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白猫と勇者~裏物語~  作者: 八陽
第9章 紡がれし想いと団円
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9-13 結末の先への後始末

 残され森に夜が訪れた。

 黒く焼け焦げた跡が痛々しいカゼフネの周囲だけが、光に照らされている。

 周囲に設置されている照明は、クロタフォ公爵の首都屋敷の瓦礫から掘り出した、光精石だった。


 湖面が反射する光の世界に、岸に乗り上げたカゼフネが幻のような儚さと共に佇んでいる。

 残され森で暮らすようになった避難民達は、闇夜に煌々と姿を見せるまれに見る情景をひと目見ようと対岸に集まっていた。


 カゼフネが乗り上げた岸の近くには、木々を切り倒して整地された場所がある。補修用の部品を製作するために、ラスピが作り上げた空間である。

 そこに据えられた椅子とテーブルに、ユートとリシアの姿がある。

 二人の前に立つラスピは、この森から切り出した木を、板に整形し終え、見せに来たのだ。


「仕上がりはどうだ?」

「節もなく柔軟性のあるいい素材だ」

「セルロースナノファイバーだからな。年輪がなく均質だからこそ、いいのかもしれない」

「そうだろう?」

 石像のような姿のラスピが、笑みを浮かべた。

 作り物のような固い笑みだが、どことなく温かみがあるとユートは感じていた。


「この森の木は、全部こうなのか?」

「過剰な精を受けて急成長するとこうなる」

「そういうことか。ザゲル、ちょっと見てくれ」


 ユートが湖に向かって声を掛けると、応急処置を施したカゼフネに精を集めているザゲルが、風となって姿を現した。


「どう思う?」


 ユートが指さしたラスピが持つ板に、ザゲルが触れた。

「精の通りは悪くない」

「ガンピシモドキの代わりに使っても問題なさそうか?」

「これに精紋を描けば使えそうだ」


「巨木の森にこれがあれば、俺がガンピシモドキを作る必要もなかったような気もするが」

「あの森は、私が何千年もかけて育んだのだ。精が満ちる中でも急成長しないようにじっくりと時を掛けて育てた。そうでなければ、あの大きさになるまえに自分を支えきれずに倒れるのだ」

「物には色々と使い所があるようだな」

「そうらしい。今度は別の育て方をしてみよう」


「楽しみが増えれば、巨木の森での隠居生活にも張り合いが出るだろう。良かったなザゲル」

「そうだな、ユートのお陰だ」

「お互い様だ」


 ユートは精紋の描き方をラスピに教えた。

 地の精霊は他の精霊と違って、さほど宿玉を必要としない。それは、大地が続く限りその中を移動するからという理由の他に、実体化する時には周囲の石を集めて押し固めて精を宿す核を自分で作り上げるからである。

 そのため、感覚的に宿玉に求める性質が分かっているのだ。


 そこに、これまで人間が培ってきた知識と経験を元に作り出した精紋と、その性質を見極めて本質をつかみかけたユートの知見が加わったのである。

 ラスピの石で作られた無機質の目が、光精石の光を受けて輝いたように見えた。


「そうか。これを人間は独占してきたのか。狡い連中だ」

「そう言うな。昔何度か争った仲だ。いずれまた敵対することを想定すれば、革新技術の流出は人類の滅亡を意味する」

「そうだな。オレもリシア様と出会って、人との関わりもいいものだと思った」

「リシアの人徳だな」


 ユートはずっと黙ったままでいるリシアを見た。

 その視線を避けるように、リシアは横を向く。


「私は人を誑かす黒髪の魔女ですから」

「気にするな。それは持てない男のやっかみだ」

「そうでしょうか」

「トルプだけでなく、ラスピにも好意を抱かせたんだ。それだけリシアは魅力的な人間性を持っている証明になる」

「その通り。オレが人であれば、リシア様に求婚していただろう」


 のろけたように言うラスピを、諫めるように風が吹き抜けた。

 姿を現したのは、ディアンだった。

 リシアとの契約を満了し、報酬であるお守りを得たディアンは、もうプロソデアの契約精霊であるキディナスでしかない。それでも、二人の間に結ばれた絆は健在だった。


「ラスピ! ボクがいなければリシア様を殺していたかもしれないのに、よく言う!」

「その通り。故に、ディアンに感謝している。オレは人間が嫌いだったのだ。しかも、風の精霊王を祭殿から連れ出したというノイ・クレユ人は、優先して殺すべきだと思ってしまったのだ」


