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ペットショップにいるハムスター

作者: 宮野ひの

 ペットショップにいるハムスターは、仲間達と一緒に狭い水槽の中に入れられている。見たところ5〜6匹はいる。


 種類はジャンガリアンハムスター。餌を食べる者、回し車をまわす者、隅に固まって寝ている者。それぞれが、それぞれの好きなことをしている。


 一見、気ままで楽しそうに見える。だけど、プライベート空間がない。寝食を仲間たちと過ごせるので、寂しいと思うことはないだろう。しかし、一人になりたいときは、それが必ず叶わない。


 必ず背後に仲間の存在を感じないといけない。いつまでここにいなければならないんだろう。水槽の中から出してほしい。いくらそう思っても願いはすぐには叶わない。


 ウトウトと眠りにつきそうなときに、回し車を乱暴にまわす者がいれば、イラっとすることもあるだろう。


 ハムスターが水槽の中から出るには、誰かに飼われないといけない。それは優しい人間だろうか。美味しい餌と清潔な水を、毎日しっかりくれるだろうか。


 新たな新居に移るとき、単独で飼われれば、一人気ままに過ごすことができる。だけど、そこに先に住んでいるハムスターがいたらどうだろう。


 飼い主は心優しい人で、ハムスターが1匹だけだと寂しいと思って、"仲間"を迎えることにした。オスメス同士であれば繁殖して増えることを考えて、同じ性別のハムスターにした。


 そのときは冷静になれるだろうか。すでに住み慣れた家の中に、新たなハムスターが仲間入りするのだから、必ずトラブルは起きる。


 怒った先住民は、新入りを寝床に入れてくれないことがあるかもしれない。餌も、ひまわりの種は全部取られてしまい、餌箱の隅に残った屑のようなものにしかありつけないかもしれない。


 飼われた今、もうどこにも出て行く希望は持てない。この家で、一生を終える覚悟をしなければならない。


 そのときになって初めて、元のペットショップにいた仲間達が恋しく思うだろう。今、何をしているだろうか。窮屈だったけど、良い時間を過ごせたなと感じるだろう。


 だけど、運良く戻れたとしても、同じメンバーではなくなっているはずだ。人からすれば同じ顔に見えるハムスターであっても、水槽に住んでいた側からすれば、1匹1匹、区別はつく。


 ハム吉、ハム美、ハムカツ、あぁ、懐かしいな。そんなことを思った矢先、餌箱にひまわりの種が残されていることに気づいた。


 先住民は、もう寝床に戻っている。これは、くれたということだろうか。しめた。堪能するように、ひまわりの種をゆっくりと食べた。ああ、美味しい。そんな地獄の中で感じた幸せこそ、本当に価値があるものなのかもしれない。寿命がつきるまで一生懸命に生きる。ただ、それだけを頼りに生きていた。

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