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ネコミミよ、この世界のしるべとなれ  作者: 金子ふみよ
第四章

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ウキヨによる救助活動

 と、良い場面なのだが、なぜウキヨが濡れ鼠のようにずぶ濡れだったのかは、こういう経緯があったのだ。

 湖の中を深く深く沈んで行く巨躯。もうすでにデイザンの意識はなく、抗って浮上しようとすることさえもない。

 そこへ、

「デイザン」

 バタ足で潜ってくるのはイングロードだった。生身の人間と、装甲をまとった人間。沈降の遅速加減が妥当かどうなのか、イングロードはちっとも届かないデイザンに向かって、一層スピードを上げる。湖の中の視界のはっきりとしない濃い緑の世界。その奈落に落ちていくように見える同僚へなんとしてもおいつかなければならない。それなのに、その奈落から影が見える。しかもデイザンに向かっているように見える。

 ――敵?

 イングロードは水中戦の経験がない。訓練で水中での動線や行動を習ったことはある。けれどもこれは実践だ。しかも単独の対戦ではない。デイザンの身柄を確保しなければならない。しかも安全に。それには今すぐにでも追いついておかなければならない。しかし、間に合わない。となれば、バタ足をいったん止め、薙刀を顕現させた。そうしているうちにも影はデイザンに一層近づく。構える。敵が何者かしれないが、湖の巨大な魚の類なら食料として飲み込んでしまいかねない。それがもうデイザンの間際になっているのだ。

「デイザン、避けてね」

 恐らく意識はないだろうことは承知している。が、迷ってはいられない。いよいよ薙刀を振るおうとすると、

「待て待て、イングロード。私だ」

 イングロードの頭の中に聞こえてきた。

「ウキヨ? どこに」

 姿勢を解き、辺りをキョロキョロとした。しかし、すぐに同僚の身の方へ視線を向ける。すると、デイザンの衣服の一部を噛んで浮上してくる猫がいた。

「手間をかけおって。ほら」

 イングロードの目前まで来ると、力の抜けているデイザンの身を渡した。彼を抱えるイングロードが、

「ちょっ、どうい」

 猫が湖の中からやって来たことを問うとしているのだが、

「あー、やれやれ。どいつもこいつも」

 ウキヨがため湖面よりもはるかに遠い所を見ているような視線をして息を吐くもんだから、

「どうしたの、何が」

 驚きと戸惑いながら問おうとしたのだが、

「早くそのでかぶつを回復させてやれ。私は手間のかかる忠犬どものところに行く」

 虎猫は言い放ったかと思うと、イングロードの目の前で消えてしまった。

「……いやいや、どうせならその前にデイザンを」

 さすがにネコミミ部隊である。あっけにとられる注意に喝を入れて、巨躯を抱えて湖面へ向かって浮上して行った。


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