「ですがラスピは、ユート様のガンピシに目が眩んで、リシア様と契約したのですよ」

「あれは、精霊王が通ったあとの大地は、精が奪われて劣化していたこともあり、弱っていたのだ。そうでなければ、風如きには屈しない」

「風は、石だって削れるんだぞ」

「風化した、脆い岩石だけだ」

「なんだと、試してみようか」


「二人とも、もっと相手を尊重したらどうだ。価値観の違いをぶつけ合うのはいいが、争いは良くない。異なる価値観があるからこそ、新たな価値観を生み出せるようになるんだ」



「確かに、そうだな。ユートの作ったガンピシをひと目見て、興味を持った。そして核にして体に取り込むと、思った通り、乱れた大地の精を取り込みやすくなったのだ。そのような効果は、大地の奥深くで圧縮して作り上げた石でしか得られないというのは、過ちであった」


「排除するのは簡単だ。簡単な事をやってすぐに出来てしまえば、物足りないだろう」


「その通りのようだ。オレは、地の精霊が風の精霊を嫌うその大元を探り、融和の道を探ろうと思う」

「最終的にはそこに人間も含めてくれ」

「もう含んでいる」

「そうか。嬉しいね」


 ユートはラスピの肩を叩いた。

 冷たい石の感触であるはずが、どことなく温かかいとユートは思うのだった。


「楽しそうですね」


 整地された場所に入ってきたのは、プロソデアだった。

 ディアンが案内してきたのである。


「目処の一つは立ったからな」

「私は不要でしたか?」

「そう拗ねるな。来るのを待っていたんだ。プロソデアなしだと、お手上げだからな」

「拗ねてはいませんが、正直なところ、ユート殿が羨ましいです」

「俺はプロソデアが羨ましいぞ」

「では、お互い様ですか」


「どうであれ、自分は自分でしかないんだ。羨んだり妬んだりするより、友達になって協力し合う方が、楽しいだろう」

「そうですね」

「という訳で、みんなで話し合おう」


 ユートが着席を促す前にリシアが立ち上がった。


「その前にプロソデアさんに伺いたいことがあります」

「ルリさんの事ですね?」

「はい。本当に無事なのですか?」

「今は眠っています。一ヶ月以上も精霊王に取り込まれていただけに、少し弱っていました。ですが、精霊を使った療養術にも長けた者がいますから、明日には立って歩けるくらいに回復するでしょう」


「そう、ですか。良かった。本当に」

「ご心配でしたら、様子を見に行かれてはどうです? 私がお連れしますよ。距離はありますが、そう時間はかかりません」


「――いいえ」

 リシアは少し間を置いてから、答えた。

「ひと目でもお嬢さまを見てしまうと、目覚めるまで離れられなくなりますから」

「俺の意見に流されるなよ」

「自分で考えて決めましたから、もうユートのせいにはしません」

「安心したよ」

「――邪魔をしました。話を続けてください」


 リシアは椅子に座らず、プロソデアに出すお茶の用意をするために竈へと向かおうとした。


「リシアも参加してくれ」

「私には、精紋とか精霊についての知識はありませんから」

「なら、知識を得るための勉強だと思ってくれたらいい。それに、後で聞かれて二度手間になるのは避けたい」

「分かりました」


 全員がテーブルに向き合って座った。

 そこには、ユート、リシア、プロソデアの三人の人間に加え、ザゲル、ラスピ、ディアンという主に試練に立ち向かった精霊がいる。

 加えて、プロソデアの契約精霊が聞き耳を立てている。


 議論のテーマは、カゼフネの修復についてである。


 カゼフネの損傷は、深刻だった。

 帆柱は先端から三分の一は焼け焦げており、精紋を描いた帆は焼失している。

 両舷の羽のような翼も、半分以上が燃え落ちている。

 尾羽のような尾翼は根元しか残っていない。

 これらは交換しなければならないが、元の素材は、境界の淵に聳える山々の裾野に広がる森から切り出した目の細かい強靱な木だった。それを骨格にして、精紋を描いたガンピシモドキを貼り合わせて作ったのだ。

 ガンピシモドキも同じく、この残され森では手に入らない材料だった。


 唯一巨木の森から切り出した木をくり抜いて作った船体だけが、修復すれば使えそうだった。だがそれですら、ザゲルが存在するために必要な膨大な精を溜め込むための精紋は、焼け焦げて機能を失っている

 今のところ、ユートが折ったガンピシモドキを配置して作った封精結界で流出を封じ、ザゲルの力によって精の充填を維持している状態にある。とてもではないが飛行できる状況ではなかった。


