける。


「あ、シノブちゃん!」

「あ、ノゾミちゃんか! てっきりタクミさんかと」

「いや、兄だと何かあるんですか?」

「いや、ノゾミちゃんで良かったという話だよ!」

「兄だと何か悪かったんですか⁉」

「ノゾミちゃんなら上がっていいよ!」

「ええ、何か引っかかる言い方ですね……」


 ノゾミは割とタクミを尊敬しているようだ。


「お、ノゾミちゃんか!」

「ま、マナブさん⁉」

「ん?」


 シノブはノゾミの反応を訝しむ。


「お兄ちゃんだよ?」

「あ、いえ、何でもありませぬ、せん!」

「?」


 ノゾミは少し緊張しているようだ。マナブがいたのは想定外だったのだろうか。


「さあて、俺は二階行ってようかな」

「え?」

「お兄ちゃん? どこ行くの?」

「いや、女の子同士の方が話しやすいだろ?」

「え、いや、そんな」

「嫌だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼ ここにいてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ‼ だって何か寂しいんだもん! お兄ちゃんが視界にいないとさあ!」

「えー? じゃあいていいかな? ノゾミちゃん」

「え、ええ、勿論です!」


 マナブはなんだかんだで妹に甘い。

 しかしシノブのキャラはまだよく分からない。

 いきなり知能が下がりすぎな気もする。

 マナブを出したからか?

 それとも今平が


「俺のことは気にしないでくれ! しばらくぬ~べ~の世界にフルダイブしてるから!」

「うん!」

「ええ、うんって……」


 ノゾミはマナブさんってやっぱぬ~べ~好きなんだなあとか思っていた。


「ノゾミちゃん!」

「な、何ぬ~べ~!」

「? いや、シノブちゃんだよ?」

「ああ、うん、シノべ~!」

「いや、そんな呼び方してたっけ?」


 首を傾げるシノブだが、ノゾミは先程からずっと落ち着かない。


「あの、ちょっとトイレお借りしても……」

「ああ、うん」

「あ、待って! 私も行きたいかも!」

「ええ、じゃあシノブちゃん先でいいよ」

「うん!」


 しかし、これが愚策だった。


「……」

「……」


 まあ、会話は生まれない。マナブから話す理由がないし、ノゾミから話せる道理がないのだから。


 マナブは自身が女子と話が全く合わないことを理解しているし、ノゾミも恐れ多くて自身からマナブに話し掛けるなどとてもできない。


 しかし、割と空気を読むタイプであるマナブは、この沈黙状態は良くないような気がしていた。


 何でもいいから取り敢えず話題を振ってあげるべきではないか。どうせすぐにシノブも戻ってくるのだろうし、少しの時間稼ぎというか間に合わせだ。


 しかし、マナブがすぐに切り出せる話題など、ぬ~べ~かいいともくらいしかなく、この二つが女子ウケ最悪、というかほぼウケた経験がないことを理解していた。


 つまり、この二つは除外だ。せめてワンピースとかではないか。ワンピースならまだ令和の中学生にも伝わるのではないだろうか。


 あとあまり関係ないが多分インデックスさんだな。

 今のシノブのキャラクター造形は。


「あ、ワンピースでさあ」

「え? は、はい」

「何か好きなキャラとかいる?」

「ええと、ワンピース、ええと、ああゾロとかですかね。あとサンジとか」

「ああ、そこら辺は強いよなあ。みんな好きだよなあ」

「はい。格好良いですよね」

「……」

「……」


 成る程。ノゾミはそこまでワンピースに熱量はないようだ。すぐに会話が終わってしまった。


 しかしシノブは遅いな。いや、おしっこでそこまで掛かるか? もう五分くらい経ってないか? 何かあったのか?


「うううううううううううううううううう、ノゾミちゃんも絶対お兄ちゃんのこと好きなんだよおおおおおおおおおお、だって超絶格好良いもんね! ほぼ私だし! うううううううううううううう、早く戻りたいのに、うんこが止まらないよおおおおおおおおおおおおおおおおお。かつてない量だよおおおおおおおおおおおおおおおお。うううううううううううう、不思議と気持ちいいからやめられないし止まらないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、うううううううううううう」


