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【7/31英語版電子先行発売!】雇われヒロインは、悪役令嬢にざまぁされたい  作者: 西根羽南
雇われヒロインは、悪役令嬢にざまぁされたい

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美少年より美猫です

「俺も、ニーナと同じ転生者です」

「ええ!」


 思わず声を上げ、慌てて口を押さえる。

 ここで目立てば、ヒロイン補正のせいで人が集まってきかねない。

「ここは会場の端で人も少ないし、大丈夫ですよ」

 ニーナの懸念を理解しているらしいエドは、そう言いながらも周囲に目を配っているのがわかった。


「俺は元々体が弱くて。持病があるわけではないのですが、すぐに体調を崩してしまうんです。おかげで、周囲には心配も面倒もかけていました」

「そんな風には見えないけれど」

「それは、ニーナのおかげです」

「私?」

 全く身に覚えがないが、何かしただろうか。


「今回のラッキー転生キャンペーンは、説明した通りヒロインの担当が難航していました。そこで、神はスカウト役として俺に声をかけて来たんです」

 なるほど。

 ヒロインは女性なのだから、むさくるしいおじさんよりは美少年の方が話がうまく進みそうだ。

 そうすると、ニーナの所に武器である顔がわからない状態で来るのはおかしい。

 いや、ニーナの場合は美少年よりも美猫の方が嬉しいし、心を許す。

 そういう意味では、的確な判断だと言えた。



「だから、私には猫姿だったのね」

「いえ。別にニーナに猫姿を見せようとしたのではありません。最初にクラリッサに契約開始の説明をする時には、このままの姿で行ったのですが。何というか……大変に絡まれまして」


 突然の美少年来訪なのだから、不審者だと騒がない限りは、大興奮なのかもしれない。

 ちなみに、ニーナは完全に前者だ。

 つくづく、エドが猫で良かったと思う。


「当選者の悪役令嬢と会うのは一度だけなので良かったのですが、ヒロインとは何度も会う必要があります。毎度絡まれるのはさすがに疲れるので、神にお願いして姿を変えてもらったのです」

「そこで猫を選んでくれたことには感謝するわ。おかげで、史上稀な美人猫を堪能できたわ」

 猫は猫の時点で既に可愛いが、それにしても白猫エドの美人ぶりは素晴らしいものだった。


「……俺は、当選者の望むヒロインを演じる者を見つけ、ざまぁされた暁にはこの体質を治してもらう契約なんです」

「体質って」

 確か、ニーナの契約時にアイーダの病気は治せないと言っていたから、そういうものは無理なのかと思っていたのだが。


「前にも言いましたが、契約で他の人間の病気を治したりすることはできません。ただし、契約者本人の場合には有効になります」

「……そう、なのね」


 少しだけずるいとか羨ましいと思ってしまった。

 自分の浅ましさが嫌になる。

 仮にアイーダにチャンスがあったとしても、クラリッサと一緒に学園に通うのは無理なので、結局は不可能な話だ。

 苦痛の緩和をしてもらえるだけでも、十分にありがたいと思わなければ。


「ニーナがヒロインらしくすればするほど、俺の体質は改善されます。おかげで、今はだいぶ調子が良いです」

「……そう。なら、良かったわ。持ちつ持たれつということね」

 ニーナがヒロインらしくすれば、アイーダだけでなくエドまで良い効果が現れるということだ。

 それは、頑張った甲斐があるというものである。



「でも、何で人間の姿でここに? 契約ではエドの姿を見せる必要はないでしょう。……もしかして、私を助けるためにわざわざ来てくれたの?」

「ニーナがこうなるのは、わかっていましたから」

 ヒロイン補正で身動きがとれず、空腹だと見抜いていたのか。


「ありがとう、エド」

「それもありますが。あとは、ニーナと話をしてみたかったんです」

「話なら、いつもしているじゃない」

 エドは定期的にニーナの部屋に来ているし、毎回進捗報告で話をしている。


「あれは、俺だけど俺じゃないでしょう。神の使いで猫のエドです。……俺は、エドモンド・ゼラーティ。ゼラーティ公爵家の次男です」

 ニーナは思わずぽかんと口を開けてしまう。

「公爵令息、だったのね。……なら、こんな風に砕けた話し方じゃ駄目よね。いえ、駄目ですよね」

 何だかエドが遠くなってしまった気がしてしまうのは、根っからの平民気質のせいだろう。


「いえ、良いんです」

「でも」

「ニーナはそのままで、大丈夫です」

 公爵令息に対して、平民がこの話し方で良いはずがない。



「……なるほど。ヒロイン補正ってこと? 普通なら許されない言葉遣いでも、問題視されないってことね。それとも、これを悪役令嬢に注意されて、嫌がらせだと吹聴しなさいってことかしら」

 面倒ではあるが、ある意味王道だ。

 平民ごときが馴れ馴れしい口をきいて良い相手ではない、というやつか。


「そ、そうじゃないです」

「じゃあ、何?」

「……だから、ニーナと話をしたかったんです。猫のエドではなく、エドモンドとして」


 そんな風にじっと見つめられると、美少年が輝いているので眩しい。

 ヒロインよりも悪役令嬢よりも美しい神の使いの少年って、何なんだろう。

 ニーナも別に不美人というわけではないが、美醜の次元が違う。

 これでも一応女の子なので、少しばかり切なくなった。


「そう。それで、何を話すの?」

 ニーナが聞いた瞬間、会場の中央からクラリッサの声が聞こえてきた。

 ソファーから立ち上がって様子を窺うと、どうやらディーノと何か揉めているらしい。

 メイン攻略対象と悪役令嬢がいるのなら、それはイベントだ。

 ヒロインが参加しなくてどうする。


「――大変、出遅れたわ。クラリッサ様ったら、登場人物が揃わないのにイベントを始めようとするのよ。行ってくるわね」

「……行ってらっしゃい、ニーナ」


 慌てて飛び出すニーナを、エドモンドは寂し気な笑みで見送った。

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「余命わずかの引退聖女は冷酷公爵との厄介払い婚を謳歌したい!」

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英語版「雇われヒロイン」「The Hired Heroine Wants the Villainess to Gloat」紹介ページ

「The Hired Heroine Wants the Villainess to Gloat」

Cross Infinite World Hanami Nishine Rin Hagiwara

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