「問題は、ガンピシモドキをどう調達するかですね。蒼き森の先にある山まで行けば手に入るかも知れませんが、材料をここまで運ぶのに手間が掛かりすぎるでしょう」


「そこでだ、さっきラスピが提案してくれた物がある」


 ユートの目配せを受けて、ラスピが輪の真ん中に出したのが、先程切り出した板だった。

 プロソデアが前に進み出て、板に触れた。


「確かに、基材としてはいいようですね。ですが、分厚すぎるのではありませんか?」

「可能な限り、ラスピがスライスしてくれる。昼間船体の焼けた後がどこまで深いか確かめるために、かんながけをしてもらったから分かったが、鰹節並の薄さまで削ってくれた」

「カツオブシとは?」

「向こうの世界の食べ物だ。水分を極限まで抜いた魚の乾物だ」


「興味深いですね」


「悪いな。プロソデアの好奇心に付き合っていると、間に合わなくなる」

「すみません。ですが私の好奇心は、ペリジアには及びません」


「そうかもな。と、言う訳で話を戻すが、そこまで薄くしなくても、薄い板を貼り合わせて圧力掛けて合板にすれば、骨組みにガンピシモドキを貼った翼よりも丈夫で柔軟なものが出来ると思うんだ」

「そこに精紋を描けばいいのですね」


「そうだ。その試作を作ってもらいたい。主体になるのは、プロソデアの精霊がいいと思う。境界の淵で、俺の助手をしてくれたから、作り方も知っている」


「わかりました。ですが、ユート殿がいないと、問題が起きると手が止まってしまうでしょう」

「幸いにして、ラスピがいる。いい腕をしているし、創意工夫も得意にしている」


「驚きました。随分と偉大な地の精霊がいらしたのですね」

「偉大なものか。オレは仲間を失い、何も出来ずにさ迷っていただけだ」

「大凡の話はキディナスから聞きましたが、単身でこれだけ荒れた風の領域をさまよえるだけでも凄いと思います。しかもユート殿のガンピシを圧縮して宿玉として取り込んだそうですね」

