4.僕は迫られる(『【困ったときには肉球大魔王様など】』(14日)、『異性だけにモテると修羅場、同性にモテたり、男女両方からモテると・・・?』(永続))
おまたせしました!
2019/4/30 22:00~2019/5/8 22:00の間に5名の方から感想、イベントを頂きました! ありがとうございます!
サブタイトルは4.僕は迫られる(『【困ったときには肉球大魔王様など】(効果はパル◯ンテみたいに来たり来なかったり、あっても微妙な感じで(=゜ω゜=))』(14日)、『異性だけにモテると修羅場、同性にモテたり、男女両方からモテると・・・?』(永続))
にしようかと思ったのですが、長すぎるから100字以内にしろ、とシステムに怒られましたww
村の入り口にて、金髪オッサンの村長と、その息子スカー、そして手の空いている村人が商人親子を出迎えた。
僕はその様子を、少し離れた場所から見る。
ドコノ村には約1ヶ月に1度、この商人親子がやって来る。
35歳の赤髪オールバックの渋い男性の商人、そして黒髪ポニーテールの妻。(以前年齢を聞いたら怒られた)
そして彼らの娘の一人、赤髪セミロングで軽くウェーブをかけ、すらっとした体つきをしたサウ17歳。
もう一人、表情が見えないほど茶髪の前髪が伸びている、ロングヘアのノルス16歳。
この二人は僕とスカーの幼馴染でもある。
商人一家は10年間ドコノ村で暮らし、コツコツと貯金を貯めて、行商を始めた。
商売は順調で、今月から王都に店を構えるほど稼いだと聞く。
「おお、その後ろに縛ってあるのは盗賊か?」
「そうなんですよ村長さん。
いやぁ、来る途中で襲われやしたが、この護衛様が一網打尽にしてくれましてね!
コッチノ町で引き取ってもらうつもりでさぁ」
商人親子の隣でフードを被った女性は、僕が見たことがない人だ。
多分護衛に雇っている人だろう。
目が合った。彼女が口パクで僕に何か伝える。
ミ・ツ・ケ・タ、ダ・ン・ナ・サ・マ?
……旦那様? いや、そんなわけないか。
気のせいということにしておこう。
縛られた盗賊は4人。
全員薄汚れた男。
足を怪我しているみたいだけど、同情の余地無し。自業自得だ。
言うまでもなく、ドコノ村は田舎の村。
犯罪者を収容する施設は小さな牢屋1つしか無い。
しかも間が悪いことに現在建て直し中で、来月以降でないと使えない。
なので商人親子は王都に向かう途中の、コッチノ町で犯罪者を引き取ってもらうことになるだろう。
犯罪者達は、外に設置してある柱にくくりつけられ、村の男が交代で見張ることになった。
「お久しぶりです、スカーです。
風のうわさで聞きましたよ、王都に店を構えるんですよね!」
「スカー! あぁ、お前も来るか?
何ならサウを嫁にくれてやるぞ」
「ははは……お気持ちだけ受け取っておきます」
僕は知ってるぞ。
スカーはノルスが好きなんだ。
何せ彼女の胸は大きいからね。
ちなみにサウの胸はぺったんこなので、スカーの恋愛対象外だ。
スカーよ、女性の価値は胸じゃないぞ。
大事なのは、ふとももだよ、ふともも。
僕は査定してもらう作物を取りに、一度家に帰った。
◇ ◇ ◇ ◇
【感想乞食】スキルの影響で、1日1回何らかの害獣がやって来る。
そいつらは実った作物や、成長中の作物を食べる。
しかも嫌らしい事に、納税免除届(作物が一定以上の被害を被った場合、納税が免除される)が受理されないくらいの絶妙なラインをつついてくる。
なので普段だったら収穫は日を分けて行うのだけれども、今回は一気に収穫した。
この甘い実が売れたら、僕は借金生活とおさらばできるぞ。
実を入れた大きなカゴを背負い、家を出て、商人の泊まっている家に向かう。
「にゃーん」
「ついてくるな。僕は今から商談があるから相手出来ないんだよ」
「にゃーん」
「そんな寂しそうな声で鳴くなよ。まったく、もう」
ついてきた茶色ぶちの子猫を拾い、抱き上げる。
いつの間にか僕の後ろに猫が4匹ついてきている。
子猫も少しずつ大きくなり、今は手のひら3つ分くらいの大きさだ。
あと1、2ヶ月したら大人サイズになるのだろうか。
そうしたら抱っこをせがまなくなるのだろうか。
……別に寂しくなんかないぞ!
