表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

臆病者

この世界での2日目は粗末なベットの上で目を覚ます

昨日、町に着くなり宿屋に直行したのだ


机の上には革袋の水筒とパンが置いてある 1泊1食付きでゴブリンがドロップした金貨1枚だった


硬いパンを嚙じりながらこれからのことを考える

宿に向かう途中、道具屋や装備屋らしい看板や教会を見た


それにユージと同じような転生者も何人か居た

なぜわかるかというと浮いてるのだ 服装が完全に町の人間と違う


「とりあえず1番近かった道具屋にでも行ってみるか」


パンを食べ終わり水筒の水でパンによって水分を失われた喉を潤すと、水筒を腰に下げ宿を出る

因みに水筒の値段も宿料に入っていた


道具屋の前に着くと古びた木の扉を押し開け中に入る

カウンターには初老の男性が座っておりユージに目を向けるとしゃがれ声でしゃべりだす


「いらっしゃいませ 低級ポーションは1ゴールド 腰袋は2ゴールドでございます」


品揃えの悪さは最初の町だからだろうか


「ポーション2つと腰袋を」


そう答え 金貨を4枚カウンターに置くと 老人は腰袋と水色の液体が入った瓶を2つカウンターに出した


ユージは腰袋を腰に付けるとポーションの瓶と腰に下げた水筒を腰袋にしまって店を出た


「あと3ゴールドか 道具屋の品揃えから考えて装備屋も期待出来ないな」


まぁ最初の町の装備なんてすぐ使い道無くなるだろうし

なんて考えて歩いていると後方から声が掛かる


「あの!!」


振り返ると金髪の幼さを残した青年がこちらを見ている 服装を見るからにプレイヤーだ


「プレイヤーの方ですよね?僕とパーティを組んでくれませんか!?」


何の用かと尋ねる前に青年は早口で用件を伝えてくれた


「パーティ?なんで俺と?」


「怖くて次の町に一人じゃ進めないんです!!」


今にも泣きそうな顔で事情を説明する青年

道を歩く者達の訝しむような視線を痛いほど感じ、居た堪れなくなり青年の手を引いて町の外れまで連れて行き事情を聞くことにした


彼の名前はミナト 最初の森でゴブリンを一匹も倒さず森を抜けこの町に辿り着いたらしい


「怖くてゴブリンを倒さず逃げてしまったんです

一度抜けると最初の森には戻れないみたいで…」


瞳に涙を浮かべながら話すミナトにずっと気になっていたことを質問する


「パーティってなに?」


ミナトはキョトンとした表情をしながら教えてくれた


「この世界では5人までのパーティを組めるみたいなんです

パーティを組むと戦闘での経験値を分割したりしちゃうみたいなんですけど…最初に説明されませんでしたか?」


少し申し訳なさそうに教えてくれるミナトを横目に俺は頭が痛くなるような錯覚に襲われていた


本当にあの少女は説明が足りない まぁもしかすればミナトの案内人が過保護なだけかもしれないが

説明が多い方と足りない方ではありがたいのは前者だろう


「悪い 俺はこのゲームの仕様については殆ど説明を受けてないんだ 知ってることを教えてくれないか?」


ミナトは少し同情するような目をしながら色々と教えてくれた


町に入ってすぐの広場にある掲示板には先のステージの情報が載っているらしい


次の森もゴブリンが出るらしく推奨レベルは3〜5 その森を抜けると大きめな街の【デパール】に出るらしい


「実は僕は1週間前にこの世界に来たんです 初日に会った赤髪の女戦士の方がお金をくれたのでここまで何とか食べてはいけたんですけど このままではいけないと思って 足手まといなのはわかってますがせめて次の街までお供させてください」