「精霊が鉱石を宿玉にする、その理由を知っているだけだ」


「そんな訳で精霊達に任せられるなら、俺は別の事に注力したい」

「分かりました」


 すぐにプロソデアが、地の精霊シディロウ、水の精霊リーリア、火の精霊ティコを呼び出した。彼らからラスピに、境界の淵で覚えた作業の説明をさせた。


 その間にユートはプロソデアに精紋作りの応用についてアイデアを伝えていた。

 一方で精を集め、他方で精を放つ精紋である。

 推進力を得るために、ユートが思いついたのだ。これは、聖剣の鞘を作って得た知識の応用だった。


「なるほど。精紋とはそうした使い方もあるのですね」

「航空力学の概念を元に、創意工夫をすれば誰でも思いつくだろう」

「そういう事にしておきましょう。では、段取りを組んできます」


 大まかな作業方針はすでにユートが立てていた。

 それをザゲルとラスピに伝えていたため、プロソデアはカゼフネに乗り込み、具体的な工程を作って精霊達に指示していく。

 ユートは一息吐き、リシアが入れてくれたお茶を飲んだ。


「ユートは発想力が優れているのだと思います」


 ぼそりと、呟くような声に、ユートは振り向いた。

 聞こえないフリをすべきか、聞き流すべきか。

 迷うように茶碗を揺らしていたユートは、口を開いた。


「リシアに褒められると、すごく嬉しいのはどうしてだろう」

「知りません!」


 怒ったようにリシアは横を向く。

 ただ、これまでのように、口論には発展しなかった。


「そういえばリシアは、俺の名を呼んでくれるようになったんだな」

「い、いまさら何を言うんです。あなたが名前で呼べと言ったのでしょう」

「そうなんだが、嫌そうだったから」

「合理的な判断をしただけです。人が多いと、名前を呼ばないと会話に支障が生じるからです」

「ごもっとも」


 今は二人きりだという余計な指摘を、ユートはしなかった。


「それより、ユートに言いたい事があります」

「遠慮せずに言ってくれ」

「隠し事はもうやめてください」


 面と向かってリシアから告げられたユートは、これまでと違う雰囲気に戸惑った。


「隠し事?」

「ユートは何を焦っているのです?」

「遠足はなんたら、という使い古された標語は知ってるか?」

「無事に帰るまで、という話は小学校で聞かされました」

「その道筋を整えなければならない」


「ですから、その理由をきちんと説明してください。ユートはいつも遠回りに言うから、誤解してしまうのです」

「悪かった。少し心の準備をして欲しかったんだ」


「分かっています。ですから、あなたも私を正しく見てください。狼狽えて冷静さを失って泣きわめくような女ですか?」

「いや、君は素敵な女性だよ」

「そ、そういう風に余計な修飾語を付けるから、いけないのです」


「ごめん。俺は正直に言ったんだが――」

「も、もういいです。話の続きをお願いします」


 ユートは微笑みを浮かべ、リシアを正面から見つめた。


「今日が、七月二六日だというのは、知ってるか?」

「はい。トルプ・ランプシに聞きました」

「その七月を、タタ・クレユ語では『ミナ・ピドゥロ』と言うんだが、交流月という意味になるそうだ。そして八月はミナ・イスモス、別離月だ」


 普通に通訳精霊を介して聞いていると、七月としか聞こえず、原意に気付く事はない。

 吹き替えで映画を見る弊害のように、元の言語が持つ意味合いに意識を向けるのは困難なのだ。

 聡明なリシアであっても気付きようのない、通訳精霊を用いた利便性に対する皮肉であった。

 ただ、ユートの話を聞いたリシアは、すぐに悟ったように真剣な表情になった。


「交流と別離ですか。もしかして今月を逃すと、元の世界に戻れなくなると言うのですか?」

「その可能性がある。しかも、四年に一度の七月は大交流の祭りが行われるそうだ。生憎今年は大災害が起きて中止になったようだが」

「今月を逃せば四年後になるのですか?」

「単なる推測だけどね」


「正しいか試す訳にも行きませんね」

「そういう事だ」

「では、残りあと五日ですか?」

「こっちでは一ヶ月は三五日だから、あと九日ある」


「それまでに帰る方法を見つけなければいけないというのですね」

「しかもトーマは、聖剣を境界の淵に戻す義務を果たさなければならない」

「だから、カゼフネが必要なのですか」

「カゼフネなら、丸二日あれば行って帰って来られる」

「まだ余裕がありますね」

「無事に飛べればな」


「修理の目処が立ったのではないのですか?」

「修復できても、飛行するのに必要な精を貯めなきゃいけない。ザゲルが存在するために消費する精とは別に、空に浮くための精が必要になる。けどこの森は、境界の淵と違って精が少ないから――」


「これで少ないのですか? 精が溢れて森が異常に生育し、濃すぎる精に精霊が酔ったように狂気に陥った森なのですよ」

「ディアンやラスピにあげたガンピシモドキに貯めた精は、ザゲルにとっては一滴の水程度の量でしかないんだ」

「そんなに、違うのですか」

「精霊の偉大さは、大きさだけじゃない。その精の密度こそが本質だろう。それだけに、燃費も悪い。豊富な精に満ちている巨木の森から出るのは命懸けなのさ」


「命を懸けて、来てくれたのですか?」

「トーマの活躍を特等席で見たかったというのは、本当だぞ」

「ザゲルも照れ屋なのでしょう。いずれにせよ、助かりました」


「まだ終わってないのが問題だ」

「精の量ですか。この森に流れ込む精が少なくなったと、精霊伯爵も言っていましたね」


「精の流入が減ったのは、王宮精紋を稼働させるために、精流脈の流れを変えたせいでしょう」

 横から口を挟んだのは、プロソデアだった。カゼフネを前にして、具体的な工程を指示して終えて戻ってきたところだった。

「風の王に頼めば、精流脈を再びこの森に注ぐようにしてくれるかもしれません」


「是非頼む」


「ユート殿から直接頼んではどうです?」

「できれば、遠慮したい」

「リシア殿にも、陛下が会って直接礼を言いたいそうです」

「お礼など不要です」

「それに、俺には身分の高い人に会う品格はないし、礼儀作法もなってない。無礼千万の下賤の者だから会うのは相応しくないと、言ってくれ」

「でしたら私の悪友、ノルティア・ザーラとしてなら、どうです?」


 ユートは諦め混じりの息を吐いた。


「そこまで気を使わせてしまうと、会わないと却って失礼になるな」

「安心しました。実はすぐそこまでいらしているのです」

「手回しの良い事だ」

「では案内します。その前に、これをお返ししておきます。精霊に無用な欲心を抱かせますので」


 プロソデアがユートに差し出したのは、カゼフネの応急処置に用いたガンピシだった。下界で暮らす多くの精霊にとってそれは、過剰な力をもたらす宿玉となる。だが、耐久性がないので無知なまま依存すれば、宿玉としての力を失った途端に、自己消滅する危険にさらされるのだ。

 受け取ったユートは、八角形に折ったガンピシモドキを開いて集精の機能を止め、バックパックにしまった。


「では、参りましょう。こちらです」


 プロソデアの案内で、ユートとリシアは森の奥へ向かった。倒木によって空が開けた場所で、風の王に即位したウザラ・ノルティンが待っていた。他に人の気配はなく、単身で来たようである。