とか何とか思っていると、目的の家に着いた。
◇ ◇ ◇ ◇
僕は商人に、持ってきた実を見せた。
奥さんと娘さん2人はどこかに出かけているらしい。
ま、僕には関係ないのだけれど。
「ほほー、こいつは驚きましたねぇ。これは妖精の実ですよ、ズーク」
「妖精の実?」
「妖精が、気まぐれに人間の畑に実らせる実でさぁ。
珍しくはありますが、流通が無いわけじゃないんです。
ここからはるか北の、氷河都市クラークでは、氷の妖精と人間が仲良く暮らしていて、時々この実を実らせてくれるのですよ」
「高く売れる?」
「ちょっと査定しまさぁ。ところで、妖精はみかけましたか?
捕まえておくと貴族様に高く売れますよ?」
「いや、見なかった」
ていうか、そもそもこの実は猫達の仕業だし。
一応、この猫達が植物を実らせた事は黙っておこうと思う。
ひょっとしたら、また同じような感じで実らせてくれるかもしれないからね。
金儲けの種になるのだとしたら、絶対に手放すものか。
商人が査定していると、フード付きローブを着た護衛が僕をじっと見ているのに気づいた。
まるで獲物を狙うかのような目だ。
何なんだよ。怖いよ。
落ち着け。
こういう時こそ【猫まっしぐら】発動。
ちなみにこの【猫まっしぐら】はスキル発動時に光らない。
何故だか知らないけど。
(寄ってきた猫にフラッシュ光が入らないようにという神様の配慮です)
「にゃーん」
子猫が寄ってきた。
他の猫達もやって来た。
お腹わしゃわしゃー。
よし、落ち着いたぞ。
護衛さんがハァハァと息が荒くなってる気がするけど、気のせいだろう。
「ふぅ……今見積もりが終わりました。
定価がこのくらいなのですが、保存状態が悪かったので、買取価格は半額でしょうか」
「ん? 正しい保存方法があるの?」
「先程言ったように、本来この実は氷河都市で手に入るものなので、冷凍に近い冷蔵状態で保存しなければ、長持ちしないんですよ。
まぁ買い取りますけど」
「あざっす!」
カゴを商人に預け、販売証明書を受け取り、意気揚々と家に帰る。
商人さんに妖精の実を納品すれば、彼が王都にて村の納税をまとめて行ってくれる。
その際に僕の借金も少しずつ返済してくれる。
こうして僕は、あと3年かかるはずの借金を、1年間分短縮させることが出来た。
あと2年で僕は自由の身だ。
大金が入った嬉しさのせいで、僕をつけてくる影がある事に気づく事はなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
家でのんびり猫の背中をワシャワシャしていると、僕の体が光った。
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スキル【感想乞食】を発動。
以下の5つの感想を得ました。
感想ポイントを5ポイント獲得しました。
『ヲーの翼チン竜wwwwサブタイトル見てどうなんのこれ?っ思ったけどwww』
『あの茶トラ猫はひょっとして…………いや、まさかな。
しかし効果が永続しちゃったかー。何かごぬんね?
ちなみに人から聞いた話だと、加齢とともに女性への興味をもつ部分は下へ下がるらしいですよ?
(20代胸見てたのが30代にお尻に注目したり)』
『朝イチの猫タマ金は、むしろご褒美デス。』
『落語の三題噺みたいで、面白い試みですね!
いつもは肉球魔王様を読ませてもらっています。』
『更新お疲れ様です 魔王級に強い茶トラのデブ猫だと?
いったい何トミタなんだ…(棒読み) ちょっとイベントとか思いつかなくて申し訳無いです
とりあえずズーク頑張れw超頑張れw』
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「……また異界の感想か。
相変わらず意味不明な内容ばかりだけど、以前の茶トラ猫はやはり只者ではないらしいね」
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所持感想ポイントは10です。
所持ポイント数5以上なので、ポイント1使用、およびポイント3使用の効果が強制発動します。
まずはポイント1使用から発動。
イベントを1つランダムで起こします。(その話限りで効果は終了)
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毎度おなじみ、宙に光のダーツボードが現れ、回り始める。
そして僕の側に光の弓と矢が現れ、弓が引かれる。
ダーツボードに書かれている文字は……
『毎朝1円玉がおでこに落ちきて起こされる(1円玉は残り、ズークくんのものになる)』
『ラッキースケベ(永続した場合ヒロインゲット……かも?)』
『スキル【不死身】を獲得』
……
もう何が当たってもいいや、と半分投げやりになっている。
少なくとも死ぬ事はどうやらもう無さそうだし。
ドンドルマー!
