猛獣に応戦しなければならなくなる
強風が鳴った。森が呻きだし、雪崩のような音が襲ってきた。どよめく一同。ネコミミをつけるデイザンとイングロード。気配が、強烈な圧迫感が尋常でない速度で迫っている。高架下から見上げた新幹線を思い出したくらいである。身構えるネコミミ三人衆。いつでも変身できる模様だ。森の方へ向き直し迎撃できる姿勢を取る。息をのむ。
すると、騒ぎが始まったのは例の特殊部隊の方である。町に現れた異形とはまた異なる姿。とはいえやはりコスチュームぽっさが見える。それが現れ、特殊部隊とおっぱじめていたのである。そちらを向いてから森の方へ視線を向けなおす三人衆。
「おい! どうなってんだよ。カトゥン、一体何が起こってる」
「分からん。二手から強襲されている感がある」
「敵さんがキツツキ作戦を仕掛けて来たってことか」
「キツツキだの餅つきだの呑気に言っている場合ではない!」
戦国時代の戦術をネタにしたボケに律儀にツッコミをしている暇はあるのかと、女騎士へ茶々を入れようとしたのだが、
「カトゥン、俺とイングロードはあっちへ行く」
一声の後走り出して
「ヘンシン」
と掛け声。デイザンとイングロード、瞬く間にバトルスーツ姿に。
「だったら変身ポーズ要るんかい」
などと言っている場合ではない。デイザンたちが向かったあちらの抗争の他に、こちらに向かってくる気配は一層濃くなっているのだ。
「ヘンシン」
カトゥンは物の見事に変身ポーズを施した。春日大の前に立つ。正体不明からかばう姿勢である。
「室長! 退避を!」
「ああ」
研究室一派はのろい逃走をし始める。
その瞬間である。存在感がどしりと落ちてきた。
「お……い」
春日大がボケもツッコミを忘れている。なぜなら四足の猛獣が目の前に現れたからである。しかも木々生い茂る森に負けないくらいに巨大な。
「こんなの知らんぞ」
苦しげな声を出したかと思うと一線、獣へ飛んでいくカトゥン。獣の光る双眸がカトゥンに向けられた次の瞬間、春日大の視線からカトゥンが消えた。爆音を立てる木々。そこを見れば、埃を立てる半損した幹にぐったりと身を預けるカトゥンの姿。
空気が空から押してきた。見れば獣が鼻息を荒くしていた。それは前足を地につけ直していた。かの脚力によってカトゥンは吹き飛ばされたのだ。
「ダイ! 逃げろ!」
「ダイさん、早く!」
デイザンとイングロードは敵と攻防を繰り返して手を離すことが出来ない。すでに特殊部隊がボロボロに身をかがめている。カトゥンは身動きさえもしない。重々しくその前足をカトゥンへ向ける猛獣。春日大の身体は熱を発し始めた。動悸が加速する。思考が展開しなくなった。
「止めろー!」
イヌミミが発光すると、熱波が同心円状に広がった。
「変身!」