 ウザラは若い王だった。

 髪の色は薄く、肌と目の色は風の種族の特徴とは異なっている。

 覇気に満ちているというよりは、深遠を見ているようである。

 そして、野心家というよりは、清廉な義務感を纏っていた。


「まずは、モッサを捕らえてくれたことに、感謝する」

「捕らえたのは、トルプ・ランプシ達だ」

「その事実の背景に、ユート殿とリシア殿がいたと聞いている。そして、そうした理由も理解しているつもりだ」


「そいつは、説明の手間が省けて助かる。だが、理解したつもりが大きな誤解をしているかもしれないぜ」

「その通り。だが、ノイ・クレユと往来していたという伝承は、他の領域よりもこの風の領域に多く残っているのだ。事細かく認識を摺り合わせておく猶予があるとは思えんが」


「これは参った。賢い相手と話すと、俺の無能さが際立つようで恥ずかしくなる」

「謙遜するな。私も無能扱いされてきたのだ。ユート殿には負けないだろう」

「そういうことなら、淡々と事務的に話そう」


「そうしてくれると助かる」

 ウザラがわずかに微笑んだ。

 その表情に疲労の色が浮かんでいると、ユートは気付いた。


「お互いに多忙な訳だ。では単刀直入に要望を伝えよう。トーマとルリちゃんとリシアと俺が、無事に向こうの世界に帰れるように、最大限協力してくれ。それと、リシアと俺がいたという話は、極力伏せてくれ」

「了解した」


「感謝する。それで具体的な話だが、トーマは聖剣を戻しに行かなければならないが、そのために必要なカゼフネは、修復する段取りを済ませた。その間に俺とリシアは、プロソデアに協力してもらい、元の世界に帰る手段を確立する」

「手掛かりはフホ村にあるだろう」

「やはり、そうでしたか」

 リシアはうなずき、考え込んだ。


「知っていたとは、余計な事を言ったかな」

「いや、俺は知らなかったから、貴重な情報だ」

「他には?」

「カゼフネをもう一度空に上げるには、もっと大量の精が必要になる。例えば王宮精紋によって上空に向かって放たれていたような精の流れだ」

「それは厄介な問題だが、何とかしよう」

「ありがとう。あとはトーマとルリちゃんを、カゼフネに乗せて境界の淵経由で、元の世界に送り返してくれたらいい。この案内役は、プロソデアに頼むことになる」

「はい。問題ありません」

「そんなところだ」

「承った。では、こちらの予定を話すが、いいか?」

「どうぞ」


「明日、人々を王宮に招き、精霊王と救世の勇者と私の立場を明らかにするための宣言を行う。要するに、悪評高い私の権威を、精霊王と救世の勇者の後ろ盾を得て、担保しようというずるいことを考えている」


「ずる賢いが、効果的な手法だ」

「理解が得られて嬉しいが、その場で救世の勇者が王位を望むならば、私は禅譲する」

「いいのか?」


「私は構わぬ。ただし、その場合は便宜上、血の繋がりを保つ必要があるので、トーマには私の娘を王妃に迎えてもらう」

「合理的で常識的な判断だな」

「そうなると、トーマをノイ・クレユへは帰せぬが、構わぬか?」


「正当にトーマが決断するなら、構わない。ただ、代理でも手紙でもいいから、報告をくれ」

「約束しよう」

「お嬢さまは? お嬢さまだけでも元の世界に帰して頂ければ、いいのでは? それが効率的だと思います」

「そのように努めよう」


「トーマが王位を拒んだらどうする?」

「いずれにせよ、風の祭殿に精霊王をお連れする。精霊王とルリの間には、簡単には切れない絆が結ばれている。そこで、祭殿の宝珠と聖剣の力を使って、精霊王をルリから切り離すことになる」