深々と頭を下げるミナトを慌てて止める


「やめてやめて 足手まといなんて、情報助かったよ

いいよ パーティを組もう」


俺の返答を聞いて安堵した表情を浮かべたミナトはさっそくパーティの申請を送ってくれた


視界の端に表情されたパーティ申請を承認すると次は(パーティメンバーに情報を共有しますか?)の1文が表示されたのを確認し それも承認する

すると視界のステータスの表示に新たな欄が増えた


Name:ミナト

Level:1 0ゴールド

職業:剣士 Eランク

サブ職業:なし

個人スキル:隠蔽 5秒間敵に感知されづらくなる

装備 片手剣

  ただの服

  ただの靴


なるほど パーティーだとメンバーのステータスが共有されるようだ レベルを見る限りゴブリンを一匹も倒してないというのは本当らしい


戦闘を回避できたのはこの個人スキルのおかげだろう

個人スキルか…俺にはない項目だな 戦闘スキルがないのは職業のランクが低いからだろうか


ステータスの表示を切りミナトの方に目を向けると ミナトも俺のステータスの確認を終えたようだった


「ユージさん!侍なんてカッコいいです!僕 日本人なんですが憧れます!」


「ちょっと待て!ミナトも日本人なのか?でも金髪だし顔立ちも日本人って感じじゃなくないか?」


そう言って興奮気味のミナトをなだめながら 最初に少女が言っていた(この世界に連れてこれるのは魂だけ)という説明を思い出して一人で納得する


ミナトはというと「ユージさんも日本人ぽくないですよ」とか言いながら笑っていた


そう言えば自分の外見を確認していなかった どっかで鏡などがあれば確認してみよう


********************************************


ミナトとゴブリンの森を進んでいく

最初の森と似てはいるが獣道というよりはしっかり道が拓けている


ミナトに目を向けると剣を持った右手が震えていた

声をかけようと口を開きかけた時


「ギィエエエ!!」

後方の森の中から3匹のゴブリンが飛び出してきた

ゴブリンは近くのミナトに飛びかかるが


スキルを発動させた抜刀の一閃に真っ二つになる

そのままの流で2体目を袈裟斬りで斬り伏せる


スキルのバフがない分 初撃ほどの威力はなかったが致命傷には十分だったようだ 地面に倒れると同時に跡形もなく飛散した


遅れて飛びかかってきた3体目に横蹴りをくらわせ吹き飛んだゴブリンを踏みつけて右肩に刀を突き刺して身動きを取れないように固定する


「ミナト トドメを刺せ」


地面にへたり込んだミナトは目に涙を浮かべながらクビを横に振る


「無理です 僕にはできません」


「駄目だ これは1週間前に逃げたお前の試練だ 変わるって決めたんだろう?」


現状でモンスター討伐以外での稼ぐ方法が無い以上 この森を一人で探索できる程度にはレベルを上げてもらわなければ次の街に行った所で状況は変わらない

そんなやつを置いていくのは俺も夢見が悪い


ミナトは覚悟を決めたのか 剣をゴブリンの胸元に突き立てた


ゴブリンが消えるのを見届けるとミナトは目元を拭うと前を向いた


「レベルアップしました」


「おめでとう もう戦えるね」


ミナトの手の震えは止まり力強く剣が握られている


その後も何度か複数体のゴブリンの襲撃を受けたが危なげなく戦闘を終わらせる


ミナトも隠蔽のスキルを使い背後からゴブリンを狩っていく


森を抜けた頃には俺のレベルは3→7にミナトのレベルは1→4になっていた


****************************************


【デパール】は確かに大きな街だった

周囲は城壁の様な壁に囲まれており

大きな門を抜けると中は広場になっている


とりあえずミナトに教えてもらった掲示板を見に行く


[掲示板]

次のステージ情報

トロールの森  推奨レベル 5~12

出現モンスター ゴブリン、トロール

ボスモンスター ハイトロール 推定レベル 12

進行情報

教会にて鍛冶師、商人、僧侶の職業習得可能


掲示板を確認し とりあえずミナトと飯屋で祝勝会を兼ねて今後の事を話し合う事にした


「ユージさん 本当にありがとうございました」


「こちらこそ ありがとう ミナトは今後 どうするんだ?」


「僕はこの街に残ってお金を貯めて鍛冶師の職業に転職しようと思ってます」


やっぱり戦うのは怖いとミナトは笑う

正直言えば寂しくないといえば嘘になる


だがミナトの決めたことが止めるような事はしない

この店につく前に教会に寄ったのだが転職には50ゴールド必要なようだった


1つ引っかかったのは俺は転職出来ないということ 教会の人間もこんなことは初めてだったらしい


「ユージさんは進まれるんですよね?」


「あぁ 行けるとこまで行ってみるよ」


ミナトが1週間にこの世界に来たということは先にはもっと多くのプレイヤーが居るのだろう

ここで立ち止まっている訳にはいかない

まだ日も落る時間でもないし 先のステージでレベル上げでもしよう


「ではここでお別れですね」


ミナトは少し寂しそうにつぶやく


「楽しかったよ 元気でね」


「はい!いつかユージさんの刀を打たせてください」


「その時はよろしく」


そう言ってミナトと握手をしてパーティを解除した




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