ネコミミ部隊勢ぞろい
「それでなんでそろい踏みになってんだ?」
春日大がこのピコライト国で平和日本とはまったく異なる場面に遭遇した翌日である。
事後報告に勤しんだカトゥンたちと異なり、春日大には処理しなければならない案件は変身ポーズ以外にはなく、用意された客間の姿見の前で思いつくままにポージングをしてみたものの、イヌミミによってバトルスーツ装着の事実どころかその兆候すらなく、いい加減動作パタンが底をつくと安眠に就いたのだった。
目覚めれば、あわよくば夢であった欲しかったというかすかな願いもむなしく、カトゥンから朝食にせかされ、食後落ち着く間もなく研究室長の下っ端と思われる人から実験を告げられ、ついて来てみたら現在地である。すなわち城から距離のある、だだっ広い平野である。森を通り抜けると山へ登ることになる。研究室一派と来てみれば、ほどなく戦士たちも馬に乗って来たのだった。
「俺たちが見物したところで不都合はあるまい」
いかつい男・デイザンが馬から降りると腕組みをして背を逸らせた。
「気になるものは気になるものね」
理系女子・イングロードは肩掛けしてあるバッグから眼鏡を取り出した。ただし普通の眼鏡ではない。赤外線とか見える暗視ゴーグルの類である。
「私は一応ダイがこちらで過ごす保護者みたいなものだからな」
カトゥンはなぜかすでにネコミミを着けている。
さらにそればかりではない。見慣れない人々も集まっている。格好からして兵士の中でも特殊部隊っぽい者や、教会なのか寺院なのかしれないがそっち方面の聖職者っぽい人やら。
「つまりは、このミミでしでかした時に迅速に事態収拾に当たれる役職がそろったということか」
まるでパンデミック直前の病原体扱いの春日大に、
「では、ダイ殿。ヘンシ」
研究室長が実験の開始を告げようとした矢先である。