「何日かかる?」


「急ぐようなので、明日出発する。明後日の夜前には祭殿に着くだろう。むしろ、カゼフネはいつ飛べるようになるかが問題になる」

「精の供給量にもよるが、二、三日は必要だと思う」

「プロソデアはどう見る?」

「四、五日はかかりそうです」


「ならば、祭殿を出た後、離宮でカゼフネの到着を待とう。境界の淵へ行くなら、通り道になる」

「そうですね。離宮まで飛ぶための精を貯める方が少なくて済みますし、離宮に流れる精の方がユーシエスより清涼で潤沢ですからね」

「ならば決まりだな」


「これで一安心だ。最大の懸念を片付ける事に集中できる」

「いつ発つのだ?」

「すぐにでも」

「プロソデアが案内しなければどうにもならないと思うが?」

 ウザラが逗留を求めるようにプロソデアを見た。


「確実な話は何もありませんので、急ぐべきです」

「その方法を知る者はいないのか?」

「ゾネイア博士は亡くなりましたし、モッサに尋ねるのもどうかと」

「モッサか――」


 ウザラが考え込んだ。


「モッサは止めておけ。真実の中から嘘を見出す方が厄介になるだろう」

「そうですね」

 プロソデアはうなずいた。

 視線を上げたウザラが、ユートを真っ直ぐに見つめた。


「ところで、ユート殿に頼みがあるのだが、聞いてくれるか」

「モッサの処遇を決めかねているから、向こうの世界に連れ帰って欲しいのかな?」

 ウザラは苦笑した。

「恐れ入る」


「それはお勧めしない。仮に連れ帰ったとしても、そこでモッサは野放しになる。俺にはモッサを捕らえておく力はないし、裁く権限もない」

「ユート殿が、無位無冠とは驚いた」

「民主主義の法治国家だからな」

「民が領地を治めるのか?」

「より多くの民衆の支持を得た者が、代理人としてまつりごとを行う制度だ。最善ではないが、独裁よりはましだ」

「王位に就いた私に言う言葉としては、厳しいな」


「向こうの世界での話だ。こっちには、人間とは別に、精霊王がいるじゃないか。その分、謙虚になれる」

「そういう見方をするのか。プロソデアの言う通りだ」


「それと個人的な理由もある」

「なんだ?」

「あいつはどうやら、俺の妻を殺したらしい。連れ帰ったら恨みを晴らしたくて、殺してしまうかも知れない。そうしたら、トーマやモーティス騎士団の行いに泥を塗る結果になる」

「それは避けたいな」


 ウザラは深刻な表情を見せた。

 一つの決断を色濃く考えている様子だった。

 ユートはその心理を見透かしたように、笑みを浮かべた。


「処刑するのが楽だろうが、殺せば歪みが大きくなるぜ」

「どうしてそう考える?」

「時代が変わったからだ。多くの人が変化を知った。これまでの常識が、違っていたと気付いてしまった。その象徴がモッサだ。モッサの出現によって、精霊王さえ操れる方法があると知れ渡った」


「だからこそだ。世界を混乱させないためには、モッサの技は封じるべきではないのか?」


「短期的にはそうなるだろうが、一度隠蔽すると、次々と隠蔽しなければならなくなる。いずれ、人を闇に葬るしかなくなるだろう。だけど、それでも隠しきれないだろう。トルプ・ランプシ達は、モッサのガンピシ宿玉を見たし、俺のガンピシモドキの効果も見た。そしてプロソデアには、俺の知識を伝えたから、俺以上の物が作れるようになったはずだ」


「そうか。やはり封じきれないか」

「とは言え、公表すればこれまでそうした技術を独占していた連中から恨まれる。既得権益こそ、そういう連中の力の根源だからだ」


「どちらの道も、苦難だな」


「この世界でも、種族間でいがみ合っているようだから、事実を隠蔽すれば、野心を疑われる。かといって、共有しようすれば独占したがる連中に命を狙われる」


「どうすればいい?」


「俺に聞くな。俺の意見を言ってもいいが、決断するのは責任のある立場に就く者だけだ。結局、自分で決めるしかない。周囲との意見の相違が騒動に発展するとしても、説得して納得させるしかない」

「襲ってきた暗殺者が、説得に応じる事はないぞ」

「そういう状況を作らないようにすればいい。少なくとも、王となる君が敵対者の排除を指示してはいけない。それをするくらいなら、モッサを処刑した方がいい」


「酷い助言をされたものだ」

「聞いたのは君だ。不満は自分自身に向けてくれ。ただ、本質的に問われるのは、王としての基軸だ。何処に立ち、何を目指すのか」

「厳しい言葉だが、正論だな」


「とはいえ、基軸を持てば助言や進言を無視する、頑迷さとなる危険もある。だから、なるべく無駄を削ぎ落として、誰も否定できない人としての根幹に立脚した基軸でなければ、共感は広まらない」


「難しい問題だ」

「単純だが、道のりが長く険しいだけだ」

「それを困難と言うんだ」


「困難や苦難と思って進めば、心が折れるぞ。どうあっても、王となれば孤独なんだ。あとは、焦らない事だ。どの道、君の代ですべてが丸く収まる事はないだろう。次世代に繋げる道筋を残していくしかない。長旅だ、気楽に構えろ。君には到達できない道だが、それでも少しでも先へ進めておくだけだ。担い手を育てろ。次世代の担い手が一人でも多く育てば、君は楽が出来るようになる」