 いや、十分くらい経っていないか? さすがに遅すぎるだろ。


「い、いやあ、シノブちゃんまだかなあ?」


 何かノゾミが少しそわそわしている気がする。いや、これなんかまずくないか。少し我慢しているのではないか。

 いや、さすがにシノブに早くトイレを明け渡して頂かないと。あいつだけのトイレではないのだ。


「ごめんちょっと」


 と軽く断ってから、取り敢えずシノブの使っているであろうトイレの前へ行く。


「おい、シノブ。さすがに長すぎないか? どうした?」

「あ、お兄ちゃんんんんんん♥♥ やばいんだよおおおおおおおおおお♥♥ 気持ち良すぎてやめられないんだよおおおおおおおおおおおお♥♥ お♥♥ おお♥♥ どんどん溢れてくるんだよおおおおおおおおおおおお♥♥」

「いや、お前今そういうのやめろよ! ふざけてないで早くトイレから出てきてくれ!」

「あ、お兄ちゃん使うの?」

「いや、まあ、ああ!」


 取り敢えずそういうことにしておく。


「そっか。じゃあすぐ出るよ! まだ八割くらいだったけど、なるべく早く中断するよ!」


 マナブはその時一瞬何が八割なのか、と少し疑問に思った。あと何かプリンターみたいだなとも思った。


 幸い、シノブはその後二分くらいで出てきて、ノゾミは恥ずかしがりながらトイレを借り、まあ事なきを得た。


「いや、シノブお前マジ気を付けろよ。まずトイレを占領する癖をやめろ」

「え? いや、でもおもらしの神様だし。あ、うん気を付けるよ!」


 シノブは少しずつ何かを学んできているような気もしなくもない。


「兄さん、マナブさんって素敵な方ですね」

「ああ、最高の友達だぜ!」


 次回から遂にシノブ闇落ち編に兆しが。

 何故なら遂にあの鈍感主人公が彼女に眩い光を


「殺魔雷電砲‼︎」


 おや? この必殺技名は? まさか最近好感度爆上がり中のあの…


「ヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーブルーロック‼︎」


 というどこかで聞いたような無駄に長い必殺技名を叫び、そのゴールキーパーは平のシュートを受け止めようとする。


「ぐあああああ‼︎」


 格子牢は麻痺属性のシュートを受け、堪らずボールを溢してしまう。溢れたボールはゴールラインを割る。


「やっぱキャプテン半端ねえ‼︎」

「いやいや、格子牢も大分上手くなったじゃん。もうウラララ‼︎ にも勝てるんじゃね?」

「いやあ、まだまだウラララ‼︎ さんには及びませんよ! 今のキープ技術もウラララ‼︎ さんに教わったものですし!」


 いや、正確にはヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんに教わったものだが、恐らく平はヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんのことを存じ上げないだろう。あと、格子牢くんは今何となく彼女の名前を出すのが恥ずかしかったのだ。まあ思春期特有のあれだ。


「本当はキャプテンも俺なんかじゃなく、ウラララ‼︎ さんに練習付き合ってもらった方が良いんじゃ?」

「え? ああ、まあ、何か最近ウラララ‼︎ に話しかけづらいってか。あいつ何か今めちゃくちゃ頑張ってるっぽいじゃん? お前が言うように今のあいつは大きな階段を越える段階にいる。漫画で言う覚醒みたいな?」

「成る程。ウラララ‼︎ さんもうそんなとこまで……。いやあやっぱ自分はまだまだだなあ。兄ちゃんにもまだまだ全然勝てないし」


 格子牢の兄はカセロスといい、何か色々あって割と最近サッカー部に入部した。


「カセロスのシュート力、パスセンスはなかなか魅力的だよな。フォワードというよりはトップ下くらいの位置が適当かもな。攻撃力高いから守備的には起用したくないな。勿体無いから」


 サッカーオタクの平は話していて少し涎が出そうになる。いや、チームメイトのステータスを分析しただけなのだが。


「よし、取り敢えずここら辺にして、ラーメンでも食いに行こうぜ! 最近新しい店発掘したんだ! めちゃくちゃメンマ乗ってんだぜ! あとなるとも!」


 平はラーメンの具で特にメンマとなるとが好きらしい。変わった子だ。


「チャーシューは?」

「チャーシュー? 豚か! ああ、確か入ってたよ! 多分!」


 そしてチャーシューはあまり好きじゃないらしい。変わった子だ。


「あ、そうだ。最近副キャプテンって元気ですかね?」

「ん? シノブ? え、ああ、そういや夏休み入った辺りから、あまり会ってないような気がする。この前うんこの画像送ってきたけど」

「ええ? ふ、副キャプテンのうんこですか? うわあ」


 格子牢くんは少しどきどきしている。変わった子だ。


「安心しろ、格子牢。あとで画像送るから」


 こういうところだけ勘が回る超鈍感系主人公だが、格子牢くんは「良いんすか⁉︎ えー、すごく嬉しい!」となかなか可愛い反応をしていた。

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