光の矢が的に射られた。
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ポイント1使用の効果は『【困ったときには肉球大魔王様など】(効果はパル◯ンテみたいに来たり来なかったり、あっても微妙な感じで(=゜ω゜=))』です。
効果期間は14日間です。
いいのか? 効果をパ○プンテみたいにして本当にいいのか?
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肉球大魔王様って何だ。
魔王を呼ぶの? 死ぬの?
やめろって。
あと、パル◯ンテとやらが何か知らないけど、まぁ死にはしないだろう。
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いや、たまに死んだり、死にかけになりまっせ。
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「ふざけんなクソがーー!!」
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【困ったときには肉球大魔王様など】は困った際に強制発動します。
ダイスロールを行い、偶数ならラッキー! 肉球魔王様などが来ます。
奇数ならアンラッキー! 肉球魔王様来ません。
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何てことだ。
また死の恐怖に怯えることになるなんて。
ってか肉球魔王様が来るのがラッキーって何だよ。
魔王が来るって、どう考えてもアンラッキーだろ。
だけどまぁ、発動条件が困った際、となっている。
今の僕が困った事態になることなどありえな、
壁☆ダァン!!
「ハァ、ハァ……旦那様、見つけたですぅ」
どこから入ったのか、ベージュ色の肌と髪の、知らない猫耳女が急に現れ、僕は壁を背に迫られていた。
確か、商人が連れていた護衛だったか。
今はフードを外している。
「まるでマタタビのような芳醇な香り……ハァ、ハァ……たまらないですぅ」
そういや、商人の居る場所で【猫まっしぐら】発動したっけ。
猫型獣人にも効果あるのかな?
さて、この状況どうしたものか。
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【困ったときには肉球大魔王様など】発動! ダイスロール!
出た目は5! 肉球魔王様来ません!
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僕が困ったと感じたせいか、勝手にスキルが発動する。
ま、肉球魔王様が来なかったからラッキーだ。
「護衛業で各地を転々と移動し、はや5年……ようやく運命の王子様に会えたですぅ!」
「えーと、どちら様で?」
「ミーア、20歳。種族は猫耳人族。スキルは【なめなめ】。よろしくですぅ」
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スキル【感想乞食】を発動。
ポイント3使用を発動します。
イベントを1つランダムで起こします。(効果が永続する)
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「よりによってこのタイミング!?」
「な、何ですぅ!?」
先程と同じ、宙に光のダーツボードが現れ、回り始める。
同じく僕の側に光の弓と矢が現れ、弓が引かれる。
シュバフィーン!
光の矢が的に射られた。
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ポイント3使用の効果は『異性だけにモテると修羅場、同性にモテたり、男女両方からモテると・・・?』です。
効果は永続します。
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しゅ、修羅場?
ってか『・・・?』って何だ!
何が起きるんだ!
ちゃんと教えろよ!
「き、消えたですぅ。今のが【感想乞食】ですぅ?」
「僕の個人情報ダダ漏れじゃんか。そうだよ、あんな感じで、異界からイベントを呼び起こすらしいんだ」
「ということは、先程の的に当たった、『異性だけにモテると修羅場、同性にモテたり、男女両方からモテると・・・?』が起きるですぅ?」
「そういうことだね」
どんな理屈か知らないけど、スキル説明文は本人にしか見えない。
なので彼女、ミーアは僕のスキルの詳細まではわからない。
「で、いつまで僕をこうして壁に追い詰めるつもりなの?」
「ミーアの夫になるって言うまでですぅ」
「ほー、僕の妻になるつもりだ、と」
「旦那様はふとももが好きって聞いたですぅ、触るですぅ?」
「ふともも!? 触る、触る!! 是非とも!」
ミーアが服をたくし上げる。
ベージュ色の毛皮のふとももが見える。
僕はそっと触る。
もふっ。
「おお、これは……」
「くすぐったいですぅ」
さわ、さわ。
「これは……これはまるで……」
「やぁん」
もふもふっ。
「まるで猫の背中を触っているかのような感触ッ!」
「背中じゃないですぅ!」
「うるせぇ! 無駄にモフいふとももしやがって!
こんなの全然エロくないッ! 僕のときめきを返せッ!」
――――――――――――――――――――――――
【困ったときには肉球大魔王様など】発動! ダイスロール!
出た目は6! 肉球魔王様到来!
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僕が困ったと判定されたのか、スキルが勝手に発動する。
ゴゴゴゴゴゴ!
「うわぁぁあああ!?」
宙に黒い歪が現れた。
絶対ヤバイ奴が出てくる!
「にゃー」
……。
……あれ?
歪から出たのは、以前見た、ただ者ではないデブい茶トラ猫だった。
もしかして彼が魔王?