「変わった男だ、そなたは」


「よく言われる。ただ、俺は思うのさ。モッサが目指す道も、究極的には同じなんじゃないかって」

「それは過激な言葉だな」

「だがモッサは成果を焦りすぎた」

「そうかもしれぬな」


「無能で無責任な男の、与太話と受け取ってくれ」


「いい話ができた。感謝する」

「トーマとルリちゃんを、頼む」

「必ず、間に合わせると、約束しよう」

「ありがとう」

「そなたはいいご子息をお持ちだ」

「トーマにとっての汚点は、出来の悪い父親を持った事さ」

「親とは、苦労するものだな」


「そうらしいな」


「やはり、トーマには私の娘を嫁がせたくなった。明日の判断がどうであれ、娘に相応しい男だと思う。構わぬか?」

「さっきも言ったが、俺が決める事じゃない。トーマが誰を選ぶかだ。強要しないなら、見合いをするのは構わないさ」

「トーマが私の娘を選んでくれるなら、私の肩の荷は軽くなるのだがな」

「その話も正直にトーマに伝えてくれ」


 ウザラがどう思おうが、王族の娘と婚姻すれば、王族の一員として周囲から見られる。加えて世界を救った救世の勇者という実績がある限り、トーマがこの世界で庶民の生活を送るのは困難だろう。


「嘘を付かず、騙すなと?」


「人として当たり前の事だろう?」

「その通りだ。私も、腹を括ったよ」

「無理するなよ。君はプロソデアの悪友らしいから、俺とも悪友になった。相談には乗るし、協力もする」

「悪事を勧められそうだな」


「物の見方によっては、悪事だよ」

「違いない」

 ウザラは笑った。


「色々制約はあるだろうが。何かあれば相談してくれ。向こうの世界とのやりとりという障害はあるが、諦める前につてがあると思えるだけで、少しは気が楽になるだろう」


「感謝する、ユートよ」

「こちらこそ。トーマとルリちゃんを助けてくれたありがとう」

「また会おう」

「その前に死ぬなよ」

「お互いにな」


 ウザラは去って行った。

「そこまで見送ってきます」

 プロソデアがその後を追った。

 残されたのは、ユートとリシアの二人だけだった。


「さて、俺達も知り合った連中に別れを告げておこう」

 振り返ったユートが見たのは、リシアが微笑む姿だった。

「どうした?」

「いいえ。何でもありません」


「俺が勝手に話してしまったが、君の意見を聞くべきだったか?」

「いいえ。必要があれば述べていましたから」

「そうか。なら、あとは帰る方法を探すだけだな」


 二人は、カゼフネの修復現場に戻った。

 ユートの主な目的は、出発前に作業の進捗状況と、問題点を見極め助言する事だった。

 リシアにとっては、戦いを共にした者との別れの場となる。だが、功労者であるトルプ達天の騎士は、残され森には戻っていない。風の王宮裏手の別邸にモッサを監禁し、その警備を任されていたからである。


 ユートとリシアは舷側に付ける羽を作っている地の精霊ラスピに歩み寄った。


「どうだい、ラスピ、状況は」

「おお、ユートか。大きな問題はない。そうか。なら良かった。少し見させてもらうよ」

「ああ、見てくれ。何か至らぬ点があれば、指摘してくれるとありがたい」

「分かった」


 ユートはカゼフネに乗り込んでいく。

 だが、リシアはそこに残った。

 すぐに言葉を発しなかったリシアに、ラスピは重ね合わせようとしていた板を運ぶ手を止め、振り向いた。


「ラスピ、作業中に悪いのですが、お別れを言いに来ました」

「なんと――」

 ラスピは手に持っていた板を落とした。

「そうか。元々、リシア様に協力するという契約だったな」

「そうでしたね。お陰で大いに助かりました」

「いやいや、まだまだ。最後にオレは、カゼフネを修復すると約束しよう。それを成し遂げてこそ、協力した証になる」

「本当に、ありがとう。ラスピがいなければ、私は死んでいたでしょう」


「なに、俺がいなくとも、風の奴――ディアンが別の形で守っただろう」

「そうですね」

「リシア様との出会いに、感謝を」

「想い出として心に刻みます」

「いずれまた、会える日を願って」

「では、いつの日か」

「もう発つのか?」

「プロソデアさんが戻って来たら出発です」

「そうか、ならば出会いの証を送ろう、しばし待ってくれ」


 ラスピは体に腕を突っ込み、中から石のかけらを取りだした。

 そこに、彫刻を始めるのだった。


 カゼフネに乗ったユートは、船体の修復された精紋の状態を確かめた。境界の淵でユートが描いた精紋よりも線は太いが、その分精の流れが安定している。聖剣の柄とは、弱電と強電のような違いがあるのだ。しかも、精紋を描く職人としての腕は、ユートよりも精霊の方が優れているからである。


