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君の目に映るもの

きたー

赤く燃えている空に逆らうように冷たい冷たい風が吹く。黒い雲もちらほら見える。これから日が落ちて、暗くなっていくしかない夕暮れはそれでも前に進み続ける。一体全体、何を原動力にしているのか教えてほしいものである。


「はぁ…」


人気の無い、公園と言うには遊び場と呼べるものが砂場くらいしかない広場。ベンチに座り、ただでさえ水分の少ない空気をさらにため息で乾かす。


学生という立場を失い、友を失い、たった一人の家族すらも失った。こんな空っぽの俺にも生存本能だけは残っているようだ。以前の俺は、適当に生きて本当に辛い時には死ねば良いと思っていたのだが、実際にそうなってみると死ぬことができなかった。死のうと思えば思うほど、そのことをイメージするたびに頭がそれを拒む。胸の辺りがモワッとする感覚がある。

 

 俺には死ぬことすらできない。


「おーいおい、そこの少年。今にも死にそうな面をしたそこの少年。」


「、、、?」


「そうだ、君だよ。紛れもないそこの君。ところで、今、君、僕の目を見たね。僕の目を。それはつまり!僕の目を見た君の目を僕が見たと言うことなんだよ。分かるかい?それはつまり!君と僕は目が合った、と言うことなんだよ。素晴らしいことじゃないか。それはつまり、、、?」


「えっと、、、」


「運命と言うことさ!!ああ、素晴らしい、、、」


ところで、と男は続ける。


「君は今、何を望んだ?幸せか?それとも平穏か?いや、そのどちらでもないはずだ。君が望んだのは死ぬこと!死んでこんな理不尽な世界から抜け出そうと、そういうことだね。いいね、僕は全てを受け入れよう。それにしても死というものは素晴らしいとは思わないかい?よく生と死が全く逆のように言われるけど、実際はそうじゃない。」


「じゃあ、どういうことなんだ、、、?」


「うん!実は、生の反対にあるものは完全な無なんだよ。生命が果てると魂が発散され、無に帰る。

その狭間の現象こそが死なのさ。分かるよね?」


なんだコイツは。勢いに押されて普通に応答してしまった。

スーツ姿の男がそこに立っていた。細身で長身、この近所でこんな不気味な男は見たことがない。明らかに不審者である。こんなときはすぐに逃げるのが吉、、、。


「そんな警戒しないでよ」


「、、、!」


男の目が俺を見ている。先程よりもずっと近いところで。いや、もう眼球同士が接着するんじゃないかというほどに、すぐ寸前にそれはあった。


「さびしいなー。僕はいつも側にいるんだよ?もっと僕を意識してよ。さっきみたいにさあ。」


「ぇ、、、。さ、さっきってなんのことだ。俺がお前を見たのは今が初めてだ。お前のことなんて俺は、、、」


「んー?俺は?何だってー?もしかして知らないなんて言わないよなあ?僕がいるから君がいる。君がいるから僕がいる。そうだよね?」


「し、しら、、、ぁ、、、」


体が、動かない。それになんだこの感覚は。まるで意識が吸われているような、、、。世界がどんどん薄れていく。ああ、これが、、、「死」か。


「ダメッ!!」


空気を切るような鋭い声が響く。小さな影が近づき、視界に割り込んでくる。


「ぇ、、、!?」


美しい黒髪の少女、華陵サナがそこにいた。

よーし

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