いやまさかな。
◇ ◇ ◇ ◇
・ノルス視点
商人の父と母の間に生まれた次女。
それが私、ノルス、16歳。スキルは【過敏】。
耳を【過敏】にすれば遠くの音や小さな音が聞こえたり、鼻を【過敏】にすれば犬並みにニオイを嗅ぎ分けられたり。
また、このスキルを相手の皮膚に使えば、少量の傷が大怪我並に痛くなったりする。
とまぁ、私のスキルのことはどうでもいい。
5歳くらいの頃から、ズークとスカー、私の姉サウ、そして村の友達らと一緒によく遊んでいた。
私が9歳になった時に、私達親子は村を出て行商人として、各地を転々と歩き回った。
それから10歳の時、村に久しぶりに戻った。
村の友達だった女子達は、派閥を作っていた。
比較的貧しい家庭の者と、ある程度裕福の者に分かれて。
気の強い姉は、そんなのおかしいと抗議した。
結果、姉と、そのついでに私も、どちらの派閥にも入れてもらえなかった。
私は、以前仲の良かった友達から拒否された事で、わんわん泣いていた。
いつの間にか知らない場所に居て、もうすぐ日が暮れようとしていた。
「ノルス、こんな所で何してるの?」
薪を抱えたズークが声をかけてくれた。
「みんな、私のこと、嫌いだって」
「みんなって誰だよ。少なくとも僕は嫌ってないぞ」
「モゥちゃんに、コケッちゃんに、ブーちゃんに……」
「あの家畜系女子どもか。最近態度悪いよな。
ちょっと裕福な家に生まれたからって、自分が偉くなった気でいるのかな?
親のすねかじりのくせに、クソが」
ズークはポケットから、木の実を取り出す。
「これ、この季節にしか取れないとっておきの実だぞ」
「くれるの?」
「あぁ、僕のおやつだけど、やるよ」
木の実は酸っぱくて、少し甘かった。
「美味しくない」
「僕のおやつにケチつけるなよ、まったく。
じゃあね、僕は薪を運ばなきゃいけないから」
ズークは恥ずかしそうに言いながら、ささっと行ってしまった。
後で分かった事だけど、女子と長々と話していたら恋人同士かもと噂されるのが恥ずかしかったみたい。
そんな事があったのが6年前。
年を重ねるにつれて、仲違いした子とも仲直りして、体も大きくなって、色んな事があって。
だけど、あの日の事は鮮明に覚えている。
辛い時、苦しい時はいつも、あの日のズークの優しさを思い出して、乗り切った。
私はいつの間にか、ズークに恋していた。
「そういやさー、護衛のミーアがズークの事を、やたらと聞いてきたんだけど。
彼女、神父様にも同じようにズークの事を聞いてたよ。何だったんだろね?」
「……!?」
姉のサウの何気ない雑談に、私は嫌な予感がした。
「出かける」
「いてらー」
私はズークの家に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
・肉球魔王様視点
自宅の庭のかまどで川魚を焼いていると、ズーク君という少年が困っていたら、助けてほしいという依頼を受けた。
期間は14日間で、困った事がある度にランダムに呼ばれるらしい。
魚が焼けるまでの間にちゃっちゃと済ませるか。
俺は四次元ワープで、ズーク君の元に向かう。
低級の神の依頼のせいか、報酬がショボいのは仕方ないとして。
この少年の困ってる事って、せいぜい借金がある事くらいだろ?
俺が手を貸すまでもないと思うんだが。
軽く未来視したところ、もし俺が手を貸して借金をチャラにしたら、この少年が調子に乗って堕落する確率は85%。
なので下手に手を出さない方が良いのだ。
それより猫達の健康状態の方が気になるぞ。
汚れはもちろん、ノミやダニがくっついてる。ばっちぃ。
俺は大きめの銅製洗面器を四次元空間から取り出し、猫達をそこに突っ込んだ。
そして猫用シャンプーと水を洗面器に流し込み、秘技! にゃんこトルネード!