 ユートの側にザゲルが人の姿となって現れた。


「行くのか?」

「ああ。修学旅行の最終日のような気分だ」

「意味が分からぬ表現だ」

「名残惜しいのさ。淋しくもある。が、人生の根幹は日常にある。非日常に入り浸ってはいては、日常が立ちゆかないから破綻する」


「迂遠な物言いが好きだな、ユートよ」

「日常を取り戻したこの世界に、俺は必要ないって意味だ。どうあっても俺は、非日常を呼び寄せる。世捨て人になってフラグミやザゲルのように山や森の奥に引きこもるしかなくなる」

「辛辣な物の見方だ」

「悲観的だと妻には言われたが、俺にとっては客観的なのさ」


 ザゲルは溜め息のように風を吹いた。

 凪いだ湖面を揺らして風が吹き抜けていく。

 反射する光精石の明かりが悲しげに揺らいだ。


「カゼフネが使えれば、送って行けたのだが」

「代わりにトーマとルリちゃんを頼む」

「任せよ。必ずノイ・クレユに送り届けよう」

「ありがとう、ザゲル」

「楽しい出会いであった。そして淋しいひとときの別れとなる」

「短い間だったが、楽しかったよ。また、カゼフネで一緒に空を旅したいな。出来ればタタ・クレユを一周してみたい」

「そうだな。そのような日が来るのを楽しみにしている」

「ああ」


 最後にユートはカゼフネに施した精紋の仕組みについて、知り得た知識をザゲルへと伝えた。

 ユートには他に、別れを告げるべき相手がいなかった。

 少しだけ世話になった精霊伯爵は、自尊心が高いだけに森の外に出て精霊王を救うために行動を起こさなかったのを、恥じているようであった。ザゲルが移動するために貢献してくれた事に感謝しようとユート考えていたが、精霊伯爵は礼など不要とでも言うように、宿玉である庵に引きこもってしまったからである。


 しばらくして、プロソデアが戻ってきた。

 ユートとリシアは改めて精霊達に感謝し別れを告げ、プロソデアを先頭にして森の外へと細道を抜けた。

 森の外には、ウザラが用立ててくれたメノスが三頭いた。

 それだけでなく、森に宿る精霊達から噂を聞きつけた、避難民達が集まっていたのだ。そうした群衆から、リシアの姿を見付けて飛び出してきたのは、二人の女の子だった。

 フホ村から来た、キュセとプラエナである。


「リシア様!」

「キュセ、プラエナ、どうしたのです?」

「リシア様がノイ・クレユに帰られてしまうというので、お見送りに」

「ありがとう。二人に色々と助けられました。お陰でお嬢さまを助け出せました」

「助けられたのは、あたしたちです」


「お互い様です」

 リシアは視線をあげ、集まった民衆を見渡した。

「他の皆さんも、それぞれができる事をしたから、精霊王が自我を取り戻したのです」


「いやいや、リシア様がいたからだ」

「そうそう。黒髪の聖女様だ」

 人々から声が上がる。


「いいえ、全員の功績です。それぞれの立場で、生き抜いて来たからこそ、今日があるのです」


「でもリシア様がいなかったら、どうなっていたか」

 キュセが泣き出した。

「私もそうです。キュセやプラエナや、他の皆さんに、精霊達がいなければ、どうなっていたか分かりません。誰か一人の功績ではありません。皆さんのものです」


「俺達が勝ち取ったのか?」

「そうだ、我々の勝利だ」


 人々の間から歓声が沸き起こるなか、リシアは二人に視線を戻した。

「あとの三人にもお別れを言いたかったのですけど」

「まだ戻ってきていません」

「では、感謝していたと伝えてください」

「リシア様、もうしばらくいて欲しかったです」

「ごめんね。そうしたい気持ちもあるのですが――」

「いいえ。いいんです。ワガママをいいました」


「それでリシア様、フホ村に行くというのは、本当ですか?」

「近くには行くようです」


「ご一緒したかったです」

「でも、メノスには乗れないから」

「もし村に立ち寄られたら、長老とあたしたちの親に、全員無事だと、伝えてください」


「わかりました」

「リシア様、会えて良かった」

「二人とも、元気でね」

「リシア様」


 二人がリシアに抱き付いた。

 リシアは泣きじゃくる二人を抱きしめる。


「また会えますか?」

「向こうでの仕事が一段落したら、遊びに来たいと想います」

「本当ですか?」

「はい」


 確証の無い約束をして、別れの抱擁を終えた。


 そしてユート、リシア、プロソデアの三人がメノスに跨がる。

 避難民達の見送りに手を振り、走り出す。

 夜道を、風の精霊と地の精霊の助力を受けて、三騎は瞬く間に闇の中へと消えていった。

 そして程なく、タタ・クレユの夜は明けた。


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