「にゃーん(わー!?)」
「なおー(何だー!?)」
俺が起こした、絶妙な力加減の竜巻が、猫達をキレイに洗浄した。
水分は【加速錬成】で飛ばした。
よーし、いい仕事したぞ。
このシャンプーは数十年はノミ・ダニを近寄らせないように作った特注品だからな。
これで彼らも少しは長生き出来るだろ。
「にゃー(では俺はこれにてさらば)」
俺はズーク君の自宅の側に監視用の猫像を設置し、俺の自宅に向かって四次元ワープした。
焼き魚が俺を待ってるぜ。
◇ ◇ ◇ ◇
・ズーク視点
あ……ありのまま今起こった事を話すぞ。
『茶トラデブ猫は、金属の桶を取り出し、猫達を突っ込んだと思ったら、猫達を風の魔法で洗い流した』
な……何を言ってるのかわからないと思うけど、僕も何をされたのか分からなかった。
頭がどうにかなりそうだった。
スキル2つ持ちとか、希少スキル持ちとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぞ……。
そして、そんな奇跡を起こしたデブ猫は、勝手に僕の家の側に猫の像を設置し、これで仕事は終わったと言わんばかりに黒い歪に飛び込み、消えてしまった。
「にゃーん」
茶色のぶちの子猫が僕の元にやって来る。
いつものように、背中をなでる。
「……!!!??」
な、何だこの手触りは!!?
いつもは少しボサボサっぽいのに、今日はまるで上等な服を触っているかのような感触!
ノルスの髪を触らせてもらった事があったけど、こんな感じのサラサラツヤツヤだったな。
これが、あのデブ猫のスキルの効果か!
他の猫の背中も触る。
すげぇ、すげぇ!
語彙が足りなくてすげぇしか言えないけど、すげぇ!
ずっとなでていたい!
「旦那様ぁ、私も触って欲しいですぅ」
「どれ」
モサ、モサ。
ミーアのふとももを再び触るが、触り心地は微妙だ。
「さっきは猫の背中のようだと言ったけど、訂正。
ミーアのふとももは猫の背中未満」
「酷いですぅ!?」
「にゃーん」
「何か猫ちゃん、勝ち誇ってる顔してるですぅ!?
悔しいですぅ! こうなったらもっと色仕掛けですぅ!」
ミーアが僕にくっついてくる。
暑い。彼女は僕より体温が5度以上高い。
「離れろって」
「嫌ですぅ!」
ミーアが僕を地面に押し倒す。
くそっ、獣人は人間より力が強い。
引き離せない。
もしこんな場面を誰かに見られたら、1ヶ月はからかいのネタにされるぞ!
可愛い女の子ならともかく、こんな尻の軽そうな意味不明な女と噂になるなんて嫌だ!
「……何、してるの?」
「ノルス!?」
商人の娘のうちの妹の方、控えめな性格だが、本人とは逆に自己主張の激しい胸のおかげで、村の男連中から密かに人気の幼馴染。
ノルスが、玄関に立っていて、ばっちりと僕らを見ていた。
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『異性だけにモテると修羅場』発動!
――――――――――――――――――――――――
え、修羅場?
今? 何で?
別にノルスとは特に彼氏彼女の関係でもないし、修羅場になるような事はなくない?
「今、取り込み中ですぅ。邪魔しないで欲しいですぅ」
「黙れこのアバズレ女。【過敏】発動」
「うわぁぁぁ、目が、目がァァァアアアアーーー!!」
ミーアが目を押さえて眩しそうにする。僕はその隙に拘束から逃れる。
ノルスのユニークスキル、【過敏】は1時間以内に1度でも触れた相手になら、離れていても使える。
おそらくあらかじめミーアに触れていて、ミーアの目を【過敏】にしたのだろう。
やることがえげつない。
「大丈夫?」
「あぁ、助かったよ」
「見えないですぅ! 失明したですぅ!?」
「そこまで【過敏】にしてない。2、3分したら収まる。それまで目を開けなければいいだけの話」
「にゃーん」
猫達は「うっせぇなこの猫耳女」と言いたげにミーアを冷めた目で見る。
基本、猫達は騒音の類は大嫌いなのだ。
「ところで、ノルスはどうしてここに?」
「そこの肉便器を回収しにきた」
「お、おぅ」
前髪が揺れてちらっと表情が見えたけど、ミーアをゴミを見るような目で見ていた。
怖い。普段大人しい子を怒らせたら怖いって聞くけど、マジで怖い。
ノルスはミーアの首を掴んで、そのまま引きずって帰っていった。
結局彼女は、何しに来たんだろうか。
「にゃーん」
「それにしても、マジで手触り良くなったなお前ら」
僕は心を落ち着かせるために、再び猫達をモフることにした。
ズーク君の残り所持感想ポイントは6です。
肉球魔王様は、同作者が執筆してる小説「異世界で猫になりまして」の主人公です。
よろしければこちらも読んでくださったら幸いです。
商人一家のオールバックの方の名前はイース、妻の方の名前はウェスさんです。
名前が増えるとややこしいので、本編では夫妻の名前は基本出しません。
所持スキルはイース【速筆】、ウェス【料理】、サウ【料理】、ノルス【過敏】です。




